2012年10月3日水曜日

大学改革実行プランに対する国大協の動き

国立大学協会は、本年6月に文部科学省が公表した「大学改革実行プラン」に記載されている「大学ビジョン」等に対し、国立大学の自主性を堅持する立場から、国立大学の機能強化に関する委員会(WGの設置を含む。)において検討を行うことにしたようです。

国立大学協会が作成した資料によれば、検討方法、事項等は以下のとおりです。


1 WGとサブWGとの関係について

(1)国立大学の機能強化に関する委員会WGでは、文部科学省が今年度中に策定する「大学ビジョン」と「国立大学改革基本方針」、また来年度央に策定する「国立大学改革プラン」に対し、国立大学の自主性を堅持する立場から、国立大学協会としての「ビジョン」、「在るべき姿」の原案をできるだけ速やかに作成することを目標とする。(その後、国立大学の機能強化に関する委員会等での検討を経て、国大協として政府に提言することを想定。)

(2)(1)に先立ち、サブWGでは、各グループの大学群が抱える問題・課題を検討、整理し、①それらの問題・課題を解決する方向性(中長期的に検討する事項)、②「大学ビジョン」と「国立大学改革基本方針」に記載されると想定される内容への対案(短期的に検討する事項)を作成し、WGに提案する。

※留意事項
  • 検討事項は、短期的な頂目と、中長期的な項目に分けて議論する。
  • 短期的な項目は平成24年12月頃までに結論を出し、中長期的な項目は大枠の検討を進めておき、平成25年度当初を目途に議論を深めていく。


2 サブWGにおける検討事項について

(1)4つのサブWGに共通の検討事項

★中長期的に検討する事項例(可能な範囲で行う。)

①超高齢化、少子化を踏まえた社会保障制度など、わが国の国家政策の在り方に関する提言(教育セクターを超えた視点からのアプ□-チ)

②わが国において、国立大学が担う役割に関する提言

③学部系統別分野の在り方に関する提言
 ・社会からの需要の変化に伴う重点の変化

④国家を担う人材(グローバルリーダー)の養成に関する提言
 ・トップリーダーを育てるフレキシブルな仕組みの構築
 ・優秀な官僚等を厳選して育成する仕組みの構築
 ・大学教員が国の政策に関与する機会の創設(人事ローテーションとして)

★短期的に検討する事項

①「国立大学改革基本方針」の策定前に、国立大学として主張すべき事項

②「大学ビジョンの内容の構成イメージ」に掲げられる各項目に対し、国立大学として主張すべき事頂(各サブWGに関連する項目)


※参考【大学ビジョンの内容の構成イメージ】

-文部科学省「大学改革実行プラン」(平成24年6月)P7~

1 20~30年後の日本の将来像、求められる人材像

(1)20~30年後の日本と世界の展望を踏まえた、日本が直面する課題

少子高齢化、産業構造・就業構造の変化、高付加価値を有するイノベーションの創出、高い専門的、汎用的能力を有する人材の質的確保 等

(2)この課題解決のために、求められる能力

様々な分野での卓越した能力、異文化・異言語の相手との協同、世代・立場を超えたコミュニケーション能力 等

(3)求められる人材像・大学教育に対する進学需要

①新たな価値を創造する人材、優れた価値をグローバルに展開する人材、地域を支える人材

②新たな雇用が見込まれる成長分野(医療・介護等)で必要とされる高等教育修了者 等

2 大学の果たすべき役割・機能と課題

(1)大学が果たすべき役割・機能

①生涯学び続け、主体的に考える力を持った人材育成

②社会・経済の発展を牽引する人材育成

③世界的な研究成果とイノベーションの創出

④地域再生・地域課題解決における中核としての成果の発揮 等

(2)現在の大学の課題

①大学教育が、社会経済の求める人材ニーズに対応していない

②社会人学生・留学生の割合が低く、人材の流動性を促す仕組として不十分

③経営上・教学上課題のある大学の存在

④研究で世界と戦える大学数が少なくその地域が低下している

⑤大学の持つシーズ・リソースが社会で十分いかされていない 等

3 大学政策の方向性

(1)大学教育の質的転換(P8、9)

①高校教育改革、入試、大学教育改革の一体実施

②学修時間の増加、教員の組織的教育、学修環境の整備等

③学修成果の把握(アセスメントテスト等)

④社会人学生・留学生の受入れ拡大

⑤高等教育における実践的キャ.リア教育・職業教育の充実 等

(2)戦略的な機能強化

①層の厚い「リサーチ・ユニバーシティ」・研究拠点の形成(P13)
  • 大学の研究体制・環境の全学的・継続的な改善
  • 学長のリーダーシップ発揮による全学的な研究力強化策の推進
②グローバルに活躍する人材育成、国際化の拠点大学の形成(P11)
  • 拠点大学の形成などによる、大学の国際化の飛躍的推進
  • 入試におけるTOEFL・TOEICの活用・促進、英語による授業の倍増
  • 産学協働によるグローバル人材・イノベーション人材の育成推進
  • 秋入学への対応など、教育システムのグローバル化
③地域再生の核となる大学・大学群(COC)の形成(P12)
  • 地域人材の育成・雇用機会の創出
  • 地域活性化・地域支援の取組み
  • 産学連携・地場産業の振興
④多様で質の高い中間層の形成(社会人の学び直しも含む)(P10)
  • 多忙な社会人に対する教育アクセスの確保
  • プログラムの認知度・通用性の確保
  • 教育資源の偏在への対応
  • プ□グラムの専門性・充実度のバラツキ解消

(3)システム・基盤整備

①大学ビジョン等に基づく、メリハリある戦略的資源配分(P21)
  • 「リサーチ・ユニバーシティ」群の強化
  • 専門分野人材養成の充実
  • 地域貢献の充実 等
②大学群の形成に向けた大学連携の推進(国際展開のための大学間連携、連携のための多様な制度的枠組みの整備)(P15)
  • 国内大学と海外大学の本格的連携
  • 国立大学の一法人複数大学方式(例えば、地域や機能別)
  • 国公私立大学等の共同による教育研究組織の設置
③世界標準の質保証の仕組みの整備(大学ポートレート、評価制度改革、客観的指標整備等)

④大学の質保証の徹底推進(質確保のためのトータルシステムの確立、きめ細かい経営指導や支援、教学上問題のある大学への厳格な対応)

⑤質的転換のための公財政投資の充実、大学のガバナンス強化 等


(2)4つのサブWG個別の検討事項例

【研究、総合】
  • 世界に打ち勝つ研究を行うためのビジョン
  • 大学の世界ランキング向上への課題
  • イノベーションに必要な、継続的な基盤研究の実施(基礎研究が細分化し、多大な人的資源、資金が必要になっている)
  • 教育・研究への支援体制の確保(競争的資金の申請に多大な時間がかかる等)
【医系、病院】
  • 医療人材の育成に必要な事項の検討
  • 社会保障制度や医療システムなど、医療の未来像の提言
【地方、COC】
  • 「地域」の再定義
  • 地方大学の卒業生が地域に根付かない(就職しない等)
  • 強化する分野に関する地域のニーズ
【単科】
  • 単科系大学が供給する人材の必要性(ミッションの確認)
  • 一法人複数大学(財政的な縮減にはつながらない等)
  • 単科大学と総合大学の関係
  • 人文社会系の人材流出(私立大学へ)
  • 教員養成の問題(18歳人口の減少等)