2008年3月19日水曜日

共同学部・共同大学院制度

既に報道されていることですが、現在、中央教育審議会では、いわゆる「将来像答申」や「骨太2007」等を踏まえ、地域の国公私立大学・短期大学が連携して教育研究資源を最大限に活用し、地域の活性化、多様で特色ある教育研究を推進するための仕組みを支援する仕組み、具体的には、「国公私を通じ、複数大学が共同で教育課程を実施し、連名で学位授与を可能とする共同学部・共同大学院制度」の創設に向けた検討が進められています。


中教審 共同学部制度骨子案を了承 大学設置基準改正へ(2008年3月8日付北海道新聞)

中央教育審議会(中教審)の専門部会は7日、国公私立の複数大学が共同で学部や大学院をつくり、連名で学位授与を行う「共同学部・共同大学院制度(仮称)」の骨子案を示し、大筋了承した。

少子化で大学が生き残りをかける中、経費負担を抑えて特色ある教育研究に取り組めるようにする。

中教審は今夏までに、文部科学省に答申、文科省は大学設置基準を改正する。2010年度から入学を認める計画だ。

同制度は、複数の大学が共同で教育課程を編成する仕組み。現行の設置基準では、学生数に応じて教員数や施設を整備する決まりだが、複数大学で必要な教員数や施設を満たせばよい規定に改正する。

同制度がスタートすれば、地方の小規模な大学でも、他大学と組むことによってコスト負担を抑えて地域の人材育成の需要に応えられるようになる効果が期待される。また、単独で新しい学部を設けることは難しくても、高度な研究分野に進出することが可能となる。


大学連携で学部共同設置、2010年春に開始・文科省が基準改正へ(2008年3月9日付日本経済新聞)

文部科学省は複数の大学が共同で学部や大学院を設置できるようにするため、今夏をメドに大学設置基準を改正する方針を決めた。

2009年中に大学側から設置申請を受け付けて審査したうえで、10年4月から共同学部がスタートする見通しだ。

設置審査では連携するそれぞれの大学が一定数以上の必修科目を置くことや、各大学に所属する教員が分担して講義をすることなど、大学間でバランスが取れていることを条件にする。

大学間の意思統一を図るための協議会を設置することも求める。




報道向けにリリースされた内容は定かではありませんが、去る3月7日(金曜日)に開催された中央教育審議会大学分科会制度・教育部会と学士課程教育の在り方に関する小委員会の合同会議の配付資料には、次のような内容が書かれてあります。

新制度の骨子


組 織
  • 全ての構成大学に、共同教育課程を実施する共同学部・共同大学院(以下「共同学部等」という。)の組織をそれぞれ設置する。

  • 各構成大学は、共同学部等とは別に、各大学単独の教育課程を実施する基本組織(大学の場合は学部又は研究科、短期大学の場合は学科)を1以上設置していることを必要とする。

  • 共同学部等に関し、複数の大学の意思を統一するための協議会等を置く等の取扱いとする。
共同教育課程・共同学位
  • 全構成大学が共同教育課程*1を編成・実施し、共同教育課程の修了者に対して、構成大学の連名による学位を授与することとする。

  • 構成大学の連名学位を授与することから、1)いずれの構成大学も一定以上の必修科目を開設する、2)各大学が開設する授業科目は、大学ごとに相当程度の系統性が確保ざれていることを必要とする、3)共同大学院では異なる構成大学に所属する複数の教員による砺究指導体制をとるなど、各構成大学が共同で教育課程を分担していることを担保する仕組みとする。
教職員の取扱い
  • 共同学部等の教職員は構成大学のいずれかの大学に所属する。

  • 共同学部等の教員数の算定は、共同学部等全体の学生の収容定員に応じて算定することを基本とずる。その際、教育研究活動や大学運営の円滑な実施のため、全体の教員数は構成大学数の増加に応じて増加する等の特例を設ける。
学生の取扱い
  • 学生の安全やサービス等に対する責任を確保するため、構成大学間の責任が明確となるような取扱いとする。

  • 構成大学の一つが脱退する等の場合に、学生の取扱い等の具体的な措置を予め構成大学間で定めておく等の取扱いとする。

  • 共同学部等の入試の扱い、授業料の設定・収集・管理方法や各大学への配分方法は、構成大学間の協議による。

  • 連名学位を授与することから、学生は概念上、全構成大学に在籍することとなる。
校地・校舎面積、附属施設等の取扱い
  • 共同学部の校地・校舎面積の算定は、共同学部全体の学生の収容定員に応じて算定することを基本とする。

  • 必要な附属施設は、構成大学における各共同学部等の全体で有すれば足りることを基本とする。
設置認可・届出等の手続等
  • 共同学部等を設置する際の手続は、現行制壌によることを基本とし、アフターケアを確実に実施することとする。

制度の創設に向けた作業は、今後、1)平成20年夏頃までに「大学設置基準等の省令改正」、2) 平成21年中に「共同学部・共同大学院の設置認可等の手続き」、3)平成22年4月に「共同学部・共同大学院の設置」というスケジュールで進められていくようです。

文部科学省は、新制度がもたらす効果として、
  1. 一つの大学では対応することが困難な地域における人材養成や地域貢献等の地域の教研究ニーズ等に適切に対応することが可能となる。

  2. 学問の学際化、融合の進展による新たな教育研究ニーズに的確に対応し、世界の大学と伍する音度な教育研究組織をより柔軟かつ迅速に立ち上げることが可能となる。
ことを挙げています。

既に一部の私立大学では、制度の設置を待たずして実質的な動きに入っているところもあるようですが、いずれにしても、予定では平成21年度には設置認可等の手続に入ることになるようですので、各大学に与えられた検討の時間はさほど残されていません。

各大学は、今後、短い時間の中で、文部科学省や他大学の動向を睨みながら、この施策が、果たして我が国の高等教育の発展に寄与するものであるか、責任ある教育の質を保証する仕組みとして十分機能するものであるか、文部科学省の本音は何かなど十分な情報収集と吟味を重ねる必要があります。

そして、最終的には自校の経営戦略に照らして、最良の道を選択することになるのだろうと思います。

*1:共同教育課程は、他の構成大学における履修を自大学における履修とみなし、各構成大学の教育課程を修了することにより、各構成大学の学位が授与されるものであることとし、その他は各構成大学の共同学部等において行うという現行制度に則る。