2008年10月16日木曜日

国立大学法人の改革推進状況

去る10月9日、文部科学省に設置された国立大学法人評価委員会が、国立大学法人の平成19年度業務実績に対する評価結果を決定し各法人に通知したことは既にこの日記でもご紹介したとおりです。

国立大学法人の平成19年度評価結果(1) 
http://daisala.blogspot.jp/2008/10/blog-post_7311.html

国立大学法人の平成19年度評価結果(2)
http://daisala.blogspot.jp/2008/10/blog-post_6659.html

各国立大学法人に通知された内容には、各法人自身の評価結果のほかに、1)評価委員会委員長の見解、2)国立大学法人全体の評価結果の概要、3)国立大学法人の改革推進状況があります。

今日は、このうち、私達大学職員が最も参考になると思われる「国立大学法人の改革推進状況」という資料の中から主に経営に関わる部分についてご紹介したいと思います。

ご覧いただくとわかるように、この資料には、評価委員会が行う評価の観点、つまりは、評価委員会が推進すべきと考えている項目ごとに、各国立大学の取り組みのうち、推奨ないしは評価の高い事例が紹介されており、各国立大学は、この 他大学の先進事例を参考にしながら、大学の個性や特色に合った改革に取り組んでいます。


国立大学法人の改革推進状況

※ここにあげる取組については、国立大学法人評価委員会が把握した各国立大学法人の特色ある例をまとめたものであり、全法人が一律に行わなければならないと考えているものではない。


1 管理運営組織の改革と柔軟な資源配分の実施

(1)管理運営組織の改革

中期目標期間の4年目となる平成19年度においては、これまでの管理運営組織の在り方を検証し、管理運営組織の改革が進められてきており、管理運営コストの削減に向けて、管理運営組織のスリム化・効率化を積極的に進めている法人も見受けられる。

(具体的取組例)
  • 大学の経営戦略機能の強化を図るため、財政企画室、人事企画室、大学運営会議及び将来構想会議を統合して、新たに経営戦略会議を設置している。【東京外国語大学】
  • 文系6部局の事務部を統合するとともに、これまで複数部局に分散していた環境学研究科、情報科学研究科の事務処理体制をそれぞれ統合し、管理運営組織のスリム化・効率化に取り組んでいる。【名古屋大学】
  • 全学的な委員会は、入学試験委員会や全学教務委員会等必要最小限とし、基本的に理事の下に設置した各種業務遂行のためのタスクチームによる効果的・機動的な運営を図るとともに、会議開催回数の縮減等による簡素化を図っている。【富山大学】
  • 事務改革の更なる推進を図るため、事務連絡会議、事務改善委員会、事務情報化推進室を廃止し、「事務改革会議」に一元化している。【大分大学】

(2)大学全体としての戦略に基づく法人内資源配分の実現

各法人においては、学長のリーダーシップに基づき、それぞれの法人の持つ特色に応じた資源配分が行われているとともに、その資源配分が適切かつ効果的に行われたかどうかを検証し、その結果を踏まえて見直しを行う仕組みの整備が進められている。

(具体的取組例)
  • 既存の機動的、短期的な総長裁量人員の配分に加え、教員の一定数を、比較的長期を見据えた新規及び継続的(既存)教育研究事業に、役員会のイニシアティブの下、学術諮問委員会の評価を経て配分する「教員採用可能数学内再配分システム」を新たに導入し、平成19年度分11名、平成20年度分19名の再配分を決定している。【東京大学】

  • 科学研究費補助金における間接経費の配分方法の見直しを行い、全額を学長が管理し、学内共同利用施設等の整備、維持及び運営経費、並びに施設整備マスタープランに基づく施設設備等の全学的な研究開発環境の改善経費とすることを審議・決定している。【東京海洋大学】

  • 各部局が自助努力で計画的に先行投資することへの支援や、部局の不測事態に対応するため、「学内資金貸付制度」を設け、歯学部附属病院の本館改修に伴う特殊要因により生じた支出超過を補填するための支援を行っている。【大阪大学】

  • 政策経費について、戦略性の高い事項に限定した整理を行い、全学的な取組を推進するための「重点施策推進経費」と教育研究基盤としての施設・設備を中長期的計画に基づき整備するための「教育研究基盤環境整備費」に区分し、その配分は学内ヒアリングによりこれまでの事業の中間評価や申請事業の内容を精査して決定している。【岐阜大学】

2 法人としての経営の活性化

(1)業務運営の効率化及び合理化

各法人においては、業務の積極的な見直しを図り、計画的な業務量の削減、業務コストの分析、業務のアウトソーシング等を通じて、業務運営の改善への取り組みを進め、業務運営コストの削減に努めている。

(具体的取組例)
  • 業務改善を継続的に推進する「業務改善等推進室」を設置し、47の改善事項を策定し、改善に取り組んでいる。【山形大学】

  • コンサルティング会社による分析手法を基に独自に事務局各課及び各学部事務の所掌業務内容等を選定の上、コスト分析が行われている。【宮崎大学】

  • 日給月給制の週40時間勤務職員を退職金・賞与相当額を加味した年俸制へ移行し、大幅な勤怠管理事務・給与事務の省力化・簡素化が実現されている。【九州工業大学】

(2)人事評価システムの構築

教職員の個人業績評価システムについては、多くの法人で導入に向けた検討、試行が本格化するとともに、教育・研究・社会貢献・管理運営等、大学の特色に基づいた評価システムを構築し、評価を本格実施し、処遇へ反映する法人も増えてきている。

(具体的取組例)
  • 教員の教育、研究、管理運営、社会貢献に関する実績を評価し、インセンティブ付与に結びつけるシステムについては、平成18年度に策定された「教員の業績評価システムについての基本方針」に従い、各部局等において具体的な基準及び評価項目等を策定し、平成19年12月期勤勉手当の成績優秀者の選考及び平成20年1月の昇給に係る勤務成績判定に反映させる取組が行われている。【北海道大学】

  • 平成19年度に教員の個人評価を本格実施するとともに、評価結果を昇給に反映している。また、評価結果を参考に、特に顕著な功績を挙げた教員を「教育特別貢献者」として表彰する取組を実施している。【豊橋技術科学大学】

  • 全職種(事務職員、教室系技術職員、教員、医療技術職員、看護職員)の人事評価を本格稼働し、勤勉手当及び昇給に反映している。【岡山大学】

(3)財務内容の改善・充実

財務諸表・財務指標の経年比較や同規模大学との比較等、財務分析結果を大学運営の改善に活用するとともに、各法人とも、その特色に則した様々な方法により、外部資金の獲得等による自己収入の増加や、経費の節減に努力しており、それぞれ一定の成果を上げてきている。

1)財務分析結果の活用

(具体的取組例)
  • 隔月ごとに役員会に平成18年度同月のデータを比較材料とした貸借対照表及び損益計算書、附属病院収入に係る各種データを提出し、必要に応じ担当部署による実態調査を行うとともに、これらの情報を中間決算書を分析するための指標とし、経営協議会及び役員会により予算執行状況の中間的な評価を行い、効果的な配分を行っている。【東京医科歯科大学】

  • 毎月、予算の執行状況及び収入実績を経営企画室会議に報告し、対前年同月の比較分析を行っているほか、財務指標の経年比較や他大学との比較検討を行った結果を踏まえ、教育・研究設備への投資等、次期事業年度の計画の作成・実施に役立てるなど、財務情報の分析結果を効果的に大学運営の改善に活用している。【浜松医科大学】

  • 財務部職員、教員で組織する「財務分析タスクフォース」において、財務分析を実施し、「財務報告書(ファイナンシャルレポート2007)」を利害関係者のわかりやすさに配慮して取りまとめ、また、財源・経費別執行状況を部局別及び年度別に比較するとともに、さらに四半期ごとに大学運営費、自己収入、病院収入、外部資金獲得状況等の各種財務状況について、財務管理の観点から検証している。【京都大学】

2)外部資金の獲得

(具体的取組例)
  • 共同利用スペースを設け、外部資金導入に積極的な教員4名に期限付きで貸与したほか、ポスドク等による研究支援体制を充実した結果、外部資金全体では、平成16年度(約2億5,705万円)と比較し平成19年度(約4億2,860万円)は67%増となっている。【北見工業大学】

  • 個人研究費の配分にあたり、外部資金獲得のインセンティブがさらに働くよう、教授、准教授、助教の個人研究費については、必要と考えられる額を保証しつつさらに減額を行い、留保分を科学研究費補助金に採択された教員のみならず申請を行った教員に追加配分している。【政策研究大学院大学】

  • 職員宿舎の効率的運用の観点から貸与基準を緩和し、常勤職員以外の再雇用職員等入居対象範囲を見直すなど、学内資源・設備の開放による自己収入の増加方策に当たっての取組が図られている。【小樽商科大学】

3)コスト削減

(具体的取組例)
  • 目標チャレンジ活動による経費節減に積極的に取り組み、電気料で473万円(対前年度比7.2%減)、定期刊行物購入費で253万円(対前年度比23.5%減)、清掃費で369万円(対前年度比9.9%減)等、一般管理費全体で9,437万円(対前年度比7.1%減)の経費削減に努めている。【三重大学】

  • コスト削減に関してインセンティブを付与する仕組を稼働させ、環境意識の向上とともにコスト意識を醸成・向上させるため、光熱水料の部局別比較をウェブサイト上で公表するなどの取組により、一般管理費比率は4.3%(対前年度比0.3%減)となっている。【和歌山大学】

  • 教職員が出張する際にウェブサイト上で航空券の発券手続き等ができる旅費システム(Q-HAT)を本格的に実施し、回数券等の利用による経費削減額が約1,100万円となっている。【九州大学】

(4)健全な財務運営のための定員・人件費管理の推進

各法人が中期計画において総人件費改革を踏まえた人件費削減目標を定めており、この達成に向け、着実に人件費削減が行われている。

(具体的取組例)
  • 総人件費改革に対応するため、各学部における現有定数相当のポイントを一定の計算方式で算定した上で、4年間の人件費削減を見込んだ各年度の目標ポイントを設定し、柔軟な人事計画を作成する人件費のポイント制の運用を開始している。【信州大学】

  • 人件費を適切に管理し、効果的な投資を行うため、月ごとの人事計画に基づく人件費シミュレーションを四半期ごとに実施し、第2四半期末時点で決算額に近い年間総人件費見込額を把握している。【京都工芸繊維大学】

  • 各学部における教員の定年者の7割を大学管理人員として事務局が管理し、学長の裁量により弾力的かつ機動性を持たせた人員配置を可能とする取組が行われている。【高知大学】

(5)危機管理への対応

全法人において、危機管理マニュアルの策定等、全学的・全機構的な危機管理体制が整備されている。

(具体的取組例)
  • 外国人留学生・研究者の比率が高いことを考慮し、災害・事件・事故等に対応するための「危機管理マニュアル」の英語版を作成し、学内ウェブサイトで全学に周知している。【北陸先端科学技術大学院大学】

  • 静岡県立大学、富士常葉大学、東海大学と「しずおか防災コンソーシアム」を結成し、静岡県防災局等の行政と連携しながら、防災マイスターの養成、防災現場での体験授業、防災知識のアーカイブ化等、防災教育・事業を展開することとしている。【静岡大学】

  • 「渇水対策マニュアル」を作成し、香川用水の取水制限の状況と高松市渇水対策本部等と連携を取りながら、学内の節水対策を行っている。【香川大学】

(6)自己点検・評価及び第三者評価

自己点検・評価、認証評価、国立大学法人評価(年度評価)及びその他の外部評価等の結果を活用し、教育研究等の充実を図っている。また、ウェブサイトの活用や大学独自のデーターベースの構築等を通じて、評価作業の効率化に向けた取組も進められている。

(具体的取組例)
  • 充実した情報基盤の上に、教育研究、管理運営に必要な様々なデータベースシステムを整備しており、それらを活用して中期計画、年度計画の進捗状況管理、実績報告書作成作業等の効率化が図られており、その結果、関係教職員の実務負担が軽減されている。【東京工業大学】

  • 中期計画・年度計画の進捗状況管理システムを活用し、学内の諸活動の進捗状況を役員、関係教職員が常時把握できるようになっており、実績報告書の作成等の評価作業の効率化・負担軽減が図られている。【一橋大学】

  • 年度計画の毎月の進捗状況をウェブサイト上で教職員全員が共有し、年度計画の推進を図るとともに、評価意識の向上を促すことを目的に独自で構築している「年度計画進行管理システム」に加えて、新たに「中期目標・中期計画進行状況管理システム」を構築しており、さらなる評価作業の効率化を図っている。【福井大学】

  • 自己点検・評価制度における評価結果等を活用し、教育部門、研究部門それぞれに「ベストティーチャー賞」(賞状及び副賞(教育研究費20万円))を授与する「優秀教員表彰制度」を設けている。【鳴門教育大学】

3 社会に開かれた客観的な法人運営

(1)外部有識者の積極的活用

経営協議会の学外委員をはじめとする外部有識者の積極的活用により、法人運営の一層の活性化を図る取組が進展している。

(具体的取組例)
  • 大学の取組に対して、学外有識者の視点からの助言を得るため、経営協議会の学外委員を話題提供者とする「全学対話集会」を全教職員及び学生を対象として開催し、大学の今後の在り方について意見交換を行っている。【お茶の水女子大学】

  • 知的財産本部会議、発明審査委員会に新潟TLOや特許事務所から発明コーディネーター等の学外専門家の出席を求めて、審議を行っているほか、各部局においても、人文社会・教育科学系談話会や歯学部諮問会議等、学外有識者の意見を反映させる体制を整備し、部局運営の改善に活用している。【新潟大学】

  • 経営協議会の意見を法人運営に積極的に活用するとともに、アドバイザー会議を開催し、大学の国際戦略、技術者教育の今後と大学の役割等について助言・提言を得るなど、学外有識者の提言等を取り入れる工夫を行っている。【豊橋技術科学大学】

  • 経営協議会委員等を講師に大学運営全般に関わる基本的知識の取得とマネジメント能力の向上を図ることを目的とした「三重大学マネジメントセミナー」を開催し、トップマネジメントによる速やかな意思決定と戦略的運営の向上に努めている。【三重大学】

(2)監査機能の充実

監事や会計監査人による監査結果を適切に法人運営に反映させる動きが進展している。また、内部監査については、全ての法人において、事務局から独立した内部監査組織の設置など、監査対象組織からの独立性が確保された内部監査の実施体制が整備されている。

(具体的取組例)
  • 内部監査として、全部局を対象に科学研究費補助金を主とした補助金等の会計監査を実施したほか、随意契約すべてを対象とした監査を実施している。【一橋大学】

  • コンプライアンス委員会を設置し、外部の有識者をアドバイザーとして参加させ、監査報告及び監査計画等について意見交換を行っている。【浜松医科大学】

(3)情報公開の促進

社会に対する説明責任の観点から、各法人とも、教育研究等の状況について引き続き積極的な情報提供に努めている。

(具体的取組例)
  • 大学教員が講師となって全国の高等学校を訪問し地球環境問題に関する講義を行う「北海道大学プロフェッサー・ビジット2007」を実施し、全国28校を訪問し7,540名が講義に参加し、北海道大学の地球環境問題に対する取組を全国の高校生に向けて発信している。【北海道大学】

  • 創立130周年を迎え、11月の記念式典をはじめとして、シンポジウム、海外大学とのスポーツ・学生交流、展示会・展覧会等の多様な記念事業を実施した。また、「知のプロムナード」構想として、各地区キャンパスに、研究成果等のモニュメントやベンチを設置するなど学生、教職員等の知的交流を深める場を美化・整備している。【東京大学】

  • 日本工業規格(JIS規格)の高齢者・障害者等配慮設計指針等を踏まえ、大学ウェブサイトの充実につとめた結果、「全国大学サイト・ユーザビリティ調査2007/2008」において全国国公私立大学200校中1位となっている。【徳島大学】


このように、国立大学は、平成16年4月の法人化以降、自律的・自主的な改革に邁進してきました。

各国立大学の取組実績については、国立大学法人評価委員会による評価以外にも、例えば、国立大学財務・経営センターが行う経営支援活動の一環として広く紹介されています。

■国立大学法人財務・経営に関する取組事例について

(1)平成18事業年度(財務経営支援研究会抽出事例)
http://cz.biglobe.ne.jp/cl/F02201000109/399/7/1342078

(2)平成17事業年度(財務経営支援研究会抽出事例)
http://cz.biglobe.ne.jp/cl/F02201000109/399/8/1342078

■大学訪問調査による「取組事例」について

(1)国立大学法人取組事例Vol.1(訪問調査概要)
http://cz.biglobe.ne.jp/cl/F02201000109/399/9/1342078

(2)国立大学法人取組事例Vol.2(訪問調査概要)
http://cz.biglobe.ne.jp/cl/F02201000109/399/10/1342078

(3)国立大学附属病院取組事例Vol.1(訪問調査概要)
http://cz.biglobe.ne.jp/cl/F02201000109/399/11/1342078