2009年1月4日日曜日

高等教育政策の動向

中央教育審議会(山崎正和会長)は、昨年12月24日に開催された総会において、「学士課程教育の構築に向けて」と題した答申を塩谷文部科学大臣に提出しました。

また同時に、「高等専門学校教育の充実について」と題する答申を提出されるとともに、塩谷文部科学大臣から、「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」の検討が新たに中教審に諮問されました。

答申:学士課程教育の構築に向けて

本文、概要等(文部科学省ホームページ)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1217067.htm

答申に関し各紙は次のようにコメントしています。

大学生の学習目標「学士力」規定を 中教審が答申(2008年12月24日 朝日新聞) 

答申は、「大学全入時代」が迫る中、日本の大学が与える学位(学士)の質を保ち、国際的な通用性を高めることが狙い。1)知識・理解、2)汎用的技能、3)態度・志向性、4)統合的な学習経験と創造的思考力の4分野で、コミュニケーションの能力や自己管理力など計13項目を学士力の指針として列挙。大学には、学位の授与を厳格化し、水準を確保していくことなどを求めた。
大学入試をめぐっては、推薦入試や、面接などを重視して選抜するAO入試が広がり、学生の学力不足を指摘する声が強まっている。今回の答申では、大学の入り口段階での対応策として、高校段階でどれだけ学力が身についているかを客観的に把握するための「高大接続テスト(仮称)」の検討も進めるよう提言した。
《全文》http://www.asahi.com/national/update/1224/TKY200812240076.html

「学士力」 卒業認定を厳しくしたい(2008年12月25日 産経新聞)

かつて「学士」といえば高い教養と専門性が尊敬された。学士という言葉自体、死語のようになり、さらに大学全入時代を迎えて学生の質が急速に低下した。
受験勉強で疲れ入学後は勉強しない。授業に出なくても簡単に優やAの成績が取れる。日本の大学にはこんなイメージが根強い。実際、学生の学習時間は授業を含めても1日平均でたった3時間半という調査結果もある。
米国の大学のような厳しい卒業認定は、中教審などで過去にも提言された。文科省は大学設置基準を改正するなどし、講義のやり方など教育方法改善や成績評価基準の明示などを促している。
教育内容の改革に取り組む大学は多い。しかし、成績の悪い学生に厳しく退学勧告するような大学はごく一部だ。
答申では、取得単位の成績の平均が基準に満たないと落第する米国型の「GPA(グレード・ポイント・アベレージ)」の導入など厳しい成績評価方法を例示している。こうした評価法を実際に導入している大学もある。改革を怠れば大学間の差は開くばかりだ。
学力試験なしで入れるような推薦入試などにも見直しを求めている。大学入試は小、中、高校の教育への影響が大きい。大学の教育方針と関連させた入試方法の改善が重要だ。
大学をめぐる環境は厳しさを増している。就職活動は年々早まり、景気悪化のなか、大学の就職課は1年生から学生に発破をかけている状況だ。就職支援も確かに重要だが、企業側は就職活動のテクニックの上手な学生を求めているわけではない。
答申は大学には「目先の学生確保」が優先される傾向があるとクギを刺した。変化する時代には基礎をしっかり持った資質が必須だ。学部教育が本来の役割を果たすよう見直すときである。
《全文》http://sankei.jp.msn.com/life/education/081225/edc0812250334000-n1.htm

答申:高等専門学校教育の充実について

本文、概要等(文部科学省ホームページ)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1217069.htm

諮問:今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について

諮問理由

産業構造の変化や雇用の多様化・流動化、様々な分野での国際競争の激化、少子高齢化の進行など、社会全体が大きく変化するなか、学校には、社会人・職業人として自立した人材の育成が強く求められている。
一方で、フリーター・若年無業者や、新卒者の早期離職が問題となるなど、学校から社会・職業への移行が必ずしも円滑に行われていない状況も見られる。
このような状況に鑑み、平成18年に改正された教育基本法においては、教育の目標の一つとして、「職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと」が規定され、本年7月に閣議決定された教育振興基本計画においても、「特に重点的に取り組むべき事項」として「キャリア教育・職業教育の推進」が挙げられたところである。
これらを踏まえ、今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について、中長期的展望に立ち、総合的な視野の下、検討を行う必要がある。

諮問理由説明(文部科学省ホームページ)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1217075.htm

諮問に関し各紙は次のようにコメントしています。

キャリア教育を諮問、ニート対策に 文科相(2008年12月24日 産経新聞)

非正規雇用の増加など、就業をめぐる社会構造が変化する中、就職して3年以内に離職してしまう若者は、中卒者で約7割、高卒者で約5割、大卒者で約4割にのぼっている。また、フリーターの若者は180万人を超え、ニートも60万人を上回っており、不安定な就業形態や勤労離れが社会問題化している。
中教審では今後、高校や大学での職業体験やインターンシップなど、社会人へのスムーズな移行に向けた対策のほか、多様化する生徒のニーズに応じた職業教育のあり方などを、小、中学生から高校生、大学生まで幅広く検討する見込み。
《全文》http://sankei.jp.msn.com:80/life/education/081224/edc0812241322008-n1.htm


今後の学校における体系的なキャリア教育の在り方を考える (2009年1月2日 KKSブログ)

社会が複雑化、多様化する中、経済のサービス化、終身雇用・年功型賃金・新卒一括採用といった雇用慣行の変化、非正規雇用の増加、企業における職業教育訓練の縮小など、我が国の産業構造・就業構造は大きく変化してきています。
このような中、学生・生徒等の職業に関する興味・関心や進路も多様化するとともに、約181万人のフリーター、約62万人の若年無業者の存在や、新卒者の早期離職(就業後3年以内の離職者が中学校卒業者で約7割、高等学校卒業者で約5割、大学等卒業者で約4割)が問題になるなど、学生・生徒の社会・職業への移行が円滑に行われていない状況が見られます。
内定取り消しなどの暗いニュースが多い現今だからこそ、子どもたちに少しでも夢や希望を与えられるようなキャリア教育を一刻も早くおこなう必要があるのではないでしょうか。中央教育審議会から出る結論が現場にきちんと反映されて良い体制が発足されると良いですね。
《全文》http://www.kknews.co.jp/wb/archives/2009/01/post_2592.html