2009年5月19日火曜日

附属学校の存在意義

今、国立大学の附属学校が揺れています。

国立大学(正確には、教員養成系の国立大学・学部)には、「附属する大学・学部における児童・生徒・幼児の教育・保育に関する研究に協力すること、当該大学・学部の学生の教育実習に当たること」を主な任務として附属学校(幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校等)が設置されています。現在その数は、全国で262校あり、約99,000人の児童生徒等が在学しています。

現在、国立大学では、平成22年度から始まる第2期中期目標・中期計画策定の山場を迎えています。この日記でも既にご紹介しましたが、各大学は、この中期目標・中期計画の策定に当たって、国立大学法人評価委員会が取りまとめた「国立大学法人の組織及び業務全般の見直しに関する視点」への対応が求められています。

このうち、附属学校に関しては「附属学校は、学部・研究科等における教育に関する研究に組織的に協力することや、教育実習の実施への協力を行う等を通じて、附属学校の本来の設置趣旨に基づいた活動を推進することにより、その存在意義を明確にしてくことが必要ではないか」とされているところです。

さらに、各大学が検討を行っている第2期中期目標・中期計画のあり方に関し、附属学校についての検討に資する方向性を提示するという視点から、文部科学省の下に設置された有識者会議により、1)附属学校の設置趣旨に基づく本来の役割、及び2)附属学校の新たな活用方策 についての検討結果が取りまとめられ、去る3月26日付で文部科学省から関係大学宛通知されました。今後大学は、極めて短時間の間に、これまでの附属学校の課題について検証し、より一層の存在意義の明確化と活用方策について検討し、中期目標・中期計画に反映させなければなりません。

思えば、これまで国立大学の附属学校の運営は、所属する大学の意思というよりは、附属学校の同窓会組織の意図に大きく左右されてきた感が否めません。大学は附属学校をほとんど把握してきませんでしたし、附属学校の業務運営に大学の意思を反映してきませんでした。その努力を怠ってきたことは否めない事実だろうと思います。

現在の附属学校の中には、次代の教育課程を生み出すための研究を行うことが存在意義の一つであるにもかかわらず、公立学校がやっているような学習指導要領の後追いをやっているところがあります。大学と一体となって大学の教員がプロジェクトを組んで附属学校にやらせてみようという発想が欠けています。また、例えば、小・中・高一環教育をやるために高等学校を設置するといった大胆な発想もありません。これから附属学校が生き残っていくためには、何らかの形で附属学校に面白味を持たせるような考えを大学が示す必要があります。

都道府県と附属学校との教員の人事交流については、都道府県から派遣された附属学校の教員を育成していくためには、今後とも教育委員会との強い連携を保つことが必要です。しかし現実は、附属学校が個人的レベルで人材を発掘しリクルートしているのが実態であり、大学あるいは附属学校が組織として教育委員会と正式に交渉して人材を確保するような仕組みは残念ながら確立されていません。そのために附属学校に優秀な人材が集まってこないし、結果として附属学校のステータスが上がらず、親からみれば普通の公立学校に子どもを入れた方がいいということになっているのです。

大学又は附属学校は、教育委員会に対して、どういう人材が欲しいのか、附属学校に来ればきっちり育てる自信と能力があること、したがって都道府県に戻ったらしかるべき処遇をして欲しいことを明確に主張すべきです。現在は行きあたりばったりの人事になっているような気がします。

附属学校は、教育実習をはじめ教育臨床の場として最も活用できる重要な場所にもかかわらず、もったいない使い方をしています。このため、附属学校の運営に外部の目を入れ、教育委員会の重点課題に対応した業務運営を行うべきです。教育委員会関係者を加えた附属学校の将来構想や運営に関し協議する場や仕組みを早急に構築すべきだと思います。

繰り返しになりますが、これまで多くの大学は、残念ながら附属学校をさほど大事に思ってこなかったし、評価してこなかったと思います。附属学校の活かし方にはいろんな選択肢があるはずです。文部科学省の政策(国策)をうまく使いながら、公立学校のような指導要領の後追い・定着を行うのではなく、指導要領の先取りを行うことが使命であり、そのことこそが「国立」であることの意義なのではないでしょうか。

今まさに、大学の意思として今後附属学校をどう活用していくのかを明確に打ち出す時期に来ていますし、次期中期目標・中期計画策定のこのタイミングが千歳一隅のチャンスだと思います。

それでは、文部科学省から関係国立大学に示された上記有識者会議による検討結果「国立大学附属学校の新たな活用方策等について」から主要な部分を抜粋(一部編集)する形でご紹介します。


現状と課題

1 組織運営上の現状と課題

法人化後の国立大学は、予算、組織、人事など様々な面で学長のリーダーシップのもとに運営されるシステムとなっている。しかし、附属学校の運営については、大学・学部側、附属学校側のいずれにおいても、附属学校は大学・学部の組織の一部を構成しているとの認識が十分でないために、学長のリーダーシップによるマネジメント機能が十分発揮されているとはいえない状況が見られる。

具体的には、ほぼ全ての附属学校の校長は、大学・学部の教授をもって充てられており、これにより大学・学部との適切な連携が図られることが期待されているが、現状としては、大学・学部で相当量の授業等を担当しながら校長としての校務を行っている場合が多く、附属学校長としてのリーダーシップが発揮できず、大学・学部と一体となった学校運営が十分なされていない状況も見られる。

また、大学・学部の教員も、研究上の個別のつながりを除けば、附属学校の教育活動に対する認識・理解が十分でなく、大学・学部の教員が日常的に附属学校の教育活動に関わることはあまり見られない

特に教員養成系大学・学部については、本来的に地域に輩出する教員の計画的養成や資質・能力の向上に寄与することを使命としており、その附属学校も地域の教育界との連携協力が大きく期待されている。また、附属学校の教員は、地域の公立学校との人事交流によるものが多いにもかかわらず、大半の附属学校では地域の教育委員会等との日常的な関わりが総じて乏しい傾向にあり、地域の教育界の意向が附属学校の教育研究活動に十分反映されていない現状が多く見られる。

2 業務運営上の現状と課題

こうした結果、附属学校の運営がややもすれば学校側の事情でなされることになり、教職員や児童生徒、施設設備などの状況に照らして教育活動が不活発であるなど、存在意義が不明確で、大学・学部、さらには地域の教育界の期待に十分応えていないとの指摘がある。

例えば、附属学校の従来からの役割である「大学・学部における教育に関する研究に協力」 については、大学・学部の研究方針に基づくものではなく、附属学校が独自の立場で取り組んでいるものがほとんどである一方、もう一つの役割である「大学・学部の計画に基づく教育実習の実施」 については、附属学校に任せきりになり、大学・学部の側が責任を持って実施する体制にはなっていないとの意見がある。

こうした状況を踏まえると、附属学校が、附属学校の特性を活かした先導的・実験的な学校教育の実践への取組を通じて国の教育政策に寄与するという役割を発揮することは、現状では難しいものと考える。同時に、地域の教育委員会と連携しながら、地域の教育課題を踏まえた調査研究に取り組むことについても課題が残る状況である。
3 改善の必要性

現在、第一期中期目標・中期計画期間の最終年度を前に、第二期に向け、各国立大学において、組織・業務の見直しの検討が進められているところである。

こうした中において、附属学校は、学級編制及び教職員定数の標準に沿った教職員規模を維持する必要性から、結果として附属学校の人件費が附属学校を持つ大学・学部の運営費の相当部分を占め、財政的に当該大学・学部の運営の大きな負担となっている。

国立大学法人運営費交付金の削減や政府における総人件費改革が進められている中で、各大学においては、第一期中期目標・中期計画期間においても附属学校の人件費削減が行われたが、第二期中期目標・中期計画期間を迎えるに当たって、業務運営の効率化の観点や従来の設置趣旨等に鑑み、附属学校の組織・業務の在り方の見直しを進める必要性が高まっている。

こうした時期に、国として、これまで述べた課題を踏まえつつ、これからの附属学校の存在意義、組織運営の改善の方向性、業務運営の改善の方向性、さらに、附属学校の新たな活用方策を示すことが求められる。

附属学校を持つ大学においても、これらを踏まえ各附属学校それぞれの存在意義、これに基づく適切な運営体制及び業務運営や新たな活用方策を明らかにし、学内はもちろん附属学校の保護者、地域の学校関係者等の理解を得ることにより、適切な組織や業務の見直しを進めていくことが可能になると考えられる。


改善方策

1 附属学校の存在意義(役割)の明確化

これからの附属学校は、1)国立大学の附属学校である特性を活かし、大学・学部の持つ人的資源を活用しつつ、公立学校で実施するものとは異なる先導的・実験的な取組を中長期的視点から実施し、関連する調査研究を推進する「拠点校」として、国の教育政策の推進に寄与すること、2)地域の教育界との連携協力の下に、地域の教育の「モデル校」として、地域の教員の資質・能力の向上、教育活動の一層の推進に寄与することが求められている。各附属学校はそれぞれの存在意義(役割)を明確化する必要がある。

2 組織運営上の改善

附属学校の存在意義等を踏まえ、附属学校の新たな組織運営の改善策としては以下の方策が考えられる。

(1)学内マネジメント体制

大学・学部の教学側の長(学長、副学長、学部長等)、附属学校の校長、副校長などからなる附属学校運営会議(仮称)を設置するなど、大学・学部と一体となった附属学校の運営を推進するための学内マネジメント体制を確立する。

また、総合大学の附属学校の場合でも、附属学校担当の理事を置き、附属学校運営会議(仮称)の構成員に加えるなど、大学全体の中での附属学校の位置付けを常に明確にしながら、附属学校についての全学的なマネジメント体制を構築することが求められる。

(2)地域に開かれた運営体制

1)地域運営協議会(仮称)等の設置

附属学校に地域運営協議会(仮称)を設置し、都道府県教育委員会関係者等を構成員に加え、附属学校の運営に地域の教育委員会のニーズを反映させる仕組みを構築するとともに、可能な限り、大学・学部内に都道府県教育委員会をはじめとした地域との連携担当窓口を設置することが望ましい。

2)公立学校との人事交流に関する基本方針の策定

大学・学部の教育研究方針などに基づき、大学・学部として附属学校の教員に求める人材像を明確にしつつ、地域の教育委員会との人事交流を進める。

同時に、人事交流で公立学校の教員を受入れるに当たっては、附属学校での教育研究活動や地域に向けての研究成果の発表等の経験が教育研究方法や指導力の修得等、教員としての資質・能力の向上につながる旨の受入れ方針を教育委員会に対し明確にすることが望ましい。

(3)大学・学部教員と附属学校教員との連携体制

大学・学部の教員が研究実践の一環として附属学校で授業を担当したり、また高い実践性を備えた附属学校教員が大学・学部の授業を担当するなど、大学・学部教員と附属学校教員が日常的に連携し、一体感が培われるような組織運営を図ることが求められる。

さらにこの連携の中で、大学・学部教員と附属学校教員が研究テーマを共有し、共同研究体制を組織するなど学内の人的・物的資源の効率的活用を図ることも考えられる。

3 業務運営上の改善

各附属学校の特性や人的・物的資源、大学・学部の状況を踏まえつつ、附属学校を可能な限り、国の教育政策の推進に寄与する拠点校、ないし、地域の教育に寄与するモデル枝として育成していくために、業務運営を進める上で、以下の方策が考えられる。

(1)国の拠点校としての育成

1)研究開発学校制度等の活用

文部科学省の「研究開発学校制度」、「教育課程特例校制度」(学校又は地域の特色を活かした特別の教育課程を実施することができる制度)などを積極的に活用し、教育課程や指導方法についての先導的・実験的な研究を行う。

2)文部科学省等との連携

拠点校として国の教育政策を推進する場合には、大学・学部(附属学校)に連絡担当窓口を設置したり、国の教育行政に精通した者(例えば教科調査官やその経験者等)を活用す るなど、文部科学省(初等中等教育局)や国立教育政策研究所との連携を図る。

3)附属学校の全国共同利用化

中央教育審議会大学分科会等で審議中の全国共同利用の教育施設として、学内の大学・学部附属の教育実践研究センター等と連携を図りながら、国の教育政策に寄与する拠点校と しての附属学校を位置付け、全国の教育関係者や他の国公私立大学の研究者等も参画し、教育研究活動を実施することを可能とする。

4)「理数教育支援センター(仮称)」との連携

国立大学に理数教育への総合的な支援を行うための「理数教育支援センター(仮称)」 などが設置される場合には、教材・指導方法の開発、理数教員の現職研修等を行う場合に、附属学校をその実験的取組の場として活用する。

(2)地域のモデル校としての育成

1)地域の教育委員会との連携

地域の教育委員会と連携しながら、地域の教育課題を踏まえた調査研究テーマを設定し、調査研究の推進やその成果の地域への普及を図る。

2)現職教員の研修カリキュラムを開発する場としての附属学校の活用

附属学校を現職教員の備えるべきスキルを研究し開発する場として位置付ける。
具体的には、現職教員の教科指導や生徒指導等の実践力向上につながるそれぞれのライフステージに応じたスキルアップのための体系的な研修カリキュラムの開発を行う。その際、地域の教育委員会の教員研修センター等との連携協力を積極的に進める。

3)附属学校の免許状更新講習の場としての活用等

附属学校が免許状更新講習の場を提供することは、専門的知識・経験を有する学校として地域の教育の改善・充実に貢献するものである。また、そのことを通して附属学校の教員  が地元公立学校の様々な学校種の教員と交流する機会を得ることで、学校現場を取り巻く地域の状況や学校現場が抱える課題等を的確に把握できる機会になるものと考えられる。

また、附属学校の教員が公立学校等における校内研究等に講師として参画することも、地域の教育の改善・充実に資するものとして意義あるものであると言える。

(3)全国規模の研究協議会の開催による地域を越えた普及・啓発

全国の附属学校の研究成果を発表する研究協議会を国立教育政策研究所の協力の下、各大学が共同で開催することにより、附属学校の研究成果について、地域を越えた全国規模の普及・啓発を図る。

また、各附属学校で開催する研究協議会には他の学校種や私立学校の参加を促すなど、広く地域に開かれ、更なる研究の推進を促すものとなるよう配慮する。


新たな活用方策

国の初等中等教育政策の推進に貢献する観点から、附属学校の新たな活用方策として、例えば、次のような取組が考えられる。

1 外国人子弟等の積極的受入れによる教育の在り方の調査研究

国際化に対応した教育や異文化共生教育の在り方を調査研究するため、附属学校において外国人子弟や帰国児童生徒等を積極的に受入れ、英語等を用いた教育課程を編成し、授業を実施する。また、地域の定住外国人の子どもや帰国児童生徒のうち日本語の習得が不十分な子どもへの効果的な日本語指導や教科指導に関する調査研究を推進する。

2 理数教育など優先的な教育課題に応じた先導的な指導方法等の開発

理数教育、外国語活動、国際理解教育、ICT能力育成、飛び級、学校・学級規模と教育効果の関係など、初等中等教育政策において優先的に進める必要があるテーマに関し、指導内容・指導方法等の調査研究を進める。

3 学校の組織マネジメント・人材育成の調査研究

学校の組織運営をサポートするスタッフ(スク一ルカウンセラー、苦情対応者、学校事務処理担当など)の人材育成の在り方、学校事務の適切な外部委託の在り方など、学校の組織マネジメントについての調査研究を進める。

4 異学校種間の接続教育、一貫教育の調査研究

幼稚園、小学校、中学校、中等教育学校、高等学校等複数の学校種が設置されている附属学校において、異学校種間の接続教育および一貫教育の在り方について調査研究を進める。

5 特別支援教育への寄与

教員養成系大学・学部のほぼ全てに特別支援学校がある特性を活かし、附属学校間のネットワークを構築しながら、発達障害のある児童生徒への対応、指導方法等についての調査研究を進める。

さらに、附属学校を特別支援教育の理解と実践を深める場として位置付け、附属特別支援学校において附属小・中・高等学校等の児童生徒の体験活動、附属小・中・高等学校等教員の特別支援教育に関する研修などを実施するとともに、附属小・中・高等学校等での日常的な教育活動で特別支援教育の視点を重視した取組を進める。

また、附属特別支援学校において、児童生徒の社会での人間関係の構築の仕方や職業観等を油表する学習活動に関する調査研究を実施する。

6 児童生徒の勤労観、職業観を育てるためのキャリア教育の推進

子どもたちが勤労観、職業観を身に付け、主体的に自己の進路を選択・決定し、社会人・職業人として自立していくことのできる資質を養うキャリア教育についての調査研究を進める。


文部科学省による財政的支援

上記のような施策を推進し、附属学校を国の政策的課題との連携を図る拠点校、あるいは、地域の教育委員会や学校と連携したモデル校として位置付け、初等中等教育行政との連携を前提とし、意義ある成果の達成が見込まれる調査研究に対しては、文部科学省として、既存の財政支援の枠組みを十分に活用しつつ、重点的な財政支援策を講じていくことが望ましい。

さらに、将来的には、附属学校が全国共同利用の教育拠点として位置付けられた大学に対しては、その取組を支援するための財政上の新たな支援措置について検討することが望まれる。


従来からの役割の充実

先導的・実験的な取組としての附属学校の新たな活用方策の検討とともに、附属学校の従来からの役割である「大学・学部における教育に関する研究に協力 」、「大学・学部の計画に基づく教育実習の実施」 の充実が重要であることはいうまでもない。

これらの役割を適切に果たしていく場合には、附属学校の組織運営の改善を図るとともに、「今後の国立の教員養成系大学・学部の在り方について(平成1 3 年11月22日 「国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会」)での指摘も参考にしながら、以下の取組を進めていくことが求められる。

1 大学・学部における研究への協力について
    • 大学・学部や附属学校の教員個人同士の問題としてではなく、大学・学部の教育に関する研究に附属学校が組織的に協力する取組を進める。

    • 大学・学部と附属学校が連携して、大学・学部の研究方針に基づき、附属学校を活用する具体的な研究計画の立案・実践を行う。

    • 附属学校を大学・学部の新任教員等が大学で実践的な視点を踏まえた教員養成を行うためのファカルティ・ディベロップメントの場として積極的に活用する。
2 教育実習について
    • 教育実習は、大学・学部の計画に基づき、附属学校との連携の下、大学・学部の側が責任を持って実施に当たり、さらにその教育成果について検証することが望ましい。

    • 大学・学部の教育実習計画は、附属学校を十分に活用したものとする。(附属学校と公立学校での教育実習の有機的な関連付けについて検討を進めることが必要。)

なお、各附属学校の組織運営や業務運営の見直しを行うに当たっては、これまで述べてきた附属学校の3つの役割、すなわち、「大学・学部における教育に関する研究に協力」、「大学・学部の計画に基づく教育実習の実施」、「(新たな活用方策としての)先導的・実験的な取組」 について、それぞれ検討する必要がある一方、限られた資源の中で、附属学校の教職員の負担等を踏まえた実行可能な在り方を検討する必要がある。

このため、例えば、当面 5~10年間は当該附属学校の取組の重点を「新たな活用方策」 を主としたものとする、あるいは「大学・学部の計画に基づく教育実習の実施」 を主としたものとするといったように、大学・学部の教育研究活動の方針に基づき、比重の置き方を明確にして附属学校の教育研究活動を推進していくといった在り方も考えられてよい。

また、「大学・学部における教育に関する研究に協力」と「新たな活用方策」 の2つの役割を必ずしも別個のものと捉える必要はなく、大学・学部の教育研究の方針に基づき、両者を統一的なものとして掲げ、学内の人的・物的資源の効率的な活用を図ることも考えられる。


各国立大学による対応

今後、各大学においては、上記にあるような具体的な改善方策および活用方策を参考とし、附属学校を学内の教育・研究の中でどのように位置付けていくかについて議論し、各大学の取組が確実な成果を挙げるような組織運営や業務運営の体制を構築することが必要であり、それらの改善方策や活用方策を各大学の判断で、第二期中期目標・中期計画等に反映していくことなどにより、附属学校の必要性について学内外にその説明責任を果たしていくことが必要である。

また、国(文部科学省)としても、各大学の附属学校の組織・業務の在り方の見直し状況を踏まえ、引き続き各大学の取組を促し支援していく必要がある。


おわりに

これまで述べてきたように、附属学校は大学という教育研究組織の重要な構成要素であるとの全学的な共通理解を形成し、附属学校についての確固とした学内マネジメント体制を確立することが強く求められる。

その上で、大学内で附属学校の在り方について真剣かつ活発な議論を行い、附属学校の存在意義を明確化し、そのミッションに応じた組織運営・業務運営上の改善策を講じ、附属学校の具体的な活用方策を高く掲げることで、大学が附属学校を持つことの説明責任を果たしていくことが必要である。

さらに、各大学においては、附属学校での調査研究活動において有意な研究上の成果を挙げ、その研究成果を地域さらには全国へ発信していくことが不可欠である。

これらの取組を進めることにより、附属学校の存在意義について、広く国民の理解を得ることにつながるという視点を関係者が常に持つことの重要性を最後に指摘したい。