2009年10月30日金曜日

教授会の責任と権限

教授会で各教員への予算配分を巡り、自分に配られる研究費が少ないと少数の教員が反発、収集がつかなくなり、なんと”投票”を行って決着をつけた大学があるそうです。わずかな研究費の多寡に固執し、多くの教員の貴重な時間と労力を費やすおろかなこのような行為が常態化している国立大学の醜態を、教員の雇用主である(血税を注いでいる)国民の皆さんは、どうお感じになるでしょうか。

当然ながら怒り心頭といったところでしょう。感情的に申し上げれば、このような常識やモラルに欠けた教員は即刻首にしてしまえ! 民間企業であれば許されないことだ、こんな教員を野放しにしている国立大学も潰してしまえ! ということになるのでしょうか。

国立大学では、教員の給与・退職金などの人件費や研究費は、運営費交付金という税金によって賄われています。そのことを全く認識していない教員は、まるで自分の既得権のように研究費の拡大を大学に対して要求してきます。これは、税金の負担増を国民に求めているようなものです。とても最高学府に勤め学生を教え導く立場の人間のやることではないように思われます。情けない限りです。

聞くところによれば、これは文系学部で起こったできごとのようですが、一般的に考えれば、文系では、高額な実験設備を使って新たな知見を生み出すような研究をしている理系と違って、例えば、フィールドワークや書籍による調査研究が中心であり、旅費、学生のアルバイト代、書籍代程度の割と少額な研究費で1年間を過ごしていけるような研究が多く、教授会という場で目くじらを立て騒ぎ立てるほどお金に困るような研究はほとんどないと思います。(確かにお金はいくらあっても困らないわけですが・・・)

それにしても、わずかな予算の分配について、わざわざ”投票”までやるとは・・・。社会から隔絶した”村社会”ならではの光景です。思えば、予算の配分に限らず、教授会というところは昔から些末なことに貴重な時間と労力を費やし、不毛な議論を長時間にわたって続けてきたようです。その教授会の構成員たる教員には高額な人件費が支払われており、これは、学生の教育やそれを支える研究のために国民が汗水流して働き納めた税金なのです。


以前、「パーキンソンの凡俗の法則」というものをご紹介しました。
http://d.hatena.ne.jp/asitano1po/20090915#p1

ここで指摘されていること-根本的で重大な組織の問題、「何をやるか」「どうやってやるか」という戦略や方針、多くの人に影響を与えるような決断などは、権限のある人や管轄部署にお任せして責任を放棄し、一方で、どちらでも良いようなこと、分かりやすいことに対しては急に生き生きして口を出す人が増える-は、まさに、教授会や各種委員会の内情そのもののような気がします。
さて、社団法人関西経済同友会が、今年7月に「社会が求める大学の人材輩出戦略-まずは学部教授会の改革から」というタイトルの提言を行っています。この中で、「何故大学は情勢変化に適応できないのか?」ということについて、「権限はあるが責任は問われない教授会が、学長や理事長による大学の組織運営を阻害している。学生は学部の壁に囲まれ、自由な学習の機会を得られずにいる。」という指摘とともに、その主な理由を次のように述べています。”図星”といったところでしょうか。

1 リーダーシップの不在と大学運営の稚拙さ

大学が情勢変化に適応するためには、学長・理事長の強いリーダーシップが不可欠である。しかしながら次のような要因により、それが発揮されていない。
1)学長は通常、理事会の任命ではなく、学内選挙で選出される。このため、産業界や社会のニーズに治った改革を推進する意欲をもった人が選ばれることは稀である。仮に、そのような人が選ばれても、在任中に学内の教職員にとって痛みを伴う改革を進めれば再選は難しくなる。従って、社会のニーズに沿って連続的に改革が進む情勢にはない。
2)学長は教育・研究者から選ばれるため、大学の管理運営の専門性や経験をもった人は少ない。また、学長を支える大学職員の専門性は、必ずしも高いとは言えない。さらに、多くの私学では学長と理事長とは別のポストになっているため、学長は教育に、理事長は経営に責任を持つというように、教育と経営が一体化していない。

2 最大の阻害要因は教授会自治

学校教育法は、「教授会は重要な事項を審議する」ことを定めている。しかし、教授会は教員の人事権、カリキュラムや科目の編成権、学生の成績や身分などを決める大きな権限を有するが、大学全体の経営や運営に関する責任を問われないため、自ら所属する学部の利益のみを優先する傾向が強い。このため、教授会自治の名のもとで、本来あるべき学長や理事長による適正な大学全体の経営や運営を阻害する最大の要因となっている。

教養教育は学士課程教育の重要な一角を担う教育であるにも関わらず、専門教育を担当する教員の関心は薄く、その教育体制は学外講師(非常勤講師等)に依存する傾向が強い。教育上の責任体制も不明確なままである。また、教員人事は各学部教授会の専決事項となっており、大学全体で調整がおこなわれていない結果、同じ分野の教員を複数の学部で抱えるという、人的資源の無駄が発生するケースも多い。その結果、産業界からのニーズが高いにも関わらず、教養教育は専門教育と比して、相対的に軽視される傾向にある。

3 高い学部の壁

多くの大学では、「学部間の壁」が高く、学生が自由に他学部の科目を履修したり、単位が授与されたりする仕組みになっていない。このため、所属する学部の専門を超えて、様々な分野から課題を多角的に捉え、学生間で議論し、問題を発見解決する学び方のニーズが高まっている。また、学生が多様化していることから、学生自らの興味・関心に則した主体的な学びの場を保証する必要がある。

4 未発達の認証評価システムと情報開示の不十分さ

文部科学省による高等教育政策が、護送船団方式」から規制緩和による自己責任に転換されたことを受けて、第三者認証評価機関による定期的認証評価の義務化などが導入されたが、その内容は十分に定着したとは言い難い。その理由のひとつとして、各大学が明確な目的・目標を定め、その達成に向けて、予め検証可能な指標を定めていないことが挙げられる。また大学の教育を社会の変化に応じられるものとするためには、何よりも、社会の直接的な評価を加えることが重要であり、まずは大学からの積極的な情報開示が重要となるが、大学側の姿勢は必ずしも前向きではない。

5 研究中心の大学運営からの脱却

日本の大学は、歴史的に研究重視の東京大学をヒエラルキーの頂点として構成されてきたことから、研究を担う「教員中心」の大学運営がなされ、新設の大学もこれを真似てきた。しかし、大学進学率が50%を超えてユニバーサル段階に入った現在、大学は教育を中心とした「学生中心」の大学づくりに大きく舵を切っていくことが重要である。特に、「ゆとり教育」世代の大学入学にともない、学力と学習意欲の両方が低下した学生が数多く大学に入学してくる状況の中では、全ての大学が教育を重視した大学運営に転換することが求められている。しかし、教育実践の改善に組織的に取り組む姿勢が、教員個人にも大学側にも十分に育っていないため、問題認識は共有しつつも、改善に向けた取り組みは進をでいるとは言い難い。

さらに、上記のような問題の解決に必要な条件として、次のような”提言”を行っています。

提言1 教育中心の大学に! 「大学は教育機関としての使命を全うすべき」

産業界が大学卒業者に求めているのは、高度な専門学力だけでなく、「社会力」*1である。そのため大学は、教育機関としての使命を自覚し、その遂行に全力を尽くす必要がある。その際、学士課程教育に占める教養教育の重要性を認識し、その教育上の責任体制を明確にするべきである。また、研究か教育かの選択ではなく、研究も教育の一環であるという原点に立ち返り、優れた研究実践が優れた教育実践を生み出す仕組みをつくるべきである。

提言2 大学はミッションを明確に ! 「各大学・学部は、それぞれの個性にあった特色ある教育を行うべき」

グローバル化、高度技術化した現代社会では、時代の変化に柔軟に対応し、社会や企業を改善する人材が求められている。にもかかわらず大学のミッションには、依然変化に対応する柔軟性や特色が見えない。各大学・学部・大学院は、それぞれのミッションを明確化し、その実現に向けた教育プログラムを体系化して、特色ある人材を育成し、ニーズに応じて企業が人材を選択できる機会を提供すべきである。

提言3 まずは学部教授会の見直しから! 「リーダーシップと責任の所在を明確にした組織に改革すべき」

上記の実現に向けて、大学は自らの統治能力を高め、急ぎ組織改革に取り組むべきである。そのためには、学部自治の見直しが最優先課題になる。「権限は有するが大学経営や運営への責任は問われない」学部教授会の存在が、本来あるべき学長のリーダーシップの最大の阻害要因になっている。また、学部の壁を取り払い、学生が自由に学部間を往来し、他学部の科目の履修や単位取得ができるような、学生ファーストの視点に立った経営を行うべきである。

提言4 情報開示の徹底を! 「大学は改革の達成状況を広く社会に開示し、その評価を通じて改革を促進すべき」

すでに企業では情報開示を徹底し、行政でも情報開示を進めている。大学だけが特別な存在ではありえない。各大学は学部ごとにミッションの達成状況を数年に一度、社会に発表し、在校生や父母、OB・OGに加え、その学部出身者が就職している企業等の関係者による評価を受け、その結果を公表するシステムを導入する必要がある。


偏った考え方かもしれませんが、大学には、日本国憲法第23条「学問の自由は、これを保障する」によって保障された学問の自由の精神に由来する(教育研究に関する大学の自主性を尊重する)制度又は慣行である「大学の自治」があり、その本来の意味、あるべき姿が歪曲して解釈され、「学問の自由」がいつのまにか「教員の自由」となり、それを保障する法律(教育公務員特例法)を錦の御旗にして、「教授会」を核とした悪しき大学運営が長きにわたり続けられてきたような気がします。

これまでの歴史や伝統にピリオドを打つことはなかなか容易ではありませんが、教員自身の良識に我が国の将来はかかっているといっても過言ではないでしょう。「教授会の責任と権限」を国民の前にさらけ出し、透明性が確保された中での真摯な行動がいま求められています。


(参考)日本国憲法第23条に関する最高裁判所判例

大学における学問の自由を保障するために、伝統的に大学の自治が認められている。この自治は、とくに大学の教授その他の研究者の人事に関して認められ、大学の学長、教授その他の研究者が大学の自主的判断に基づいて選任される。また、大学の施設と学生の管理についてもある程度で認められ、これらについてある程度で大学に自主的な秩序維持機能が認められている。

このように、大学の学問の自由と自治は、大学が学術の中心として深く真理を探求し、専門の学芸を教授研究することを本質とすることに基づくから、直接には教授その他の研究者の研究、その結果の発表、研究結果の教授の自由とこれらを保障するための自治とを意味すると解される。」(昭和38.5.22最高裁判所判決(東京大学ポポロ事件判決)


*1:普遍的な教養や倫理観、他者と連携・協調できるコミュニケーション能力、またチャレンジ精神やリーダーシップ力、学習を継続する力など、社会において必要とされる資質や能力

2009年10月29日木曜日

国立大入試と新型インフル対策

既に報道されていることですが、国立大学協会は、去る26日に開催した総会において、新型インフルエンザに感染して平成22年度の国立大学2次試験を受けられない受験生のために、本試験の概ね1週間後に追試験を実施することや、大学入試センター試験を参考にした合否判定を行うことなどを内容とした特例措置を各大学が講じることを決めました。

また、大学入試センター試験の追試験実施期日の変更に伴う2次試験実施日程の変更、新型インフルエンザの流行による影響やリスク等に関する情報の収集・分析や各大学が参考となる指針の検討・作成を行うワーキンググループの設置も合わせて決めたようです。

国立大学協会から各大学に通知された内容をご紹介します。


平成22年度国立大学一般入試に係る特例措置について


1 基本的方向性

新型インフルエンザの流行が想定されることに鑑み、社会的な要請を踏まえ、公平性に留意しつつ、各大学の実情に応じて、志願者の受験機会の確保に向けた準備を行う。

新型インフルエンザの感染が社会的規模で受験生に影響を及ぼす事態が発生し、従来の季節性インフルエンザの流行と異なって通常の入試実施体制では受験機会の確保が困難と認められる場合には、原則として各国立大学は、平成22年度入学者選抜に関しての特例措置を迅速かつ的確に講じるものとする。

2 個別学力検査等について

(1)前期・後期日程試験(本試験)

原則として所定の期日により実施するものとする。

(2)追試験等

受験機会を確保する観点から、各大学は、平成22年度に限った特例措置として、追試験の実施や大学入試センター試験を参考とした合否判定などの諸方策を実施する可能性を想定し、必要な準備を遺漏なく行う。

追試験を実施する場合の実施方法・手続きなどに関しては、下記を参照し、各大学の実情に応じて適切に行うものとする。その際、予め予備問題を作成するなど適切な代替の選抜方法により対応するものとする。

ただし、二重合格が起こらないようにすることを前提として、当該大学の責任において、独自の方法により追試験その他の諸方策を実施することを妨げない。

なお、各大学における特例措置への対応については、所定の期日までに入試委員会に報告するものとする。

1)追試験対象者及び認定方法

平成22年度に係る特例措置のため、新型インフルエンザ罹患者及び罹患の疑いのある者を対象とすることを基本とする。ただし、各大学が特に認める者を追試験対象者に加えたり、合理的な方法により追試験受験者の絞り込みを行ったりすることを妨げない。

認定方法は、本試験の1週間前から本試験当日までの間に追試験受験申請書及び診断書を提出させるなど、平成22年度大学入試センター試験における認定方法を参考に各大学において定めるものとする。なお、申請時に診断書等の提出がなかった者の取扱いについて、予め定めておくことが望ましい。

2)追試験実施期日

本試験の概ね1週間後に実施するものとする。

3)合格発表

前期日程と後期日程それぞれの本試験と追試験あわせて合格者の決定・発表を行うものとする。なお、所定の合格発表日を変更する場合は次のとおりとする。

前期日程:後期日程試験に影響を及ぼさない3月10日(水)までに発表することが望ましい。
後期日程:3月24日(水)までに行う。

4)追試験実施日程等の通知

志願者へ受験票を送付する際、実施日程等について通知するものとする。

3 その他

(1)強毒性の新型インフルエンザ発生等により、大学入試センター試験や個別学力検査等を4月以降に実施せざるを得ないなど、入学者選抜実施日程が大きく変更される場合等については、文部科学省を含め関係機関において別途協議するものとする。

(2)新型インフルエンザの流行を想定し、入試の特例措置の実施に関する各大学の最終判断の参考となる指針・目安等について検討するワーキンググループを理事会の下に設置する。ワーキンググループ及び事務局は、関係機関との連携を図りつつ、関連情報の収集・分析を行うとともに、会員大学・受験生等への適切な情報提供に努める。


(関連)平成22年度大学入学者選抜に係る新型インフルエンザ対応方針(平成21年10月7日 文部科学省)

2009年10月24日土曜日

行刷会議が始動、国立大もねらわれた

内閣府に設置された「行政刷新会議」がいよいよ本格的な仕事に着手しました。当面の大きな課題は、各省庁から寄せられた来年度の概算要求の絞り込みです。

行政刷新会議は、「国民的な観点から、国の予算、制度、その他国の行政全般の在り方を刷新するとともに、国、地方公共団体及び民間の役割の在り方の見直しを行う」(平成21年9月18日閣議決定)ことを目的に、民主党政権発足に合わせ設置された機関です。

今後、我が国の行政全般にわたる無駄遣いを洗い出し、それを国民の前にさらけだし、税金を「生き金」として使うという本来あるべき姿を徹底して追求していっていただきたいと思います。

なお、この行政刷新会議において示された「事業見直しの視点」の中には、「国立大学法人向け支出についても聖域なく見直しを行う」と書かれてあり、会議の今後の動向は十分注視していかなければなりません。

国立大学は、純粋な行政機関ではなく、教育や研究といった特性に十分配慮した見直しが必要になります。しかし、国民の税金が運営資源として投入されている以上、少なくとも大学の運営の仕方や人件費・一般管理費などの行政的経費については、行政刷新会議を通じた国民のチェックが求められるのは当然のことです。

また、いわゆる「天下り」「渡り」に該当するかどうかは別として、文部科学省所管の独立行政法人や公益法人同様に、事実上文部科学省が人事権を発動し、ほとんどの大学に配置され高い報酬を得ている役員の在り方についても、この際十分に検証する必要があるのではないかと思います。


参考までに、去る10月22日(木曜日)に開催された、行政刷新会議(第1回)で配付された資料のうち、国立大学法人に関係する部分についてご紹介します。


事業見直しの視点(案)

4 独立行政法人・国立大学法人、公益法人向け支出の見直し

独立行政法人・国立大学法人、公益法人向け支出については、上記1(事業等の全部又は一部の廃止を含めた見直しを行うもの)、2(事業の単価設定や実施方法を見直すなど事業等の効率化を図るもの)、3(特別会計)の視点に加え、国家公務員再就職者数に関する情報開示を踏まえつつ、以下の視点に基づき聖域なく見直しを行う。

▼事務・事業と組織形態の見直し等

  • 独立行政法人等で国民にとって真に不可欠とは言えないもの 
  • 独立行政法人等で民間企業でも実施できる事務・事業にも関わらず業務を独占しているもの 
  • 不要不急な基金等を有しているもの 
  • 地方公共団体、民間企業、教育機関、他の独法等が類似の事業を行っているもの 

▼財政支出の見直し

  • 事務・事業の重点化が徹底されていないもの 
  • 自主財源の確保や既存財源の活用が十分でないもの 
  • 職員数のスリム化や運営費などの支出の節約等、運営の効率化が進んでいないもの 
  • 国の既存の組織で行える財政支出を独立行政法人、公益法人が行っているもの 
  • 小規模な独立行政法人等で規模の経済が発揮されていないもの 
  • 独立行政法人、公益法人からの財政支出のうち随意契約や関連公益法人との契約が多いもの 
  • 公益法人との随意契約とする合理的な理由がないもの 
  • 独立行政法人が実施している個別の事業についての評価が行われていないか公表されていないもの 

(関連報道)特別会計、公益法人などにメス・・・刷新会議方針(2009年10月23日 読売新聞)

政府の行政刷新会議(議長・鳩山首相)は22日に開いた初会合で、2010年度予算の概算要求を「事業仕分け」の手法で見直す基準となる「事業見直しの視点」を決めた。95兆円超に膨れ上がった予算のうち、独立行政法人や公益法人向けの支出のほか、「無駄遣いの温床」との批判が強い特別会計や、随意契約のあり方を重点的に見直す。また、公益性の乏しい事業の廃止など、4原則を定めた。国家公務員の天下り先になっているとの批判が多い独立行政法人と国立大学法人、公益法人に対する支出は「聖域なく見直しを行う」と明記した。具体的には、民間企業でもできる事業を独立行政法人などが独占している場合や、当面使う予定のない資産を保有している場合は、その法人に対する支出を再検討する。また、法人の経営状態も審査し、自主財源の確保や運営の効率化が遅れている場合にも、支出の削減を検討する。09年度当初予算で、特別会計の総額は169兆円。また、独立行政法人と公益法人向け予算は、一般会計と特別会計あわせて3兆9775億円。国立大学法人には運営費交付金1兆1670億円などが支出されている。・・・

2009年10月23日金曜日

就学支援と大学経営

ちょっと前になりますが、経済協力開発機構(OECD)が行った教育調査の結果である「図表でみる教育」(2009年版)が公表されました。国際比較が可能な指標が掲載されてあり、教育の成果、教育への支出と人的資源、在学状況、教育環境などに関する情報が指標化されています。

結果は、「相変わらず我が国の教育に対する公財政支出は最低レベル」ということであり、中でも、我が国の高等教育への公財政支出がOECD加盟国中最下位であることは、これまでもよく引用されているところです。

我が国では、「教育の成果は個人に帰着する」という論理から、これまで教育費は、基本的には個人が負担すべきもの、つまり家計支出により賄うべきものという考え方が定着してきました。

しかし、最近の経済状況がもたらした所得格差、引いては教育格差が拡大している状況を反映してか、マスコミをはじめ政府部内においても、教育に対する公財政支出増加に向けた声が次第に大きくなりつつあります。

そもそも教育に対する公財政出の増加は、教育を担当する文部科学省が以前から機会あるごとに主張してきたことでしたが、経済至上原理を死守しようとする財務省を論破することができずに今日に至っています。

折しもこのたびの衆議院総選挙を通じて、政治家の皆さん方は、異口同音に国民の耳障りのいい教育の充実、票にならならないと言われてきた教育への財政出動を叫び立てることとなり、政権交代を果たした民主党は、その政権公約の中で、

  • 先進国中、著しく低い我が国の教育への公財政支出(GDP比3.4%)を、先進国の平均的水準以上を目標(同5.0%以上)として引き上げる(教育予算の充実)
  • 高等学校は希望者全入とし、公立高校の授業料は無料化、私立高校などの通学者にも授業料を補助(年12万~24万円程度)する(教育の無償化)
  • 学生・生徒に対する奨学金制度を大幅に改め、希望する人なら誰でもいつでも利用できるようにし、学費のみならず最低限の生活費も貸与する。親の支援を受けなくても、いったん社会人となった人でも、意欲があれば学ぶことができる仕組みをつくる(奨学金制度改革)
などについて主張しています。

政権公約として掲げた教育関連政策を民主党政権がどのように実現していくのか、そのために必要な財源をどのような手法で調達するのか、教育関係者をはじめ多くの国民の期待は大きいのではないかと思います。

さて、家計に占める教育費の負担を軽減することは、なにも政府だけの問題でも責任でもありません。この国の未来を託す若者を責任を持って育成し、しっかりとした人間として社会に送り出す使命を有するあらゆる教育機関においても、その公共的立場から、教育費の負担軽減、特に就学・進学困難な子どもや学生を救う手だてを考え実行する義務があります。

高等教育機関である大学には、そのための制度として、ほとんどの大学に授業料や入学料の「免除制度」が、また、文部科学省の外郭団体である日本学生支援機構(旧日本育英会)には「奨学金制度」が用意されています。これらの制度は、これまで高い能力を持つ多くの学生が、経済的理由による就学・進学を断念するという悲惨な状況を回避し、社会で遺憾なくその能力を発揮できるチャンスを提供するという重要な役割を果たしてきました。

また、最近では、資金的に裕福な大学の中には、余裕資金を活用した「大学独自の奨学金制度」を導入したり、銀行の教育ローンを借りる学生に対して、在学中の利子相当分を大学が負担するといった「利子補給型の奨学制度」を整備する大学も増えつつあります。

しかし、奨学金制度は、多くの場合貸与型であり、給付型の奨学金と違い返済義務を伴うため、敬遠される傾向があります。また、利子補給制度は、貸与する学生を銀行ないしは保証会社が決定する仕組みになっているため、学生の保護者に返済能力があることが求められ、真に家計が苦しい場合(返済が危ぶまれるような困窮者の場合)には、お金を貸してもらえないというデメリットがあります。

一方、「免除制度」は、一定の基準に基づくものの、基本的には大学の判断によって運用できるため、能力はあっても経済的に就学を断念せざるを得ない学生を救うには極めて効果的な制度です。

しかしながら、免除制度の拡充については、これまで国立大学は、一部の大学を除き総じて消極的な姿勢で臨んできたような気がします。法人化後、免除率の拡大は各法人の裁量とされてはいるものの、文部科学省から配分される運営交付金の算定ルールでは、国の時代の免除率が採用されており、その率を超えた免除率の拡大による収入減というリスクを乗り越えるだけの勇気と戦略がなかったからなのかもしれません。

最近の雇用状況の悪化など危機的な経済状況の重大さをようやく感じた文部科学省は、このたびの平成22年度概算要求において、運営費交付金算定上の免除率の拡大を盛り込みました。歓迎すべきことであり、是非とも実現してほしいと思います。


学生への支援にかかわっての大きな問題は、各大学の経営者の意識です。特に学生支援担当の理事、そして学長。奇をてらったようなことしか考えない、限られた期間の支援、しかもわずかな支援規模(額)しか生み出せないような器量、学生に目線を置いた社会に恥ずかしくない政策を打ち出せないような経営者ではどうしようもありません。

入学料にせよ、授業料にせよ、免除は、大学にとっては確かに収入減。しかしそれによって学生の就学を誘引し、学生確保を促進することが可能になります。支援を受けた学生は、卒業後、大学の強力な応援団になる可能性も広がるのです。

残念ながら、一部の大学の中では、毎年度、決して経営努力の結果ではなく、たまたま生じた多額の剰余金を翌年度に繰り越し積み立てた資金は、相変わらず無駄な「ハコもの」「コンクリート」に消え、それが次期学長選挙への実績と化し、学生のニーズに適切に対応した政策に重点化した使い方をしようなどという発想はなかなか出てきません。進言しても耳を貸さない経営者も多いと聞きます。学生ではなく、世間体に目線を置いた中途半端な方法しか生み出せない経営者、これこそ実は、大学にとっては大きなリスクなのではないでしょうか。

こういった経営者は、普段から小さなお金をどう使うかということだけをやってきているために、小さなお金を大きくして生きたお金として使うということを知らないし考えようともしません。また、当面使う目的のない多額の寄付金がありながら、底溜まりした預金は、家計の貯蓄と同様の発想で定期預金にするか、安全安心な国債をたんまり買い込んで、わずかな利ざやを楽しみにしているという始末です。

免除による収入減を避けたいのならば、余剰金や寄付金の底溜まりをなぜ有効に活用しようとしないのか、学生のための基金を作り、独自の奨学金制度をなぜ作ろうとしないのか、理解に苦しみます。

世は全入時代。学生あっての大学であるはずです。顧客は学生です。顧客満足度を第一に考え経営していかなければならないのに、自分達の懐具合だけを気にしているようでは、法人化の趣旨はいつまでも実現できないでしょう。

2009年10月21日水曜日

政権交代と大学

民主党政権が誕生したことに伴い、これまで自公政権によって作られ維持されてきたいくつかの教育制度が大きく変わろうとしています。

高等教育に関しては、今年4月に始まったばかりの教員免許更新制の廃止や、教員免許を与えている養成課程を4年制から大学院を含めた6年制に改めるなどです。学校現場や大学の戸惑いは隠せませんが、いずれにせよ、複眼的思考で慎重に検討していただきたいと思います。

さて、このたびの政権交代と大学との関わりについては、既に様々な立場の有識者が発言をされているところですが、今回は、山本眞一さん(広島大学高等教育研究開発センター長)が書かれた論考を抜粋してご紹介します。

政権交代と大学-総選挙の結果を受けて

優先課題にしたい高等教育

民主党のマニフェストを見れば分かるように、社会・経済の各般にわたり、これまでの政策を改め新しい方向を目指そうという動きは明らかである。「官僚丸投げの政治から、政権党が責任を持つ政治家主導の政治へ」、「各省の縦割りの省益から、官邸主導の国益へ」などこれまでの官僚主導の政策立案を見直す姿勢が明らかであり、これと既存の政策そのものの再評価が相まって、これまで「族議員」を楯として、ある意味では思いのままに政策を取り仕切ってきた各省庁の官僚諸君は、大いに慌てていることであろう。

もっとも大学にとって望ましい変化の方向、例えば国立大学の運営費交付金の水準回復や奨学金制度の充実などは、財源の問題さえ解決できるならば大歓迎である。ただし、言うは易しく行うは難しであって、結局はどの分野のどの政策に高い優先度がつけられるかということではないだろうか。私は、年金・医療、公共事業、高速道路料金、農業・産業政策、外交など、人々の大きな関心を引く諸問題の陰に隠れて、高等教育問題の優先度がどの程度考慮されるものか、若干の危惧を抱いている。いずれにせよ、大学は目下、国際水準からみて少ない公費負担の中で、不十分なインフラにもかかわらず過度の競争を強いられてきていることは間違いなく、高度な学術研究や多様な人材養成など社会の期待に応えることができるための基盤作りに、新政権が関心を持ってくれることを祈っている。

政治・政策は与件ではなく

今回の選挙結果を通じて大学が学ぶべきことは非常に大きいと思う。それは大学関係者を含む教育界の人間がこれまで前提としてきた政治の枠組みの根底さえも、人々の投票行動いかんによって変えられるということが現実になったということである。つまりわれわれ大学関係者にとって、政治や政策は与件ではなく、われわれもその決定過程に積極的に参画することによって変えていくことができるかもしれないということである。これは投票権を持つ個人のレベルの問題だけではない。大学や大学団体も、大学をより良いものにするには、与えられた土俵の枠内での競争に明け暮れるだけではなく、より根本的な解を求めて積極的に動くことも重要だということを理解すべきであり、このことはそれぞれの大学の経営戦略や高等教育政策のあり方にも一石を投ずるものであろう。今後はさまざまな新たなチャンネルを通して、われわれは大学の存在意義や社会的役割を政策決定者に伝え、また自らの改革努力を世論に訴えていかなければならない。

21世紀型市民を養成する

大学にとってより重要なことは、人材養成機能を通じて、政・官・学・民など社会の各般に、等しく優秀な人材を送り込むことだと私は思う。それぞれのセクターが対等な立場で切磋琢磨することが、わが国の社会を活性化させ、政治・政策をより健全なものにする。それには、それぞれのセクターが志の高い優秀な人材を確保しなければならない。人材養成に関して、昨年12月に出た中教審学士課程答申は重要な指摘を行っている。それは「国境を越えた多様で複雑な課題に直面する現代社会にあって、大学として、自立した21世紀型市民を幅広く育成することは、個人の幸福と社会全体の発展それぞれの観点で極めて重要であり、公共的使命と言える。」(第1章第1節)としていることである。この「自立した人材」こそ、これからの大学でしっかりと養成すべきものであり、いくら大学教育が大衆化したといっても、そこで養成される人材が「物言わぬ大衆」でよいはずはない。(出典:文部科学教育通信 No228 2009.9.28)

2009年10月20日火曜日

概算要求の見直し

政権交代によってやり直しとなった平成22年度予算の概算要求が15日に各省庁から財務省に提出されました。これから年末の政府予算案とりまとめに向けて本格的な予算編成作業が始まります。

政権与党である民主党がマニフェストに書き込んだ公約がいかにして実現するか注目されるところですが、政策実現のための財源確保は、景気の悪化を受けた税収の大幅落ち込み等の影響もあって、思いのほか大変なようです。

再提出された概算要求のフレームについては、財務省のホームページ(2009年10月16日「マニフェスト(「三党連立政権合意書」を含む)を踏まえた平成22年度一般会計概算要求額」)に掲載されてあります。(内容は全く見えませんが・・・)

このうち、大学関係者にとって気になる高等教育関係予算については、国立大学協会のホームページ(会員専用ページ)に掲載されてありましたので、主な内容を抜粋(一部編集)しご紹介したいと思います。


平成22年度文部科学省概算要求の概要


1 概算要求額
  • 一般会計 57,562億円+α(対前年度4,745億円+α増)

2 要求に関する基本方針
  • 平成22年度概算要求においては、特にマニフェストや総理指示に基づく施策に重点的に取り組み、知識社会において最も重要な社会全体の資産である知的財産(ソフト)と人材(ヒューマン)への効果的な投資iこ厳選。
  • 一方で、既存事業を「見直しの観点」に基づきゼロベースで見直し、事業数の削減など徹底的な見直しを実施。

3 文教関係

文部科学大臣就任時の総理指示を踏まえ、
  1. 高校を実質無償化し、大学は奨学金を大幅に拡充するなど、教育にかかる国民の負担を軽減し、すべての意志ある人が教育を受けられる仕組みの構築 
  2. 将来の日本を支える人材を育てるため、教員の資質や数を充実することなどによる質の高い教育を実現する施策を展開。

▼マニフェスト工程表関係事項

(1)高校の実質無償化 4,624億円(新規)

1)高等学校等就学支援金 4,501億円(新規)

国公立高校生のいる世帯に対し、授業料相当額を助成して実質的に授業料を無料にするとともに、私立高校生等のいる世帯に対しても同等額を助成。年額118,800円以内(低所得世帯に対しては237,600円以内)

2)高校奨学金事業等の充実・改善 123億円(新規)

高等学校等就学支援金の支給とともに、高校の実質無償化を図るため、各都道府県に対し、従来の奨学金に加えて入学時に必要な経費などを対象とする就学支援策(給付型奨学金等)を付加的に行うために必要な資金を交付。
  • 対象者:収入350万円以下の世帯の生徒等 約45万人
  • 対象費目:入学科、教科書費
(2)医師不足解消のための医師等養成と大学病院の機能強化 ※事項要求

医師不足解消に向けた医学部定員増に伴う教育環境の整備などの取扱いについては、今後の予算編成過程で検討する。

(3)大学奨学金等の充実 ※事項要求

無利子奨学金貸与人員の増などの取扱いについては、今後の予算編成過程で検討する。


▼主要事項(高等教育の基盤整備と質の向上)

(1)国立大学法人運営費交付金 11,708億円(13億円増)

医学部定員増に伴う教育環境の整備充実や、授業料免除枠の拡大(全学免除換算5.8%→6.3%)、救急医療・周産期医療等地域医療のセーフティネットである診療部門への重点支援等を図りつつ、国立大学法人の基盤的経費を確保。

(2)国立大学法人等施設整備費 451億円(10億円増)(他に、財政融資資金 390億円(13億円増))


耐震化等の老朽再生等の対策が必要な事業のうち、真に緊急性の高い事業に厳選。

(3)私立大学等経常費補助 3,222億円(4億円増)

授業料水準の抑制、経営の健全性の向上、教育条件の維持向上のため、私立大学等の運営に必要な基盤的経費を確実に措置するとともに、医師不足の解消等や経営基盤の強化に取り組む大学等を重点的に支援。

(4)私立高等学校等経常費助成費等補助 1,043億円(4億円増)

各都道府県が、地域の実情に応じて低所得者世帯の私立高校生への授業料減免補助を引き続き実施できるよう、国庫補助を充実。

(5)私立学校施設・設備の整備 192億円(▲8億円)

地震により倒壊の危険性がある私立学校施設のうち耐震性の低い施絞(Is値0.3未満)を優先した耐震化等を推進するとともに、教育研究機能の高度化のための施設・設備の充実や低炭素社会の実現に向けた私立学校施設の整備の推進を図る。

(6)アジア等における高度産業人材育成拠点支援事業 10億円(新規)

第2回日中韓サミット(平成21年10月10日)において、三国の大学間交流の促進が合意されたことを踏まえ、アジア地域等からの外国人学生を受け入れ、産業界と連携して、アジア等で急速な成長が期待される、先端技術分野等で実践的な教育を提供する取組を重点的に支援。(10拠点)


▼その他新規事項等

(1)初等中等教育関係

1)コミュニケーシヨン教育の拠点充実 1億円(新規)

学校教育におけるコミュニケーション教育の充実を図るために拠点校・拠点地域を指定し、実践的研究を実施し、その成果の普及を図る。
  • 民間団体等と連携・協力した演劇などによるモデル授業の展開
  • 国際社会で地球的視野に立って主体的に行動できる人材の育成
2)新型インフルエンザ対策の実施 1億円(新規)

学校や教育委員会における新型インフルエンザ対策の具体的な方策について指導参考資料を作成・配付(60万部作成 幼稚園~大学に対し各10部配付)するとともに、在外教育施設に対する健康管理マニュアル等の整備を行う。

3)高等学校に通学する離島出身の生徒に対する寄宿舎等居住費 6億円(新規)

中学校を卒業して高校に進学する者で、やむを得ず、自宅を離れて通学しなければならない者に対する居住費を市町村が負担をしている場合に、一定割合を国が補助。

(2)科学技術関係

1)先端的低炭素化技術開発 35億円(新規)

鳩山イニシアチブ(1990年比で2020年までに温室効果ガス25%の削減)の達成、その後のさらなる温室効果ガスの削減に向けて、低炭素技会の実現に必要な革新的技術の研究開発を行う。

2)低炭素社会実現のための社会シナリオ研究 3億円(新規)

産業構造、社会構造、生活様式等の相互連関や相乗効果の検討等を行い、低炭素社会実現に向けた研究開発の方向性等を提示する。

3)科学研究費補助金 2,000億円(30億円増)

人文・社会科学から自然科学までの全ての分野にわたり、あらゆる学術研究(研究者の自由な発想に基づく研究)を支援する。

4)戦略的基礎科学研究強化プログラム(仮称) 20億円(新規)

潜在能力の高い研究者を国内外のノーベル賞級研究者等が厳選し、長期(最長10年)にわたり、基礎研究を支援する。

5)ポストドクター等の参画による研究支援体制の強化 10億円(新規)

特色ある優れた研究活動を行う大学等において、ポストドクター等の高度専門人材の参画による研究マネジメント・技術支援体制の強化を図る取組を支援する。

6)産学官連携による地域イノベーションクラスター創成事業(仮称) 15億円(新規)

地域をフィールドに研究開発から技術実証、社会還元まで一貫した研究開発・社会実装システムを構築し、地域における新たなイノベーションの創出及び地域実装を図る。

  ◇

なお、文部科学省所管全体の削減・見直し額は、▲640億円であり、その内訳は次のようになっています。
  1. 事業仕分けによる指摘事項 ▲53億円 
  2. 独立行政法人・公益法人向け支出 ▲83億円 
  3. 類似事業の整理・統合 ▲116億円 
  4. 決算結果の反映などその他の見直し ▲388億円 
  5. 施設整備:新たなハコモノ整備事業の着手については凍結
事業数の見直し・削減 747件→688件(▲59件)


なお、残念なニュースですが、今回の概算要求の見直しに伴い、平成22年度科学研究費補助金の新規募集課題が以下のとおり公募停止になったようです。


平成22年度科学研究費補助金の新規募集課題の公募停止について(2009年10月16日 文部科学省)

平成22年度科学研究費補助金については、一部研究種目を除き本年9月から公募を開始しておりますが、平成22年度「概算要求の見直し」に伴い、下記研究種目については平成22年度の新規募集課題の公募を停止することとなりました。つきましては、本件を貴研究機関に所属される研究者に周知いただくとともに、今後、応募研究課題(研究種目)の変更を希望される方の手続き等に際し、貴研究機関内における締切り等についてご配慮くださいますようよろしくお願い申し上げます。なお、下記研究種目の「研究計画調書」の提出(送信)が既に完了している方については、当該応募情報を取り消すことを予定していますが、その方法等については、準備が整い次第あらためて通知させていただきます。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/hojyo/1285813.htm

(関連記事)国の予算の都合で科研費公募停止(大学に関する話題日記)
http://d.hatena.ne.jp/daigaku_jiken/20091017#p4


(関連報道)

2009年10月19日月曜日

補正予算の執行停止

最近のニュースの目玉といえば、なんと言っても財政、「今年度補正予算の見直し」と「来年度概算要求の取りまとめ」ではないでしょうか。

補正予算の見直しについては、削減目標としていた「3兆円」という数値が、また、概算要求については、前政権が組んだ今年度当初予算の規模を上回る「95兆円」という数値が、いずれも一人歩きする形でにぎやかに報道されていました。

まずは、関連報道です。

執行停止3兆円届かず 補正見直し2兆9259億円で閣議決定(2009年10月16日 産経新聞)

政府は16日、平成21年度補正予算の執行停止事業を閣議決定した。基金の返納なども含めた削減総額は2兆9259億円。6日時点の第1次集計から約4千億円上積みされたが、目標の3兆円にわずかに届かなかった。政府は今後、90兆円超に達する平成22年度一般会計当初予算案の編成作業を本格化させる。・・・
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091016/plc0910161215008-n1.htm

概算要求、95兆円超える 過去最大規模(2009年10月16日 朝日新聞)

鳩山政権が初めて編成する10年度予算の概算要求が出そろい、要求総額は過去最大規模の95兆円前後に上った模様だ。ただ、要求額を明示しない「事項要求」も多く、実質的な要求額はさらに大きい。藤井裕久財務相は16日の閣議後の記者会見で「断固査定する」と述べ、年末に向けて厳しく削り込む方針。全省庁の概算要求の詳細は16日午後に公表する。・・・
http://www.asahi.com/politics/update/1016/TKY200910160256.html?ref=rss


概算要求については、別の機会にご紹介することとして、今回の補正予算の見直しについては、既に財務省のホームページに、省庁別の具体的な見直し内容が公表されています。補正予算にかかる事業のうち執行を見直す文部科学省関係事業(3,387.3億円)の内訳は次のようなものです。

  • 学校耐震化の早期推進、太陽光パネルをはじめとしたエコ改修の拡大(公立) (127.4億円)
  • 学校耐震化の早期推進、太陽光パネルをはじめとしたエコ改修の拡大(私立) (112.3億円)
  • 地上デジタルテレビ対応、学校のICT環境整備(公立)(846.4億円)
  • 地上デジタルテレビ対応、学校のICT環境整備(私立)(13.5億円)
  • 理科教育設備の整備充実(理科教育設備整備費等補助)(60.5億円)
  • 小学校外国語活動導入に係る教員研修支援(9.5億円)
  • 自然体験活動の推進(3.2億円)
  • 先端的・基盤的教育研究施設・設備の整備(国立)(10.0億円)
  • 留学生宿舎の整備(32.4億円)
  • 高校生の留学促進事業(8.1億円)
  • 高度研究人材活用促進事業(2.9億円)
  • 企業研究者の活用による産学融合の実現(5.8億円)
  • 最先端の環境科学技術に関する情報発信機能の強化(16.5億円)
  • 環境技術研究開発センター(仮称)の整備等(5.8億円)
  • 海洋資源探査技術の開発体制の整備(43.4億円)
  • 地域産学官共同研究拠点整備事業(432.0億円)
  • 素粒子・原子核物理学の振興(17.6億円)
  • 最先端超小型衛星群の開発を通じた宇宙利用の裾野拡大(6.0億円)
  • 準天頂衛星等の開発・利用(4.6億円)
  • 理化学研究所の研究環境の整備・高度化(1.7億円)
  • メディア芸術の振興(国立メディア芸術総合センターの設立) (116.9億円)
  • メディア芸術の振興(映画フィルム等のナショナルアーカイブ化) (10.0億円)
  • 伝統的な文化による地域活性化と文化力の向上(1.1億円)
  • 文化振興のための基盤整備(21.5億円)
  • ナショナルスポーツ施設の整備(3.0億円)
  • 中学校等武道場及び地域スポーツ施設の整備(3.7億円)
  • 青少年教育施設の整備(26.1億円)
  • 地域の学習拠点の整備(国立科学博物館施設整備等)(7.1億円)
  • 地域の学習拠点の整備(女性教育会館施設整備)(2.6億円)
  • 奨学金事業の充実(5.7億円)
  • 私立大学附属病院の施設整備への支援(1.0億円)
  • iPS細胞等を用いた再生医療の実現(2.5億円)
  • 脳研究加速のための実験設備整備(2.0億円)
  • 橋渡し研究拠点の支援機能強化(0.1億円)
  • 「安心こども基金」を通じた子育て支援等(0.1億円)
  • 若手研究者海外派遣事業(研究者海外派遣基金) (224.4億円)
  • 最先端研究開発支援プログラム(先端研究助成基金)(1,200.0億円)

2009年10月17日土曜日

情報公開の促進に向けた体制整備を

近年、大学をめぐる社会的情勢が急激に変化する中、地域との連携による科学技術・生涯学習・大学開放の推進、大学教育の充実や個性化など、社会からの大学に対する期待は極めて大きくなっています。

このような中、大学情報の社会への公表については、これまで、平成10年の大学審議会答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について」において、「大学の教育研究活動に関する情報を社会に対して提供することは、公共的な機関として大学の社会的責務であり、近時、大学の教育研究活動について正確な情報を知りたいとの社会的な関心は急速に高まってきていることから、各大学は、国民の適切な理解を得るために、教育研究活動の状況やその成果、教育研究活動の改革充実に向けた取組の状況を広く社会に対して積極的に公表していくことが必要である」との指摘がなされました。

以降、平成11年には、国立大学の教育研究活動の状況を社会に対して説明する責務を制度上明確化する観点から、国立学校設置法、国立学校設置法施行規則、大学設置基準等の改正が行われ、国立大学の教育及び研究並びに組織及び運営の状況を公表しなければならないとの規定が設けられるとともに、公表すべき内容や公表方法も規定されました。

さらに、最近では、平成17年の「大学における情報の積極的な提供について」(文部科学省高等教育局長通知)、同年の中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」 、平成20年の中央教育審議会答申「学士課程教育の構築に向けて」においても、情報公開の促進に向けた指摘がなされています。

このような状況を踏まえ、各大学は、これまで、大学概要、学生案内等の刊行物、ホームページ等の各種媒体を通じた学内外向けの多様な情報提供の充実を図ってきたところですが、公表する情報の内容、公表方法、受信者のニーズ、双方向性等についての検討や取り組みが未だ不十分として、現在、中央教育審議会大学分科会大学規模・大学経営部会において、大学の自主的な経営改善と財務・経営についての情報公開の促進に関する審議が行われています。

この審議会における配付資料「大学の自主的な経営改善の取組への支援と情報公開の促進についての論点整理(案)」では、大学の設置者が財務・経営情報を公開する際には、財務諸表のみならず、学校経営にあたっての基本理念・目標や入学定員、入学者数などの基本的な情報を明示すべきことなどが検討課題(例)として挙げられています。

また、情報公開については、質保証システム部会でも審議されており、同部会において配付された資料には、「大学が公開すべき情報の項目」として次のような内容が記載されています。

大学が公開すべき情報の項目について

1 法令上の情報公開関係規定
  1. 自己点検・評価の結果を公表すること(学校教育法第109条第1項)
  2. 認証評価の結果を公表、文部科学大臣に報告(学校教育法第110条第4項))(※公表義務は認証評価機関に課せられている)
  3. 教育研究活動の状況について、刊行物への掲載その他広く周知を図ることができる方法によって、積極的に情報を提供(学校教育法第113条)
  4. 人材の養成に関する目的その他の教育研究上の目的を学則上定め公表(大学設置基準第2条)
  5. 授業の方法及び内容ならびに一年間の授業の計画を、学生に対してあらかじめ明示(大学設置基準第2条の2)
  6. 入学定員及び編入学定員を明示(大学設置基準第18条)
  7. 学修の成果に係る評価及び卒業の認定に当たっては、学生に対してその基準をあらかじめ明示(大学設置基準第25条の2)

2 現在、答申等で公開することを提案されている情報(カッコ内は記載元)
  1. 大学の設置の趣旨や特色(高等局長通知*1
  2. 開設科目のシラバス等の教育内容・方法(高等局長通知、学士課程答申*2
  3. 教員組織(高等局長通知、学士課程答申)
  4. 施設・設備等に関する情報(高等局長通知、学士課程答申)
  5. 大学に係る各種の評価結果に関する情報(認証評価や自己点検評価の結果等)(高等局長通知、将来像答申*3、学士課程答申)
  6. 学生の卒業後の進路(高等局長通知、学士課程答申)
  7. 受験者数(高等局長通知、学士課程答申)
  8. 合格者数(高等局長通知、学士課程答申)
  9. 入学者数(高等局長通知、学士課程答申)
  10. 財務・経営状況(大学規模・大学経営部会で検討)(将来像答申)
  11. 設置審査関係情報(認可・届出に関する情報、設置計画履行状況等調査報告書)(将来像答申、学士課程答申)
  12. 学則(将来像答申)
  13. 入学者受け入れの方針
  14. 学位授与の方針
  15. 教育課程の編成・実施に関する方針
  16. 教育研究業績
  17. 学生の在籍状況
今後、中教審における審議の結果を踏まえ、文部科学省から公開が必要と考えられる項目や方法を定めた指針が近々に示されることが十分予想されます。各大学におかれては、審議の経緯を注視しつつ、積極的な情報公開体制の再構築に取りかかることが賢明かと思われます。

国立大学の場合、法人化を機に、役員会・経営協議会・教育研究評議会等の会議録をホームページ等を通じて公開する大学が増えてきています。これまで社会に閉ざされてきた大学内部の意思決定システムをさらけ出し、適切な経営、教育研究活動を行っているかどうかを社会の皆さんに評価・検証していただくことは、運営資源を負担している納税者や学生・保護者の立場から見れば、至極当然のことです。この際勇気を持って、教員組織における意思決定プロセス(教授会や各種委員会の会議録)、運営費交付金(税金)の配分のしくみ、配分先・配分額の内訳、具体的な使途とその成果なども「見える化」すべきではないでしょうか。

(関連記事)大学の情報公開指針作りへ 文科省、項目や方法を検討(2009年8月14日 共同通信)

文部科学省は14日、受験者数や入学者数、学生の卒業後の進路などの情報を大学に積極的に公開してもらうため、公開が必要と考えられる項目や方法を定めた指針を作ることを決めた。秋以降、中教審の部会で議論する。
指針を示すことで受験生の進路選択の参考になるほか、大学側も積極的に改革に取り組み教育内容を向上させる結果になることを狙う。
全国に765ある大学すべてがホームページで情報を公開しているが、多くは学部や教育内容の紹介といった基本的な情報にとどまっているのが実情。文科省は学生や教員の数、財務状況、外部評価の結果などを指針に盛り込むことを想定している。
文科省は「社会への説明責任を果たすために積極的な情報公開が必要」として、公開が不十分な場合、ペナルティーの必要性も考慮。情報公開に向けて学部や学科、研究室の情報をまとめる専門部署設置の支援も検討している。
http://www.47news.jp/CN/200908/CN2009081401000030.html


*1:高等局長通知:「大学による情報の機極的な提供について」(通知)(平成17年3月14日)
*2:学士課程答申:中央教育審議会答申「学士課程教育の構築に向けて」(平成20年12月24日)
*3:将来像答申:中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」(平成17年1月28日)

2009年10月16日金曜日

”政治主導”の功罪

「脱官僚依存」「政治主導」の旗印の下、民主党政権が徹底して以前の自民党政権における政治・行政のしくみを変えようとしています。

今週、特に気になったのが、文部科学省関係では、大学・学部等の設置認可や補助金の交付に関する権限など、これまで実質的に事務次官に与えてきた権限を政治家に移すことにしたこと、また、もうすぐ始まる国会審議の関係では、国会法を改正して役人答弁を許さないとするルールをつくろうとしていることです。

いずれも、ある意味正論であり、異論を申し上げるつもりはありませんし、「あるべき姿」を求めていく民主党の姿は逆に美しくも見えてきます。ただ、心配なのは、各官庁の現場でがんばって働いておられる大臣・副大臣・政務官の皆さんの多忙さによる弊害、つまり、何でもかんでも自分たちでやらなければならない、やらなければ気がすまないという状況が、余裕のない独善的な行政や、各省トップとしての大所高所からの判断が困難になってしまう可能性を生み出すことにならないだろうかということです。

官民問わず、どのようなセクターでも、適切なガバナンスが機能するためには、内部統制がしっかりしていなければなりませんし、責任と権限の明確化に由来する上位者から下位者への権限委譲が必要になります。

中央官庁には、優秀かつ大志を持つ役人が全国から集まっています。このような役人たちを骨抜きにして放置するのではなく、役人ゆえの能力を客観的に認め、実務における一定の権限は委譲することにより役人を有効に活用していく方が何倍も賢明であり、より国民の利益につながっていくのではないでしょうか。


(関連報道)

時論公論 「新政権”脱官僚”予算への模索」(2009年10月7日 NHK解説委員室)

鳩山内閣が掲げた「脱官僚依存」の最初の試金石になる今年度の補正予算の見直し作業が大詰めを迎えています。新政権の下で、「政治主導」はどこまで進んだのか。・・・
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/27834.html


文科省:学部設置認可、副文科相らに決定権 政治主導目指し(2009年10月9日 毎日新聞)

文部科学省は、私立大学の学部・学科の設置認可など、文科相名義で行っていても、これまで事務次官ら官僚に事実上の決定権があった事項について、副文科相や政務官の決定事項とするなどの規則改正を行った。一部文書の名義や決裁者も、官僚から政治家に改める。文科省は「『政』と『官』の関係を見直し、政治主導を確立するため」としている。改正は今月1日付。ほかに、補助金配分の基本方針や独立行政法人・国立大学法人の監事の任命などについても、決定権を事務次官から副文科相に移す。重要なものを除く省令案は、決裁者を事務次官から副文科相に変える。官僚の権限で決められるのは、職員の出張など一部に限られるという。鈴木寛副文科相は8日、記者会見で「(文書などを)政治家がきちんと見ていくのが本来の姿だ」と述べた。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091009ddm012010098000c.html


国会法改正「おかしい」=官僚の答弁禁止、運用面で工夫を-福島氏(2009年10月14日 時事通信)

福島瑞穂少子化・消費者担当相は14日昼、東京・内幸町の日本記者クラブで講演し、官僚の国会答弁を禁止する国会法改正案について「運用面で工夫すればいい。法律まで作って禁止するのはおかしい」と述べ、改めて反対の姿勢を示した。・・・
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2009101400554&m=rss


国会質問取り、当面は官僚任せ 言行不一致?内閣方針(2009年10月15日 共同通信)

平野博文官房長官は15日午後の記者会見で、国会答弁準備のため事前に与野党議員から質問内容を聞き出す「質問取り」について、これまでの政権と同様に各府省の国会担当の官僚に任せる考えを表明した。「脱・官僚依存」を掲げる民主党が官僚に頼る構図で、想定問答作りまで任せることになれば、「言行不一致」との批判が出そうだ。・・・
http://www.47news.jp/CN/200910/CN2009101501000730.html


「官僚との信頼関係を」=鳩山政権に注文-石原元副長官が講演(2009年10月19日 時事通信)〈後日追加〉

元内閣官房副長官の石原信雄地方自治研究機構会長は19日、都内で開かれた内外情勢調査会の講演で、「脱官僚依存」を掲げる鳩山政権について、「政治家と官僚の信頼関係がないと、良い政治はできない。官僚組織をフル動員して政策を考える前向きな姿勢が必要だ」と注文を付けた。・・・
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2009101900599&m=rss

2009年10月15日木曜日

難病認定への署名活動

腹膜内に粘液性の水が大量にたまる病気「腹膜偽粘液腫」(ふくまくぎねんえきしゅ)という、発病率が100万人に1人位と言われる原因不明の病気があるそうです。

この病気は治療法が確立されておらず、完治が困難ともいわれており、お腹の中にゼラチン状の粘液がいっぱいに溜まり、身体へ行くべき栄養分が奪われ、手術をしてもすぐさま再手術、再々手術を繰り返す現状で、患者と家族は病気のつらさはもちろん、先の見えない心痛と経済面での負担、仕事を失いかねない不安にさらされています。

この病気によって、22歳のこれからという新任教師や30代の働き盛りで幼子の成長を見たいと願った父親が、いずれも発病1年前後で他界されるなど、治療法の研究がもっと早く進んでいればと悔やみきれない症例もあるようです。

この病気は、”難病”に認定されることで、少ない患者さんの治療データがくまなく調査され、治療法と医療技術・医療設備の向上、医療費の自己負担の軽減など、安心して治療を受けられる環境が期待できます。

3年前、遺族や患者により「腹膜偽粘液腫患者支援の会」が立ち上げられ、現在、厚生労働省の「特定疾患対策懇談会」での審議を求めた署名活動が展開されています。*1

この日記をご覧の皆様ご自身、あるいはご家族、友人・知人など多くの方々に支援の輪が広がることを願っています。

腹膜偽粘液腫患者支援の会及び署名活動のページはこちらです。署名活動へのご協力をお願いします。

腹膜偽粘液腫患者支援の会ホームページ
署名活動のページ


(関連報道)

難病認定へ署名31万余 腹に水たまる「腹膜偽粘液腫」(2009年3月12日 朝日新聞)

腹膜内に粘液性の水が大量にたまる病気「腹膜偽粘液腫(ぎねんえきしゅ)」を、国が難病と認定するよう求める署名活動が続いている。発症率は100万人に1人といわれ、原因は不明で治療法は確立していない。専門的に治療にあたる医師は国内に1人しかいない。3年前、遺族や患者らが支援の会を立ち上げ、現在、30万人を超える署名が集まった。・・・
http://mytown.asahi.com/tokyo/news.php?k_id=13000130903120001

原因不明の腹膜偽粘液腫 難病認定へ広がる支援 闘病の浦野さん署名呼び掛け(2009年10月7日 西日本新聞)

原因不明で治療法が確立されていない病気「腹膜偽粘液腫(ふくまくぎねんえきしゅ)」の難病(難治性疾患)認定を求める運動が、福岡県内で急速な広がりを見せている。呼び掛けの中心は、自ら病と闘う同県新宮町の浦野里美さん(45)。手術を重ね、入院生活を続けながら「国は治療研究の態勢づくりを急いで」と訴える姿が、多くの人を動かしつつある。・・・
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/126802


*1:難病は、厚生労働省が、医師らでつくる諮問機関「特定疾患対策懇談会」の答申を踏まえて認定する。対象(現在130疾患)になると、国費で治療研究推進や医療施設の整備が望め、特に克服困難の疾患については公費による医療費助成制度も適用される。腹膜偽粘液腫の認定は「患者団体などの要望を受け、同懇談会で審議中」(厚生労働省疾病対策課)の段階。

2009年10月14日水曜日

信頼を公益に結びつける

自分にとっての生きがいを考えるとき、”他人の役に立つ”ことに、自分の存在価値を見出したいと思っている人は多いのではないでしょうか。

人には様々な夢や生きがいがありますが、自己実現をめざして前向きに生きていく人は、利己的な人間社会を排し、人々の真の平等と幸福を求め行動しているような気がします。

いい記事を目にしましたのでご紹介します。「信頼」とは何か、「公益」とは何か、一度は考えてみることも必要なのかもしれません。


「信頼」を広げる

モノやサービスの恩恵を受ける有形の経済が発展し尽くしたものの、人間は果たして幸せになったか。むしろ、その奥に真の幸福の別の形があるように思う人が増えていないだろうか。

有形の正反対、すなわち無形の資産。その核心となる部分に「信頼」がある。これを社会的な事業として広げる取り組みが始まった。環境コンサルタントのアミタ(東京)を経営する熊野英介さんが個人的に資金を出して公益法人「信頼資本財団」を作った。

信頼は、手で触って確かめられるものではない。例えば良質な関係性に包まれている「安心感」、「心の平穏」が保たれている状態、あるいは人間の卓越した性質、偉さ、勇気や胆力、包容力、優しさや思いやりなどもろもろの要素の複合体、と言えるかも知れない。

財団は、信頼のかけらとして、多くの人から寄付を継続的に集め、それを元手に社会に必要な事業を行う。

例えば、1万の人の輪から月々各200円を5年にわたり寄付してもらう約束を取り付ける。いずれ1億2千万円が集まる計算なので、同じ額をすぐ調達して託児所を建てる、といったことだ。

「こういう人の輪づくりこそが『信頼の可視化』につながる」と熊野さんは言う。いわば、人間性の一番発揮されにくい部分をお互いに結びつけ、社会の安全網など「強さ」を築く挑戦だ。

実際の事業アイデアはこれから募る。妙案が集まってほしい。(2009年10月5日 朝日新聞夕刊 論説委員室から)

2009年10月13日火曜日

地域と大学の交流・連携支援ツール

先日、国土交通省国土計画局広域地方整備政策課というところから、各大学地域連携担当部署宛にホームページ「地域-大学の交流・連携支援ライブラリー」のコンテンツ更新等についての案内メールが届きました。

正直申し上げて、国土交通省がこのような事業を行っているとは全く知りませんでした。この「地域-大学の交流・連携支援ライブラリー」は、ホームページによれば、昭和55年度に国土庁(現国土交通省)に設置された「学園計画地ライブラリー」を見直し、機能転換を図ったもので、地域と大学等がそれぞれの資源・機能をもちいて多面的・広域的に連携するきっかけをつくり、地域の活性化に資することを目的としているそうです。

主なコンテンツとしては、次のようなものがあります。
  • 地域-大学の交流・連携支援ライブラリーとは
  • 地域と大学との交流・連携支援に関する情報
  • 地域と大学との連携事例集
  • 地域と大学との連携に利用可能な各種施策
  • 大学のキャンパスやサテライト等の誘致に関する土地・建物情報
興味のある方は、以下のURLを参照してみてはいかがでしょうか。
http://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/library/index.html

2009年10月12日月曜日

大学入試に向けた新型インフルエンザ対策

新型インフルエンザ患者数の激増が報じられています。義務教育諸学校では、学級閉鎖が拡大しています。

一方、新型インフルエンザの国産ワクチンの出荷がようやく9日から始まりました。初回出荷は59万人分で、今月19日から医療従事者を対象に予防接種が始まるようです。

大学関係で心配なのはなんといってもこれからシーズンを迎える入学試験への影響です。既にご存知の方も多いと思いますが、文部科学省は去る8日、新型インフルエンザの感染拡大に対する大学入試での対応策を発表しました。

詳細は、こちら(文部科学省のホームページ)をご覧いただくとして、ここでは対応策のポイントをご紹介します。


平成22年度大学入学者選抜に係る新型インフルエンザ対応方針(ポイント)

1 大学入試センター試験について

(1)大学入試センター試験本試験の実施時期

社会的な混乱を招かないよう、当初の予定通りの日程(平成22年1月16日、17日)で実施する。

(2)大学入試センター試験追試験の実施時期等

治療や万全な試験実施の準備に要する日数等を考慮し、追試験を本試験の2週間後(平成22年1月30日、31日)に実施する。(これまでは本試験の1週間後)

全都道府県で試験会場を確保する。(これまでは東京、関西地区の2か所)

2 各大学の個別学力検査について

各大学に追試験などの受験機会の確保を要請する。(本文では、1)各大学の個別学力検査の追試験等の実施、2)関係機関との連携・協力体制の構築、3)その他の留意事項について記載されてあり、大学関係者の方々は必読かと思われます。)

3 受験会場の衛生管理体制等の構築

大学入試センター及び各大学に、マスク、速乾性アルコール製剤等の準備や、発熱・咳等の症状のある者を対象とした別室での受験実施などを要請する。

4 受験生等への情報提供

大学入試センター及び各大学に、新型インフルエンザに係る対応について確実に受験生に伝わるよう、郵送による周知のほか、専用電話の開設、ホームページの活用などを要請する。

2009年10月5日月曜日

服装の乱れ

先日、大阪府の橋下知事が、”教育の自由と教師の服装の自由のはきちがえ”について厳しい批判を行った旨の記事を読みました。

学校現場では、これまで、”生徒達の心の乱れが服装の乱れに現れる”などとして、生徒達の服装の乱れを教育問題の一つとして取り扱ってきましたが、確かに、橋下知事の言われるように、生徒達を教育・指導する立場にある教師自身にもわが身を振り返っていただくことは大変重要なことだと思います。

子を持つ親としての私の経験から申し上げれば、公立小中学校の教師の服装は、基本的には教師個人の判断にまかされているようですが、国立大学の附属小中学校では、学校によって多少の違いはあるものの、男女を問わず教師のほぼ全員がスーツ姿で教壇に立っています。体育や大掛かりな清掃といった場合は例外として、出勤から退勤まで終日スーツ姿で子どもの教育・指導に当たっています。さらに、胸には統一された校章(バッジ)を付けている学校も少なくありません。

このような違いがなぜ生まれているのか、理由はよくわかりませんが、はっきり申し上げて、教師に子どもを預ける親の立場として、あるいは、教師という職業の社会的重要性を意識してしまう一般社会人としては、教師の服装とその教師の人間性、教育・指導能力とが例え無関係であったとしても、子どもたちや社会に与える影響などを考えれば、民間企業の社員や公務員同様、やはりきちんとした格好をしてほしいと思います。

報道にあるような一年中ジャージ、サンダル姿の教師が、例え、生徒達の服装の乱れに対して厳しい姿勢で臨んだとしても、説得力に欠けるばかりか、教師全体に対する子どもたちの不信感、反感につながるだけでしょう。

服装の乱れは、何も小中学校現場に限った話ではありません。大学でも全く同様、いやそれ以上に問題視すべき事例はたくさんあります。国立大学では近年、エコ対策の一環としてクールビズが奨励され、概ね梅雨時期から9月一杯は、とてつもなくカジュアルな服装で身を包んだ教職員が激増します。許容範囲というものが大学として統一されていないために、学生よりもラフなスタイルの教職員がいたりと無秩序な状況に少々いらつくこともあります。

さらに、最近最も頭がいたいのは、役員という重要職にそういう非常識な方がいることです。大学に”教職員の制服”というものが無い以上、服装は基本的には個人の判断に拠るものですが、社会一般の常識に照らした場合に、あまりにもおそまつな服装の役員がいることに強い憤りを感じる時があります。

例えば、大学の経営方針や重要事項を決定する役員会、複数の学外者を構成員とする経営協議会、著名な有識者を招いての講演会やセミナーなど、極めてオフィシャルな場面で、こともあろうに上着もネクタイも付けず、派手な柄物シャツ、ポロシャツといった学生を相手に授業や実習を行う時のような服装、さらには、スリッパがけでスタスタと音を立てながら会場に入ってくる始末。常識ある社会人とは思えない品格のなさに、同じ大学の構成員として情けないばかりか、このような役員がいることにより、まちがいなく学外者の方々の大学への信頼は低下するでしょう。

国立大学法人法(第13条)には、役員(理事)に求められる資質としてこう書かれてあります。
理事は、前条第7項に規定する者(人格が高潔で、学識が優れ、かつ、大学における教育研究活動を適切かつ効果的に運営することができる能力を有する者)のうちから、学長が任命する。

服装ごときで難しいことを言うなとのご指摘も聞こえてきそうですが、法律上の要件も満たしていない役員が、品格・資質に欠ける行為を繰り返し、大学の経営トップの座に居座ることのできる国立大学の旧態依然とした風土、緊張感や危機感の欠如は、アカデミズムを追求する最高学府とは言えないばかりか、大学を運営する資金や教職員の給与をご負担いただいている国民の皆さんや学生・保護者の皆さんに対して全く申し開きができません。

次元は全く異なるのかもしれませんが、民主党政権下で閣僚として汗を流しておられる方々が、最近よく報道番組やトーク番組に出演されていますが、国民の前で自分の言葉で説明する姿をよく見てみると、なぜか皆さん、申し合わせたように”濃紺のスーツ”を着ておられます。自民党の方々とはこういった点でも一味違うような気がします。

民主党のまねをする必要はありませんが、少なくとも役員たるもの、誰の目からみても常に大学経営の責任者である自覚と品格がにじみ出てくるような服装に気を配っていただきたいと思いますし、そうではない役員がいつまでも存在する場合には、それを放置した任命権者たる学長や、無関心を装う同僚役員に対しても責任が問われることになるのではないかと思います。 少し形式的過ぎるでしょうか・・・?


(関連記事)

「ジーンズ、ジャージー禁止を」=教師の服装で橋下大阪知事(2009年9月24日 時事通信)

大阪府の橋下徹知事は24日、府内の市町村議会議員との懇談会に出席し、教師の服装や食育などについて意見交換した。市議からの「ジャージー、Tシャツ、ジーンズの先生がいる。地域からも先生の服装がなっていないというクレームがある」との訴えに橋下知事は、「何とかならないのか。教育の自由をはき違えている」と批判し、「公務員である以上、服装まで教育の自由なんてあり得ない。(ジーンズやジャージーは)禁じないといけない」と話した。・・・
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2009092400908&m=rss

2009年10月2日金曜日

脱官僚依存のしわ寄せ

自民党が残した多くの困難な課題を抱えつつ、選挙で掲げた政権公約を確実に実行するという強い意志を国民に明示しながら政策を進めていく民主党政権の姿は、これまでの派閥・官僚主導の政治に辟易していた国民のみなさんには、すこぶる好意的に受け止められ、今後の政策運営に大きな期待が寄せられているのではないかと思います。

政治家が様々な場面で官僚に依存してきたこれまでの悪しき体質や風土からの脱却をスローガンに、大臣・副大臣・政務官の3役を中心とした政治主導の意志決定が各省庁で着実に進められようとしていることも、政治(家)のあるべき姿を考えれば当然のこととはいえ、これまでが異常であったこともあり、この大転換を歓迎する方々は決して少なくないのではないでしょうか。

ただ、いくら政権交代したからといって、少々やり過ぎではないかと感じることも全くないわけではありません。その一つが、いわゆる”公務員への言論統制”です。

民主党は、政治家が責任をもって国政に当たり、主権者たる国民へ政策動向等について政治家自らが説明を行うことを重視する立場から、従来行われていた各省庁の事務方のトップである事務次官による記者会見を原則廃止しました。今後は、大臣や副大臣が政策の詳細に亘る説明を記者会見等を通じて発信していくことになります。

これまで、さほど政策というものに精通していない、勉強していない、あるいはその気のない大臣などは、記者の面倒を事務方に丸投げしていたようなところもありましたが、これからはそうもいかなくなりましたので、これから大臣さん達には、官僚が書いた原稿を読むなどといった恥ずかしいことは止めて、自分の頭でしっかり勉強し、自分の言葉で国民に説明していただく必要があります。

事務次官の記者会見が廃止されたことは、今後具体的な政策関連情報が国民に提供されなくなるのではないかといった懸念も一部報じられており、今後の運用には少々工夫が必要になりそうです。

さらに、ここで課題として取り上げなければならないことがもう一つあります。どちらかと言えばこちらの方が大きな問題のような気がします。

民主党は、官僚依存からの脱却、そして政治(家)主導による政権運営を目指し、事務次官が国民の前で発言することを禁じましたが、それに加えて、各省庁の局長、課長といった幹部職員が国民や関係者に対して政策に関する説明やコメントをすることも禁じました。

今月、二度ほど、東京で開催された国立大学関係者を対象としたセミナーや説明会に出席する機会がありました。あるセミナーでは、当初、冒頭に文部科学省の高等教育局長の講演が予定されていたのですが、国立大学関係者といえども、官僚が国民に対して政策について語ってはならないという命令が出されているため、予定されていた”政策動向に関する講演”ではなく、”中央教育審議会における審議状況の説明”に急遽内容が変更されてしまったのです。

また、国立大学の経営に当たる役員や幹部事務職員を集めた説明会においても、開催の主目的が、文部科学省関係の来年度予算の概算要求内容の説明であったにもかかわらず、前政権下において作成された概算要求は全面的に見直される可能性が高いとして、詳細な内容はほどんど説明が省略されてしまいました。出席者にしてみれば、わざわざ貴重な時間と旅費を使って参加した意味がなくなってしまい、空洞化した説明会に少々がっかりした次第です。

このように、今、霞ヶ関界隈では、首をちじめた官僚が、民主党政権の動向を横目で見ながら手探りで小出し的行政を進めているといった状態が続いているような気がします。先行き不透明な政権交代後の政策運営がどういう方向に進んでいくのか、政治家と官僚の健全な役割分担がどのように構築されていくのか、私達国民はしっかり注視していかなければなりません。


(関連記事)

会見制限に「官」困惑 「大臣の指示を待つ」(2009年9月17日 朝日新聞)

「新政権が目指す政治主導という考えに立っている」。鳩山内閣が官僚による記者会見を行わないと申し合わせた問題で、16日夜、記者会見に臨んだ平野博文官房長官は繰り返し強調した。「決して言論統制という考え方に立っていない」 しかし、内閣府がこの日各省庁の広報担当を集めた説明会の出席者によると、内閣府の広報から規制対象となる事例が幅広く示された。「記者にすべてノーコメントで通せというのか」。出席者から疑問の声が上がったという。国土交通省が内閣官房の指示を受けて作成した内部への説明文書は「局長や課長によるブリーフィング(記者説明)、記者懇(談)、勉強会なども(取材対応禁止の)対象となる」と記述。取材への対応についても「政策の見解を述べるものは対象になると考えた方がよい」とし、平野氏の説明と受け止め方に食い違いが生じていた。 同省幹部は「どこまでが取材応対可能な『事実の説明』で、どこからが対応不可の『見解』になるのか不明確。具体的なガイドラインを作ってほしい」と話す。総務省中堅幹部は「そういう政権を(国民の)みなさんが選んだ」と、皮肉を込めて言った。環境省のある職員も「しばらくは役所の口が重くなるでしょうね」と漏らした。・・・
http://www.asahi.com/national/update/0917/OSK200909160122.html


官僚会見禁止 政治主導をはき違えてないか(2009年9月18日 読売新聞)

鳩山新内閣が、閣僚懇談会で「府省の見解を表明する記者会見は、大臣等の『政』が行い、事務次官等の定例記者会見は行わない」ことを申し合わせ、各府省に通達した。官僚トップの事務次官など、府省幹部の公式記者会見は、担当行政にかかわる専門的なテーマについて、見解をただす貴重な機会になっている。鳩山内閣が「官僚依存」の政治を「政治主導」へと転換させていくことに異論はない。しかし、その名のもと、報道機関の取材の機会を制限し、国民の「知る権利」を奪うのであれば、容認できない。官僚会見の禁止に再考を求めたい。・・・
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090917-OYT1T01253.htm

2009年10月1日木曜日

補正予算の執行停止

先日、文部科学省から各国立大学長に、「平成21年度第一次補正予算の執行について」と題する文部科学大臣名の文書(9月24日付)が届きました。

内容は、既に報道されてあるとおり、9月18日の閣議において、内閣総理大臣から、平成21年度第一次補正予算の事業に係る執行の見直しについて指示があったことを踏まえ、その執行を一部留保することを各大学に求めるものです。

最近の報道では、文部科学省は、所管全体で約2千億円の執行を停止する方向で調整しているようですが、この中には、国立大学の建物整備費として用意された資金も含まれており、老朽・狭隘化した建物の整備による教育・研究環境の改善が喫緊の課題となっている国立大学にとっては、久々の大型補正が幻と化し、頭の痛い政策転換となりました。

文部科学省のお役人さん達は、シルバーウイークに予定していた家族旅行をキャンセルするなど、休日返上で、大臣ヒアリングに汗を流したようです。ご苦労様でした。


文部科学省が公表した資料によると、鳩山総理が閣議において発言した要旨は次のとおりです。

平成21年度第一次補正予算に係る事業のうち、各大臣が所管する全ての事業について、所管大臣は、各副大臣及び大臣政務官を中心に現場を良く確認させた上で、別紙の具体的基準に基づき、その執行の是非を点検し、10月2日までに国家戦略担当大臣、官房長官、内閣府特命担当大臣(行政刷新)及び財務大臣に報告するようお願いします。


(別紙)

平成21年度第一次補正予算の執行について

1 一時留保

平成21年度第一次補正予算に係る事業のうち、国会審議等において指摘された以下のものについては、所菅大臣は、執行の一時留保が地域経済や国民生活等に大きな混乱を及ぼすと判断する場合を除き、内示等を含め執行の一時留保又は交付先の法人等に対し執行を一時留保するよう要請を行うこととする。
  1. 地方公共団体向け以外の基金事業(交付決定済みであるものの交付未済のものにあっては 21年度に支出が見込まれる部分を徐く。)
  2. 独立行政法人・国立大学法人、官庁の施設整備費
  3. 官庁環境対応車等購入費・官庁地上デジタルテレビジョン等整備費
なお、上記の事業以外のものについて、所管大臣は、見直しを決定するまでの間においては、慎重な執行を行うこととする。

2 点検の考え方

所管大臣は、平成21年度第一次補正予算に計上された全ての事業について、各副大臣及び大臣政務官を中心に現場を良く見ながら、政策的必要性を精査し、地域経済や国民生活等に与える影響も勘案しつつ、執行の是非を点検する。

特に、下記の事業については、掲げられた考え方に沿って点検を行うこととする。

3 点検結果の報告・反映

所管大臣は、10月2日までに点検結果を国家戦略担当大臣、官房長官、内閣府特命担当大臣(行政刷新)及び財務大臣に報告することとする。その上で、政府として、見直しを行うべき事業を閣議決定し、平成21年度第ニ次補正予算及び平成22年度予算に反映する。

(注)国会、裁判所及び会計検査院に対しては、以上に準じた執行の一時留保・点検等を要請する。



1)基金造成事業(地方公共団体が造成するものを除く)

平成22年度以降に基金からの支出が見込まれる部分について、交付済みのものは自主返納の要請、交付決定済みのものは交付辞退の要請、交付決定未済のものは執行停止を行う。

自主返納・交付辞退、執行停止に伴い、平成22年度以降に支出を要する場合には、予算編成過程において、その必要性を検討する。


2)独立行政法人・国立大学法人、官庁施設整備事業

独立行政法人・国立大学法人の施設整備費については、当該法人が契約済み・支出済み等の場合を除き、原則として、国から交付済みのものは自主返納の要請、国が交付決定済みのものは交付辞退の要請、国による交付決定が未済のものは執行停止を基本とした見直しを行う。
官庁施設整備費については、原則として、執行停止を基本とした見直しを行う。

3)官庁環境対応車等購入費・官庁地上デジタルテレビジョン等整備費

原則として、執行停止を基本とした見直しを行う。


(関連報道)