2010年3月20日土曜日

国立大学法人化の功罪

国立大学法人はあと2週間後には、第二期中期目標期間のスタートを切ります。既に各大学の中期計画は認可され、来週あたりには初年度の年度計画を文部科学省に提出する運びとなっています。

この重要な節目に、文部科学省は法人化の検証を行うためのパブリックコメントを行っていますし、法人化の功罪を問う各種セミナーも開催されています。

先日、国立大学財務・経営センターから届いたメルマガの中に、第50回高等教育財政・財務研究会(平成22年2月27日開催)の様子がレポートされていました。参考までに、講師を務められた崎元達郎氏(熊本大学顧問・前学長)の資料などをご紹介します。

崎元先生の講演資料は、こちら

講演会の様子は、こちら


また、今週、毎日新聞において、「大学大競争:国立大法人化の功罪」というシリーズが掲載されていましたのでご紹介します。

寄付集め、東大も本気 財源確保へ、基金増強

渉外本部職員の谷本知嘉子 さん(30)の今の仕事は「東大に就職したときには想像もしなかった」内容だ。日々、卒業生名簿を見ながら電話を掛け、面会の約束を取り付ける。大学への寄付を依頼するためだ。・・・


広がる研究費格差 衣装ケースで水槽 メス手作り

「さあ、明日の実験の準備をするか」 東日本の地方国立大で生物学を専攻する50代の男性教授は、近くのホームセンターで1本50円で買った細長い木の棒を取り出した。長さ20センチほどに切り、先端に切れ込みを入れる。カッターナイフの刃1枚を差し込み、固定する。実験動物の解剖などに使う手作りメスの完成だ。実験機器のカタログで買うより1本あたり数百円安く、「実験のたびに新しいメスを作るから、切れ味は案外いいんですよ」と、自嘲(じちょう)気味に笑う。・・・


非常勤「パート以下」

千葉県柏市の東京大物性研究所の実験室に、毎日夜にならないと現れない研究者がいる。低温下での物質の性質を研究する鳥塚潔さ ん(53)だ。東大と雇用関係はなく無給だが、「外来研究員」という肩書で研究する。鳥塚さんは、埼玉大と東京都内の二つの私立大、計3大学で物理学などを教える非常勤講師を掛け持ちして生計を立てる。研究時間は授業後の夜や週末。授業1 コマ(90分)の給与は1万数千円。今年度後期は週計14コマをこなした。「移動や授業の準備で実験の時間がとれない。だが、大学は授業がない期間も長く、週10コマ以上ないと生活が厳しい」と話す。・・・


産学官連携、両刃の剣

札幌市中心部のビルの一室。バイオベンチャー「イーベック」会長の高田賢蔵・北海道大教授が、氷点下150度の冷凍庫の中から 小さな容器を取り出した。容器には08年にドイツの製薬会社「ベーリンガーインゲルハイム」から5500万ユーロ(当時88億円)もの契約金をもたらした「宝の山」の細胞が入っている。内科医の高田教授は約30年に及ぶ 研究の末、がん細胞や病原体などを排除する画期的な新技術を開発。がん治療の切り札となる技術の実用化を目指し、03年ベンチャーを設立した。ベ社は新技術で作った新薬候補1種類の開発・製品化の独占権に5500万ユーロの値をつけた。開発段階に応じて一部ずつ支払われ、製品化段階で全額を得る。・・・


生き残りへ「改革」模索

「統合の話をどう思っておられますか」 03年秋、是永駿・大阪外国語大学長(当時)は、大阪大学長の就任あいさつに訪れた宮原秀夫学長(同)に切り出した。名刺交換の直後だった。1921年創立の「大阪外国語学校」に端を発し、司馬遼太郎、陳舜臣ら著名な文化人を輩出した大阪外大が「消滅」への一歩を踏み出した。・・・


描き切れない将来像

「(国立大法人化の)背景に、(競争や市場原理を重視する)新自由主義思想で大学は変わらなければならないという考えがあった。法人化後の影を確認することが大事だ」 2月17日、文部科学省の国立大学法人評価委員会総会。委員の寺島実郎・日本総合研究所会長が口火を切ると、他の委員も「行財政改革と重なり、(大学を活性化するはずだった)法人化の効果はかなり減殺された」「(外部資金を求め)大学の先生が浅ましくなった」「日本の高等教育が競争力を失いつつある」と続けた。・・・