2010年7月8日木曜日

国立大学法人の破綻へのシナリオ

来年度予算の概算要求に絡んで、ぎょっとするようなニュースが飛び込んできました。

国から国立大学法人に毎年配分されている「運営費交付金」が大幅に削減され、その額は、なんと大阪大学と九州大学が消滅する規模に達するほどの額になるそうです。実現すれば、授業料の値上げなどいろんな悪影響が心配される状況になります。

まずは、報道です。

文科省SOS 運営費交付金など削減なら「阪大・九大消滅も」 (2010年7月8日 産経新聞)

参院選後に始まる平成23年度予算の概算要求で、文部科学省が大学の日常的な教育研究を支える「国立大学法人運営費交付金」などについて削減対象から外すよう要求していく方針を固めたことが7日、分った。菅内閣が6月に閣議決定した「財政運営戦略」に基づき、省内で試算した結果、同交付金の削減額は約927億円。これを実行した場合、大学破綻(はたん)によるわが国の知的基盤の喪失や研究機能の停止といった深刻な結果を招く危険性が高いことから、文科省は「削減は到底困難」としている。

6月22日に閣議決定された「財政運営戦略」の「中期財政フレーム」では23年度から3年間「基礎的財政収支対象経費」は前年度を上回らない方針が示された。文科省では年額1兆3千億円で伸びる社会保障関係経費を踏まえると、その他の一般歳出は年率8%の削減を余儀なくされると試算。これを機械的に国立大学法人運営費交付金にあてはめた場合、削減額は約927億円に上る。22年度までの7年間で達成した同交付金の削減額830億円を上回る法外な額だ。

文科省の試算によると、仮に削減のしわ寄せを授業料でまかなう場合、学生1人あたり年23万円の値上げとなる。研究経費を削って捻出(ねんしゆつ)する場合は、現状の32%減(約1954億円)となり「大学の研究機能が停止する」と指摘。さらに特定大学の交付停止で対応すれば、「大阪大学と九州大学の2大学を消滅させるか、地方大学や小規模大学27大学をなくさざるを得ない規模」で、わが国の知的基盤の喪失を招くと憂慮している。このため文科省では大学の“生命線”となる「国立大学法人運営費交付金」と「私立大学等経常費補助」を予算編成で削減対象から除外するよう求める。

民主党は昨年の衆院選前に策定した「民主党政策集INDEX2009」で「自公政権が削減し続けてきた国立大学法人に対する運営費交付金の削減方針を見直します」と明記したが、政権発足後、財源の見通しが不十分なまま、子ども手当や高校無償化に踏み切り、多くの既存予算がしわ寄せを受けている。
http://sankei.jp.msn.com/life/education/100708/edc1007080105000-n1.htm


この記事は、文部科学省や国立大学協会があらかじめ用意した資料に基づいて書かれてあります。同様の資料は既に国立大学協会から、各国立大学法人にも送付されています。資料のうち、記事に関連した部分についてご紹介します。

「中期財政フレー ム」(平成22年6月22日閣議決定)では、平成23年度からの3年間は「基礎的財政収支対象経費」について前年度を上回らないこととされ、社会保障関係経費の伸び(年額1.3兆円)を勘案すれば、その他の一般歳出は年率▲8%の減となる。

国立大学法人運営費交付金に機械的に適用した場合、その削減額は約927億円(平成22年度予算額1,158,514,767千円 × ▲8% = 約927億円)

⇒ 国立大学法人運営費交付金の従来以上の削減は、これまでの民主党の主張と著しく異なる

【民主党政策集 INDEX2009】

自公政権が削減し続けてきた国公立大学法人に対する運営費交付金の削減方針を見直します。

【国立大学法人法案 参議院 附帯決議】

法人化前の公費投入額を踏まえ、従来以上に各国立大学における教育研究が確実に実施されるに必要な所要額を確保するよう努めること。
⇒ 小泉政権下ですら、科振費相当として削減対象外になった平成17年度予算編成を踏まえ、それ以上の対応が不可欠。



927億円の削減とは・・・

仮に教育経費の削減で対応すると・・・
⇒ 国立大学法人の教育経費 約1,624億円(平成21年度決算額)
⇒ 約697億円(▲57%減)となり、人材養成機能が崩壊

仮に研究経費の削減で対応すると・・・
⇒ 国立大学法人の研究経費 約2,881億円(平成21年度決算額)
⇒ 約1,954億円(▲32%減)となり、研究機能が停止

仮に学部学生の授業料値上げで対応すると・・・
⇒ 学生1人当たり約23万円の値上げ
⇒ 約77万円(43%増)となり、教育費負担軽減の流れに逆行

仮に特定大学への交付停止で対応すると・・・⇒ 大阪大学と九州大学の2大学が消滅*1または地方大学や小規模大学27大学が消滅*2
⇒ 我が国の知的基盤の喪失

詳細な資料は、こちらをご覧ください。

8%の概算要求シーリング阻止のために国大協が行動開始 (東京大学職員組合)

来年度予算の概算要求基準は、早ければ7月23日(金)の閣議で決定されるとの情報もありますが、今後、国立大学協会などは、例年以上に国会議員や首長さん方への予算確保のための陳情に力を入れていくことになります。

(関連ブログ)運営交付金年率8%減!? (2010年7月8日 発声練習)


*1:大阪大学と九州大学の2大学分(930億円)に相当

*2:地方大学及び小規模大学27大学(愛知教育、東京芸術、名古屋工業、お茶ノ水女子、京都工芸繊維、和歌山、京都教育、長岡技術科学、豊橋技術科学、兵庫 教育、奈良女子、福岡教育、鳴門教育、福島、東京外国語、滋賀、上越教育、室蘭工業、宮城教育、筑波技術、帯広畜産、奈良教育、北見工業、政策研究大学 院、総合研究大学院、鹿屋体育、小樽商科)分(917億円)に相当