2010年7月17日土曜日

大学の戦略的中長期計画とは

去る7月12日(月曜日)の午後、一橋記念講堂(東京都千代田区)において、「第3回東大-野村大学経営フォーラム 大学の中長期計画を考える -コア・バリューの強化に向けて-」と題するセミナーが開催されました。

このセミナーは、「大学における財務基盤の強化」をテーマとした東京大学(研究者)と野村証券(実務家)が取り組む我が国初の共同研究の成果を報告するもので、今回が3回目となります。

セミナーのプログラムはこちらです。

第3回東大-野村大学経営フォーラム「大学の中長期計画を考える」




第二部のパネルディスカッションでは、中長期計画の経営・財務戦略とのリンクについてのフリーディスカッションが行われました。印象に残った主なコメントをご紹介します。
  • これまでは、一体性、財政の保証がない(財務戦略の裏づけがない)中長期計画が存在。中長期計画の策定に当たっては、将来(10年後)の財務構造をどう考えるのかを見極める必要。
  • 大学の役職員は、財務状況の理解が不足。財政のわかる人材を養成する必要。財務がわからないと経営はできない。
  • 中長期計画の中で財政とともに重要なのが、どのような教育を施すか。これまではそれぞれがバラバラ。統合された計画づくりが必要。
  • 大学以外の人の意見をどうやって中長期計画に取り入れるか。会話が重要であり、OBであればホームページや広報誌を通じ、学生であれば学長が直接懇談するなど。
  • 大多数の冷ややかな教職員への対応をどうするか。全員が同じ方向を向いていない。全学的コンセンサス、合意形成をどうするか。時間がかかるがあきらめない。繰り返し説明し理解してもらうしかない。そのためには、情報や危機感の共有が重要。
  • 意思決定にスピード感が求められる中、合意形成に時間がかかる。この二律背反をどのように乗り越えていくか。
  • IR(インスティテューショナル・リサーチ)が重要。多くの教職員は大学の状況を知らされていないのが現状。これでは理解は困難。実態をデータ、グラフで示す必要。ただし、情報が多すぎるので限定的に流すこと。
  • 授業料の割引(値下げ)をしても効果は薄い。教育の内容、質の向上が無い限り学生は入ってこない。

(参考資料)東大-野村 大学経営ディスカッションペーパー No.12 大学の戦略的計画(1)