2011年3月23日水曜日

危機広報からみる大学の姿

未曽有の大惨事となったこのたびの大震災。大津波も加わりもたらした被害は極めて甚大であり、2週間目に入った現在でも復興の光すら見えていない状況で、あらためて自然の脅威を思い知らされました。

震災により、我が国の大学も大きな影響を受けました。折しも国立大学は後期日程試験を翌日に控えていたため、入試担当者の方々はもとより、多くの役職員は大変なご苦労があったことでしょう。

学生・教職員の安否確認、入学試験への対応、入学手続への対応、入学式・卒業式への対応、被災学生等に対する入学料・授業料免除、奨学金等の経済的支援、学生のボランティア活動への対応、就職活動を行っている学生への対応、復興支援のための義援金の募金、留学生等国際関係機関への対応、そして学生のメンタルケア等々、迅速に処理しなければならないことが山ほどあります。被災地域に立地する大学であればその内容は計り知れない膨大かつ複雑なものとなります。

さて、今回のような危機事象が発生した場合に、大学が取るべき行動の一つに、学生や保護者といったステークホルダーに対する適切な情報提供を含む説明責任があります。大学は、多くの学生の命を預かる責任から逃れることはできません。危機事象の解決に向けた自らの取り組みを適時適切に公表することにより、公共的使命を果たして行く必要があります。

そこで、今回は、国立大学法人が、今回の危機事象に対して、どのように対応し、それをどのように学生の皆さんなど社会に対して公表しているのかを各法人のホームページを通して見てみることにしました。

被災地に立地する大学はもとより、大半の大学が、何がしかの情報を発信していました。伝えたい内容が緊急かつ確実を必要とすることから、多くの大学が、このたびの地震への対応状況を「特設サイト」、あるいは、「関連情報を集約したページ」を設けるなどの工夫をしながら発信されていました。

ただ、被災地に立地する大学を除くと、被災地との地理的関係(距離)のためなのか、役員を含めた教職員の危機意識の差なのか、あるいは、危機広報能力の差なのかは定かではないものの、情報の量や内容において大学によってかなりの格差があることも確認できました。

地震への対応状況を集約・整理して発信されている大学をご紹介します。(2011年3月19日現在)

北海道・東北地区


関東・甲信越地区

東海・北陸・近畿地区


中国・四国地区


九州・沖縄地区

(関連記事)

70超の大学が優先入寮や見舞金 被災に配慮(2011年3月19日 共同通信)

東日本大震災の被災地出身の学生や入学予定者の学費減免などの措置を決めた大学が、少なくとも70校以上に上ることが18日、共同通信の調べで分かった。各大学が独自に定める経済的な支援制度の適用を決めたり、相談窓口を設けて学費などについて個別に対応を始めている。 多くの大学で入学手続き書類の提出や、学費の納入期限などを延長。早稲田大では被災した合格者が希望すれば、入学時期を9月か来年4月まで延長できる。学生寮への優先入寮(お茶の水女子大)や、災害見舞金を支給する(近畿大)ケースもある。

文部科学省は14日、震災で授業料などの納付が困難になった学生に対し経済的な支援などをするよう、国公私立大学長などに通知している。

被災地の新入生、焦らないで 各地の大学、特例措置次々(2011年3月21日 朝日新聞)

東日本大震災を受け、各大学が被災地からの新入生の負担軽減策を次々と打ち出している。入学金や授業料の減免などが主体。さらに、新年度の授業開始日を1カ月ほど遅らせる大学が、被災地だけでなく首都圏でも増えている。被災学生への配慮に加え、計画停電による混乱への警戒も理由のようだ。

早稲田大は、被災して入学が困難になった今春の合格者に対し、入学時期を今年9月か来年4月に延期してもよいとする異例の措置を決めた。

入学を来年4月に延期する場合、納めた入学金や授業料はいったん全額返還する。大学は「震災によって大学で学ぶ機会が奪われることがないようにしたい」と話す。

東京の私大では他にも上智大が、地震や津波による家屋の被害状況を、(1)全壊相当(2)半壊相当(3)一部損壊相当に分類。授業料、学生納付金は全額~3分の1免除とし、入学金は3区分とも全額免除とする。東京音楽大も類似の減免措置を決めた。

法政大は、(1)なら授業料を全額免除、(2)なら半額免除、(3)なら免除なしとし、いずれも入学金は全額免除とする。

このほか明治大も学費減免を実施する。中央大は被災者への奨学金給付を準備しており、立教大、独協大も学費減免など経済支援を検討中だ。

被災地では新年度の授業開始日を遅らせる大学が多い。

岩手大は、4月8日に予定していた前期の授業開始日をゴールデンウイーク明けの5月9日に遅らせた。

震災による道路事情の混乱で引っ越し業者から予約をキャンセルされる学生が続出。4年生が転出できない→学生向けアパートの空き部屋が出にくい→新入生が転入できない、という連鎖が生じていることも一因という。

仙台市の東北大や福島市の福島県立医科大、福島大もそれぞれ4月下旬~4月末まで授業を行わないことを決めている。

首都圏でも、早稲田大が授業開始日を4月6日から5月6日に1カ月延期した。理由は被災地出身の新入生への配慮が一つ。もう一つは、東京電力の計画停電が4月中は続く可能性があり、停電エリアにある所沢、本庄キャンパス(ともに埼玉県)では授業に支障の出るおそれがあるからだ。4月1~4日に東京都新宿区の戸山キャンパスで予定していた入学式の中止も決めた。

同板橋区の大東文化大も、4月6、7日の授業開始日を5月6日に延期する。