2012年3月5日月曜日

現場の裏通りこそ見よ(土光敏夫)

起工式や竣工式のときだけ、現場に顔を出す幹部は、よそものの神官と同類である。
現場には、銀座通りもあれば、裏通りもある。幹部は裏通りも歩くべきだ。成績の悪い職場や陽の当たらない職場こそ、見るべきだ。
幹部の持つ情報は、とかく単色になりがちだ。本来の情報は天然色なのだが、上に上って来る間にアク抜きされてしまう。
そんな薄まり弱まった情報に基づいて、間違った判断をしていたら大変だ。
単色情報を天然色情報にもどすには、自らの足で現場を歩き、自らの目で現場を見ることだ。
現場の空気を味わい、働く人々の感覚に直に触れることによって、抽象化された情報が、にわかに具象性を帯びて、生き生きしてくる。