2012年5月3日木曜日

選択と集中-大学の統廃合等の促進

4月9日第3回国家戦略会議において、大学の統廃合、国立大学運営費交付金や私学助成のメリハリある配分など、教育改革の必要性について指摘が行われています。

また、総理より、次回会議(5月予定)において、社会構造の変化を踏まえた教育システムの改革についての取組方針を文部科学大臣が報告するよう指示されています。

国家戦略会議の議事要旨から、国立大学に関連深い部分について抜粋しご紹介します。


長谷川議員(武田薬品工業株式会社代表取締役社長)

世界で活躍する人材の育成について幾つかポイントを申し上げます。

世界レベルの語学力を持つ大学生の倍増の1つの要素として、外国人教授を積極的に採用する必要があります。現在、全教員に占める外国人教員比率は約5%と聞いていますが、それを少なくとも短期間のうちに倍増するぐらいの具体的な目標設定が求められているのではないかと思います。

なお、この阻害要因の1つとして、教授会は基本的には学長などが教育、研究に関する重要事項に関連して教員の意見を聴取する場であるべきところが、経営事項の決定にも日常的に関与しているのが多くの大学における実態です。学校教育法93条*1を変更して、教授会の役割機能を明確化することも必要ではないかと考えます。日本人教授のポストが減るため外国人教授増員をすることについては、教授会の賛同が得られないという話も聞いております。

また、単位の相互認証等の海外大学との連携も当然進めていくべきですし、先に申しあげた教授会の在り方の見直しを含む大学ガバナンスの可視化も待ったなしに行う必要があると考えます。

大学の統廃合等の促進を含む高等教育の抜本改革ですが、人口減少の中で大学は増え続け、現在、86の国立大学、約600の私立大学があり、私立大学は10年間で103校増えています。このうち4割は定員割れということですが、それでも形式要件さえ満たせば助成金が出る。企業が続々と倒産するのに、少子化の時代にあってなぜ大学は増え続けられるかは疑問です。5割を超える大学進学率であり、入学者の約4割はAO入試や推薦入試とも聞いています。そういった状況の中で、国立大学の運営費交付金や私学助成金の在り方を見直し、実績に応じたメリハリをつけるべきではないかと考えます。

平野文部科学大臣

大学自身が変わり、日本社会全体の変革を実現する。社会変革を行う人材を育成する大学が国民や社会の期待に応えていないということであるならば、私は日本の将来はないと思っています。そういう意味では、文科省としては、大学改革タスクフォースを設けて、骨太のプランを今、検討中でございます。学生の主体的な学びを強化し、大学情報の徹底的な公表、大学教育の質の保証の仕組みを整備いたします。地域社会再生の拠点としての機能を発揮させるとともに、大学ガバナンスの強化を進めてまいりたいと思っています。大学の統廃合、メリハリのある配分ということについては私も理解いたしますが、統廃合という考え方よりも、そういう意味から考えますと、私は大学の枠組みを超えた大学群を形成する。全国の地域での大学の連携強化を図りつつ、大学の教育の研究力を高めて、日本の人材の質を高める努力こそ必要であると考えているところであります。統廃合自体を目的として政策を推進することは、日本の教育水準を高めることにはつながっていかないと考えております。

また、国立大学の運営費交付金や私学助成は、そのほとんどが大学の維持、運営に必要な基盤的経費に充てられておりますが、先ほど御指摘のメリハリをつけるということについては、私どもは本当に真摯に受け止めなければならないと思っております。

緒方議員(国際協力機構特別顧問)

大学生の質を上げるということが出ておりますが、質を上げるには画一的な教育や教授法では十分ではなく、多様な機会をどんどん提供していくことが大切ではないかと思います。大学の統廃合等々が議論されていますが、大学側においても、独自性、多様性というものをもう少し重視し、考えていただければありがたい。同じようなところで同じようなことをしているというのでは、日本の今後の発展というのはなかなか思うようにいかないのではないかということを通感しております。

安住財務大臣

18歳人口は、この20年で200万人から120万人に減りました。これから60万人に減っていきますが、大学は500校だったのが780校になっています。その中身は、短大をそのまま四大にしたり、あえて申し上げますと、国立大学はほとんど改革の努力をこの20年怠ってきたのではないかと思うような節があります。やはりこれでは、統廃合という言葉に多少文科省は抵抗している感じもありますけれども、思い切って選択と集中、メリハリをつけなければ、日本の高等教育は成り立たない。これは、実は中川前文部科学大臣とも、特に国立大学のグループ化等、本格的に結果を出してほしいということで昨年の予算編成でやりましたから、大学群をつくったり、例えば九州や東北を含めて、今のまま教育学部がそのまま全国にあったりすることを放置したままでは成り立たないと思います。

あえて言えば、大学進学率を上げることが1つの目標と思っている価値観を改めるために、運営費交付金で公的セクターは1兆2000億円近く毎年固定費のように使っていますし、私学助成全体でも約4000億円で、この中身はほとんど変わらないということに問題意識を持って、文科省の皆さんと一緒に改革をスピードアップして進めていきたいと思っております。

枝野経済産業大臣

今、若者と就職のミスマッチが言われていますが、そもそも人材育成機関と産業構造とのミスマッチが今も生じているし、今後更に拡大していくということは確実な状況にあります。正に大学は出たけれどもという状況は、あえて言えば必然で、つまり、産業界のニーズと現在の教育システムがマッチをしていないという構造があると思っています。これは経産省としてもできるだけ具体的な話をお示ししながら努力してまいりたいと思いますが、特に人材育成関連の官庁においては、是非そのことを前提にして物を進めていただきたいと思います。

川端総務大臣

大学は、社会が求めている人材をしっかり教育していくために何をするべきなのか、どういうことに力を入れるべきか、ということが求められるのであって、それに対応できない大学は淘汰されるべきだと思います。そして、企業や社会は大学卒を求めているのではない。日本は、大学卒であればいいということからの大転換期に来ていると思いますので、やはりここは相当思い切って、わかりやすい形で実行していくということに挑戦すべきだと思っております。

野田内閣総理大臣

4点指示をさせていただきます。

第1に、次世代の戦略的な育成は必要不可欠であります。六三三制等の学生の在り方も含めた教育体系の見直しや、大学の統廃合等の促進を含む高等教育改革について、濶達な議論が見られました。本日の議論を基に、社会構造の変化を踏まえた教育システムの改革に果敢に取り組み、平野大臣からは、5月の国家戦略会議に取組方針を御報告いただきたいと思います。


*1:学校教育法第93条 大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。