2012年5月17日木曜日

成長の原理(ドラッカー)

仕事が刺激を与えるのは、成長を期しつつ、自ら興奮と挑戦と変化を生み出すときである。これが可能となるのは、自らと仕事の双方を新たな次元で見るときである。

指揮者に勧められて客席から演奏を聴いたクラリネット奏者がいる。そのとき彼は初めて音楽を聴いた。その後は、上手に吹くことを超えて音楽を創造するようになった。これが成長である。仕事のやり方を変えたのではない。意味を加えたのだった。

自らの成長につながる最も効果的な方法は、自らの予期せぬ成功を見つけ、その予期せぬ成功を追求することである。ところがほとんどの人が、問題にばかり気をとられ成功の証しを無視する。

報告書も問題に焦点を当てている。最初のページには、前期の業績不振についての要約がある。しかし、そこには当初の計画や予算よりもよい成績を記すべきである。そこにこそ予期せぬ成功の兆しが現れる。最初は無視してしまうかもしれない。「放っておいてくれ。問題の解決に忙しいんだ」

私は訪問看護の非営利組織を運営している女性を知っている。彼女は残業の増加を見て、抑制するのではなく原因を調べた。看護が忙しいのはむしろ午後六時過ぎであることを知った。医療の進歩のおかげで、病気の人が働けるようになり、夜間の治療が増えたためだった。

成長のプロセスを維持していくための強力な手法を三つあげるならば、教えること、移ること、現場に出ることである。第一に、うまくいったことをどのように行ったかを仲間に教える。相手が学ぶだけでなく、自らが学ぶ。第二に、別の組織で働く。そこから新たな道が開かれる。第三に、一年に何度か現場で働く。

ある病院のトップマネジメントの一人が、数年前ストか何かのために、病棟で働かなければならなくなった。毎日がドラマだった。学ばざるをえなかった。真剣にならざるをえなかった。今日その病院では、年に一週間、経営管理者はすべて病棟で働く決まりになっている。

成長のための偉大な能力をもつ者はすべて自分自身に焦点を合わせている。ある意味では自己中心的であって、世の中のことすべてを自らの成長の糧にしている。