2012年5月31日木曜日

本当の効率とは

論考「つながる組織づくり」(岩田雅明 氏)(文部科学教育通信 No292 2012.5.28)から引用しご紹介します。


どこの大学でも、非正規職員というものは存在しているであろうし、その比率は徐々に高まる傾向になっているのではないかと思う。これは企業でも同じである。なぜかといえば、もちろん人件費の抑制のためである。また不景気になると、真っ先に削減されるものの一つに研修費が挙げられる。これらの動向から感じられるのは、組織の最も重要な構成要素であり、組織の成果を左右する大きなカギとなる『人』に関する支出を、単なるコストとしか見ていないということである。コストとしてとらえれば、当然ながら、できるだけ削減するという方向になってしまう。しかし、『人』は組織の成果を左右する、最も大切なものである。それは単なるコストではなく、むしろ投資である。投資であるならば、それを削減するということでなく、より大きな成果を得られるようになることをめざすべきである。

段ボール製造で国内最大手のレンゴーは、2009年4月、業績悪化による雇用調整という事態が大手企業で続出していた中で、派遣社員千人全員を正社員化するという決断をしたことが「日経ビジネス」に紹介されていた。この決断の背景にあるのが、同じ仕事をしている社員の処遇に差をつけるべきでないという、社長の信念であると。まさに『人』に要する費用をコストではなく投資と考え、一体感のある、『人』を活かす組織にすることで、より大きな成果を上げていこうという考え方であると思う。

同社の人件費は、年間4~5億円の増加になったという。ところが、皆が同じ処遇になったことで現場の社員の意思疎通が大変良好となり、工場内の清掃、整理、整頓といった面も大幅に改善されたとのこと。その結果、製品のロス率が大きく低下し、2009年第一四半期の営業利益は前年比81%増、純利益は2倍になったという。まさに投資大成功、といったところである。