2012年6月1日金曜日

国立大学法人法の改正

先月(5月11日)、「独立行政法人通則法の一部を改正する法律案」と「独立行政法人通則法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案」が、閣議決定・国会に提出されました。これは、「独立行政法人の制度及び組織の見直しの基本方針」(平成24年1月20日閣議決定)に基づくものですが、これに伴い、独立行政法人通則法を準用している「国立大学法人法」もあわせて改正されることになっています。平成26年4月1日からの施行が予定されており、今後、学内規則の整備など諸準備を進めていく必要があります。

主な変更内容は次のとおりです。


1 国立大学法人のガバナンスの強化が図られます。

1)国立大学法人の役員は、法令や法令に基づいて行われる文部科学大臣の処分、国立大学法人が定める業務方法書その他の規則を遵守し、国立大学法人のため忠実にその職務を遂行しなければならないこと、2)国立大学法人の役員・会計監査人は、その任務を怠ったときは、国立大学法人に対し、生じた損害を賠償する責任を負うこと、またその責任は、文部科学大臣の承認がなければ免除することができないこと、3)業務方法書には、役員の職務の執行が、国立大学法人法又は他の法令に適合することを確保するための体制等を記載しなければならないこと、などが明確にされます。

また、国立大学法人(役員、職員を含む)が、不正の行為、国立大学法人法や他の法令に違反する行為をした(又はするおそれがあると認める)ときは、文部科学大臣は、国立大学法人に対し、その行為の是正のため必要な措置を講ずることを求めることができること、国立大学法人は、文部科学大臣の求めがあったときは、速やかにその行為の是正その他の必要と認める措置を講ずるとともに、措置の内容を文部科学大臣に報告しなければならないこと、などが明確にされます。

さらに、国立大学法人の役職員の公正性を担保し、給与水準の説明責任を果たすため、国立大学法人の役員に対する報酬・退職手当は、その役員の業績が考慮されるものでなければならないこと、役員に対する報酬の額は、国家公務員の給与、民間企業の役員の報酬等を勘案して文部科学大臣が定める額を超えてはならないこと、などが明確にされます。


2 国立大学法人における監査機能の強化が図られます。

1)国立大学法人の監事は、文部科学省令で定めるところにより、監査報告を作成しなければならないこと、2)監事は、いつでも、役員・職員に対して事務・事業の報告を求め、又は国立大学法人の業務・財産の状況の調査をすることができること、3)監事は、役員が不正行為をした(又はするおそれがあると認める)とき、国立大学法人法その他の法令に違反する事実や著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を学長(当該役員が学長である場合においては、文部科学大臣)に報告しなければならないこと、などが明確にされます。また、監事の任期が2年から4年に延長されます。


3 中期目標期間の4年目終了時に達成状況評価が実施されます。

年度評価では、当該年度における業務の実績評価だけでなく、中期目標の期間の最初から当該年度末までの期間に係る中期計画の進捗状況についても評価が行われるようになります。また、第三期中期目標期間(平成28年度開始)からは、中期目標期間の最後の年度の前々年度(4年目終了時)には、中期目標期間の終了時に見込まれる中期目標の期間における業務の実績評価(いわゆる「暫定評価」)が実施されることになり、文部科学大臣の責任による確実な中期目標管理が強く求められるようになります。

文部科学大臣は、国立大学法人の中期目標期間の”終了時までに”、各国立大学法人の業務を継続させる必要性、組織の在り方その他その組織・業務の全般にわたる検討を行い、その結果に基づき、当該国立大学法人に関し所要の措置を講ずるものとすることが明確にされます。(現行の準用通則法第35条では「終了時において」という表現でしたが、今回「終了時までに」という表現に改正されることになり、今後は、国立大学法人の在り方に関する検討のサイクルが短縮されていくことが想定され、十分留意する必要があります。)


4 国立大学法人評価の客観性・公正性を確保するため、総務省に「行政法人評価制度委員会」が設置されます。

行政法人評価制度委員会は、1)必要があると認めるときは、国立大学法人評価委員会に対し意見を述べることができること、2)国立大学法人の中期目標の期間の終了時までに、当該国立大学法人の主要な事務・事業の改廃に関し、文部科学大臣に勧告をすることができること、また、勧告をしたときは、文部科学大臣に対し、その勧告に基づいて講じた措置について報告を求めることができること、などが明確にされます。このほか、総務省設置法の改正により、国立大学法人は、総務省の行政評価・監視の調査対象になります。


(参考)独立行政法人通則法の一部を改正する法律案等国会提出法案の詳細