2012年12月29日土曜日

公務員優遇

文教ニュース(平成24年12月17日 第2219号)に掲載された「田舎者の貧乏人を公務員にさせないために」をご紹介します。


公務員宿舎が半減され、入居できるのは例外的になり、運良く入れても家賃は倍になるらしい。要すれば、これからは安く住めるところなんか世話してやらないよ、ということだ。

背景は「公務員優遇」批判である。二十代の頃から大学の同窓会に出るたびに「俺の給料は同級生のちょうど半分なんだな」と自虐してきた身としては、「いったい何と比べて優遇なのか」と言いたくもなるが、言っても逆効果なのは目に見えているから、公務員らしくダンゴムシのように黙って堪えよう。

廃止される宿舎には、かつて世話になった独身寮も入っている。

もし自分が若い時代に戻って、「宿舎はないよ、自分で住むとこ借りるんだよ」という話だったら、果たして公務員になっただろうか、公務員を続けることができただろうかと考えてしまう。

田舎者で正真正銘の貧乏な家に生まれ育った私が東京で大学時代に住んだ下宿は、四畳半でトイレは共同、風呂無し、家賃月1万6千円という、当時でも超格安の物件だった。夜中に目を覚ますと、ウサギほどもある巨大なネズミとよく目が合ったものだ。

役所に入ってからも最初はそこで粘ったが、銭湯が開いている時間に帰れることはなく、さすがにこれはかなわんと独身寮に入れてもらった。

そこでも風呂は週3日しかないし、11時にはお湯が止まってしまうので、毎晩2時前後に帰宅する私は、浴槽の底に15センチほど残った油のように黒光りするぬるい液体に、まず背中、次に腹と、体を裏返して浸からねばならなかったが、それでも無いよりはずっとマシだった。

寮に入れなかったら、私は「汗かきのくせに風呂に入らない臭い奴」としてしか公務員を続けられなかっただろう。

世の中不景気だから公務員を叩いて憂さ晴らしをしたいのも分からんではないが、こんなことをやっていたら、中央省庁の役人には、東京近辺の出身者か親が金持ちの人間しかなれなくなってしまう。いや、もしかすると、今回の公務員宿舎減らしも、金持ちと東京人の上流階級で政府を支配せんとする巨大な陰謀の一部であるか。国会も相変わらず二世三世の天下だし。人は生まれながらにして平等、なんて大ウソだわね。

そんなんで本当にいいのかね。今よりもっと「貧乏人に冷たい国」になっていってしまうんだろうね。

やがて絶滅していく「田舎者で貧乏人の国家公務員」の一人としては、最後に少しは意地を見せたいところだが、その前に「家、どうするのよ!」という妻の怒りをどうやって鎮めればいいのか・・・。