2013年5月3日金曜日

「先生たちの」東大病

教育評論家の梨戸茂史さんが書かれた「教育ななめ読み-東大病」(文部科学教育通信 No314 2013.4.22)をご紹介します。


近頃の東大は少しおかしくないですか? 「秋入学」に「推薦入試」。国際化を目指した「秋入学」は、最近、学長が「事実認識としては困難だ」とか言い出し、尻すぼみ。

3月15日の毎日新聞によると「推薦入試16年度から導入 二次試験後期日程は廃止」とあった。募集人員は約100人。佐藤慎一副学長は「特定の領域に深い見識を持っているなど、前期日程とは違うタイプの学生を確保し、多様性を高めたい」と説明した。出願は、各高校の推薦状と調査書に加え、特定の学問分野への関心を証明する論文などの提出を求める。各校が推薦できるのは1~2人で、浪人生も対象となる。前年11月に願書を受け付け、12月に面接を複数回実施して絞り込み、翌年1月の大学入試センター試験で規定以上の成績を収めた受験生を合格とする。ここに「しばり」があるのは学力保証になるでしょうね。合格者には、1~2年生から大学院の授業への参加を認めるなど、能力をさらに伸ばす配慮をするそうだ。そん所そこらのAO入試や推薦入試とは大違い。高校時代から、すでにある特定の学問分野に優れた能力を持つ人物などを念頭に置いており、その分野の教官が調査書や面接などによって専門的な見地から審査すると言うから、ねらい目はそこにある。いわば「(学問の)一芸に秀でた人材の発見」だ。

しかし、問題はある。「不得意科目が一科目でもあると落第になる」というタイプの「センター試験」を基準にして足切りをするのだから、東大の「推薦入学」は、その目的(不得意科目があっても一芸ないし三芸に秀でるタイプを合格させる)には、まったく不適との意見。また、「後期試験」の廃止は、試験当日に風邪などで受験できなかった学生を救済できない。後期試験の倍率を潜り抜けた優れた学生を落としてしまう。

さらに、一般に推薦試験では「面接」が重視されるが、それはアインシュタインやエジソンみたいなタイプの天才は不合格となる恐れがある。特に理系なら「引きこもり」くらいが研究者向きかもしれない。一番の問題は「推薦」の基準。「あいまいさ」が残る。これを認めないと成立しない。面接官の好き嫌いもOKでしょう。ちょっと変化球?な意見では、面接で有利なのは、「美人・イケメン」であることだとさ(笑)。さらなる意見は、和田秀樹氏。プログで、東大の推薦入試で入ってくるのは政財界の子弟や皇族になり、東大の中にハイソサエティができる、と書いている・・・(まさか!絶句)。ボランティア活動も、人にアピールできるような課外活動には親の援助が必要。親の財力や知的援助もプラスされていて、庶民はますます入りにくい大学となるかもしれぬ。

個人的な意見ですが、東大卒の人たちでも、ユニークで面白い人は大勢います。みんな現行方式の入試で合格している。どうやっても合格する学生は合格しますよ。仮に毛沢東語録を暗記していないと入れない、などとしてもそれをクリアする受験生は今のレベルでも同じように存在しているでしょう。ハーバード大学の入試みたいなことを想定しているのかなあ。財力で入ったケネディもOKだし、ビル・ゲイツもいますよね。そもそも欧米の名門大には、最初から大ロ寄付者の子弟の枠があり、日本でも慶應はそうやって金持ちを取り込んだそうだ。もっとも、今の東大は進級するのが難しい。学力が追いつかず、留年、中退者が続出するかもしれないとの意見もある。

なんだか、ちょっとずれてきているような東大ですが、これも「先生たちの」東大病かもしれない。それにしても、賛否両論、喧々諤々。「入試」って難しい。