2013年5月10日金曜日

大学の変革にはガバナンス(統治)の是正が不可欠

「大学ガバナンス、人事・予算で学長に権限を(北城恪太郎氏)」(2013年5月2日 日本経済新聞)をご紹介します。

大変的を得た考え方だと思います。

日帰り温泉に行きました:露天風呂

安倍政権が成長戦略と関連する形で、大学改革に力を入れ始めた。新産業を生み出す源として大学にかかる期待は大きいが、高等教育の世界でも強まる国際競争への対応が十分とは言い難い。多くの国立大、私立大の運営に携わってきた経済同友会終身幹事の北城恪太郎氏(日本IBM相談役)は、大学の変革にはガバナンス(統治)の是正が不可欠と話す。

--日本の大学がガバナンスの課題を抱えていると訴えてきました。

「大学には立派な見識を持つ学長が多くいると思う。しかし、そうした学長は十分なリーダーシップを発揮しにくい状況に置かれている。問題は大きく分けて2つある。まず、学長の選び方に問題がある。さらに、選ばれた学長に十分な権限が与えられていない。これらを解決しない限り、大学の改革には長い時間がかかってしまう」

教授会見直しを

--どこから手を付ければよいですか。

「まず、教授会の位置付けを変える必要がある。ほとんどの大学では、教授会が重要事項の決議機関になっている。学部長を実質的に選ぶのも教授会だ。多くの場合、学長は教授会が選挙で選んだ人物を学部長に任命する仕組みになっている」

「つまり、学長が優れたビジョンを持っていて『学校をこうしたい』と思っても、教授会よりも先に発表すると『承認していない』という話が学部内から出て前に進めなくなってしまう。企業では社長がまず方針を打ち出してから社員を動機づけするものだが、大学は事情が異なる」

--具体的な打開策は。

「まず、教授会が決議機関でないことを法律で明示すべきだ。学校教育法93条は『大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない』としている。これを削除し、『教授会は、教育、研究に関する学長の諮問機関とする』と明記すればよい。現在の条文にある『審議』は、ほとんどの大学で『決議』と解釈されている」

--学長の人事権はどう確保しますか。

「学部長選挙を廃止して、学長が各学部長を直接選び、任命できるようにすべきだ。もちろん、実際の選任では、各学部の意見を聞いてよいと思う。企業でも社長が事業部長を選ぶ際に、事業部のいろいろな意見を聞くのは普通だ」

内輪の論理先行

「学長の選び方も変えたほうがよい。教職員による選挙はやめるべきだ。国立大ではまず、国立大学法人法の改正が必要だ。大学の方針を決める経営協議会に占める外部有識者の割合を現状の『2分の1以上』から『過半数』に改めてほしい。現状では多くの大学で外部と内部委員が半々で、外部委員が一人でも欠席すると内部委員が多数派になってしまう」

「さらに、学長を選ぶ際の教職員の意向投票は廃止したほうがよい。外部有識者が過半数を占める学長選考会議で学長を選ぶ仕組みとし、内輪の論理が先行しにくいようにしなければならない」

--私大はどうですか。

「私大は有力大学も含めて、多くが教職員の選挙で学長を選んでおり、改めるべきだ。現状のままでは、改革は期待しにくい」

--予算をめぐる学長の権限も重要です。

「現状では学長が自らの裁量で動かせる予算はわずかしかない。大学に入る運営交付金などは使途などを限らず、大学に一括して渡すのが理想的だ。そのうえで、理事会や経営協議会の承認を経て、学長が柔軟に配分できるようにすべきだ」

「教員を適正に評価し、昇級や賞与などの処遇に反映する仕組みも大学の変革には重要だ。日本の大学では教員になった当初から終身雇用だが、米国では優れた研究者や教育者として評価されないとテニュアと呼ぶ終身の教授などになれない」

--法改正などによらず、大学側の意思でガバナンスを変えられませんか。

「やはり法改正の効果は大きい。教授会の存在が大学運営に支障をもたらしていることは1998年の大学審議会答申などでも指摘されていたが、多くの大学が変えられないままだ。教授会が自らの権限を縮小する決議はしにくい。国会議員が1票の格差を是正する選挙制度の抜本改革になかなか踏み切れないのと同じ構図だ」