2013年12月6日金曜日

生きるということ

ブログ「人の心に灯をともす」から「メリーゴーランド」(2013年12月3日)を抜粋してご紹介します。


結婚を控えた娘に

いよいよ来月、結婚するんやね。

おめでとう。

ジューン・ブライドに憧れていたはずやのに、きみは結局、お母さんの旅立った8月を、式の日に選びました。

あなたの母親であり、私の妻であった、我々の最愛の女性は、ある、小さな記事として新聞にも掲載された交通事故により、きみがまだ6歳の時に亡くなりました。

突然すぎて、悲しみ抜いて、途方に暮れて、精神的に参ってしまった私は、死のうとしたんです。

バカなことに、きみを連れてお母さんを追いかけようとした。

その日、最後の思い出にと、家族でよく出かけた遊園地に2人で行きました。

君は嬉しそうに、はしゃぎ回った。

いつも家族で乗ったメリーゴーランドにひとりで乗るきみを、私は精いっぱいの笑顔を作って、だけど力なく手を振って、きみが「お父さーん」と呼ぶ声に必死で答えていました。

とにかくきみは楽しそうで、これが最後の遊園地になることも知らずに、いや、今日が最後の日であることも知らずに、元気いっぱいに走っては、乗り物をハシゴしてた。

きみが楽しげであればあるほど心は痛んで、でも、心が痛めば傷むほど、必死で笑顔を作るようにしました。

やがて急流すべりを乗り終わって、こちらに駆けつけてきたきみは、満足げな表情で見上げつつ、私と手をつないで、ニコニコしながらこう言いました。

「もういいよ、お父さん。

もう、お母さんのところに行こ」

きみは気づいていたんやね。

きみを抱いたまま、ムリヤリ、父親の私がこの世を去ろうとしていたことを、なぜか知っていたんやね。

この言葉で、私はハッと目が覚めました。

私はこんなことを言った。

「あほ!

お母さんに怒られるぞ、ミサト!

いつか、お母さんがゴハン作って待ってるのに、迎えに来てくれたオマエと駅前の焼鳥屋に寄り道した時みたいに、『そんな勝手なことするんやったら、二人で出て行きなさい!』って、お母さんスネるぞ!

スネたらひつこいぞ~!」

こう言うときみは・・・、お葬式の日以来、お母さんのことでは全く泣かなかったミサトは、セキを切ったように大きな声で泣きだしたね。

24年前のあの日のことを、きみは憶えていないと言います。

でも、きみに子供が、そう、私とお母さんにとっての孫ができて成長したら、あの遊園地にみんなで行こう。

お母さんの分も入場券をちゃんと買って、みんなでメリーゴーランドに乗ろう。

そしてみんなで、思いっきり笑おな。

ミサト、本当におめでとう。


人にはときとして、到底乗り越えられないような悲しみがやってくることがある。

そんなときは・・・

思いっきり泣いたり、ぐちをこぼしたり、弱音を吐いたっていい。

悲しみの底まで落ちて、そして、それを乗り越えてきた人は、ひかり輝いて見える。