2014年5月30日金曜日

陰徳を積む

ブログ「人の心に灯をともす」から見えないお辞儀」(2014年05月22日)をご紹介します。


先日、訪問販売をしている女性がインターホン越しに一所懸命何かを説明しているのを道端で見かけました。

断られてしまったようで、インターホンを勢いよく切られる音が響いていました。

しかし、その女性はインターホンに向かってゆっくり深々とお辞儀をしたのです。

もちろん、その姿は相手には見えていません。

ただその姿に、時間をさいて聞いてくれた相手への感謝の気持ち、それと同時に彼女の仕事への誇りを私は感じました。

一瞬のしぐさに心を打たれた瞬間でした。

お辞儀は、言葉以上に心が伝わる「3秒でできる」最上級の気遣いかもしれません。

CAもお辞儀を大切にしています。

機内アナウンスの「ご搭乗ありがとうございます」に合わせて、その場でお辞儀のご挨拶を必ずします。

あるとき、後輩のMちゃんは、カーテンで仕切られた場所で担当の仕事をしていたのですが、そのアナウンスが流れたとき、しゃがんでいたのを立ち上がり、お客様がいるほうを向いてお辞儀をしました。

当時ほとんどのCAは、カーテンの中で仕事をしているときはお客様に見えないので、アナウンスに合わせてのお辞儀などはしていませんでした。

それだけに、誰も見ていないところでも深々とお辞儀をしているMちゃんに、私は衝撃を受けました。

その日の反省会では、このエピソードを共有し、これからはみんなで真似しようという話になりました。

そのお辞儀は、サービスをする立場の私たちの「心の襟」も正すことに繋がりました。

見えないといえば、電話応対なども相手には姿が見えない状態です。

しかし、電話の向こう側でどんな表情で話をしているのか、どんな姿勢なのかは、怖いほど想像できてしまうものです。

あるセミナーで、電話応対のロールプレイを背中合わせで行いました。

お辞儀をしながらお詫びをした場合と、そうでない場合をあててみようというゲームをやったのですが、驚くことに、ほとんどの人がその違いを聞き分けることができたのです。

見えないからこそ、お辞儀をしなければ本当の気持ちが声に乗って伝わらないのです。

お辞儀は、一瞬でできる動作でありながら、相手に思いを伝えるための必須動作でもあります。

相手に見える、見えないに関わらず、「お辞儀」をプラスしてみることで、あなたの思いが一段と相手に伝わるでしょう。


人に知られないようにするよい行い、あるいは見返りを求めない善行のことを、陰徳という。

反対に、誰も見ていないからと、道端にゴミや空き缶を捨てたり不正や悪行を重ねたりするなら、不運を引き寄せ、業(ごう)はますます深くなる。

人が見てるときは一所懸命やるが、いざ人が離れたときに手を抜く人は、自分を少しでもよく見せようとカッコをつける人。

しかし、見せかけの努力はすぐに見抜かれる。

例えば電話応対など、たとえ見えなくとも、きちっとお辞儀をしたり、礼儀正しくあろうとしている人は、誠実さが相手に伝わる。

それは陰徳を積むことにも似ている。

人に見える、見えないにかかわらず、「お辞儀」ができる人は素晴らしい。