2014年6月29日日曜日

改革努力に乏しく惰眠をむさぼってきた都議会

「社説:視点:幕引き都議会 惰眠の府が演じた醜態」(2014-06-27 毎日新聞)をご紹介します。


反省どころか隠蔽(いんぺい)に等しい。東京都議会の女性蔑視ヤジ問題は発言議員は懲罰を受けず、他のヤジの発言者も特定されないまま「再発防止決議」で議会が幕引きを図る事態となった。

首都の議会が演じた醜態は地方議会全体の問題でもある。だが、都議会が都道府県議会の中でもとりわけ改革努力に乏しく惰眠をむさぼってきた議会であることは指摘しておきたい。

人権侵害のヤジを制止するどころか、笑い声すら起きた議場そのままの決着だ。一部報道によると、発言を認めた鈴木章浩議員に議場での謝罪を求める動きに「人権侵害だ」と反対があったというのだからおそれいる。幕引きを急いだ都議会自民党を支えたのは数の力でうやむやにする発想だろう。

議会の自浄能力の欠如を象徴したのが、ヤジを受けた塩村文夏議員が地方自治法133条に基づき当初提出した発言者の処分を求める要求書を議長が受理しなかったことだ。「発言者が特定できない」ことが理由というが条文上、受理は可能だった。その後鈴木議員が発言を認めたが、今度は会議規則に「(懲罰動議は))事犯があった日から3日以内に提出」とあるため懲罰は封じこまれてしまった。

「首都の言論の府でさえこれでは……」とは多くの人が抱く印象だろう。だが、現実は都議会は全国的にみても改革が遅れた議会だ。早稲田大マニフェスト研究所が情報公開、住民参加などから毎年集計する地方議会の改革度で都議会は47都道府県中42位に過ぎない。

1990年度以降、議員提案で制定された政策に関する条例は二つだけだ。議会改革に向け、多くの地方議会が定める議会基本条例も未制定だ。つい最近も議員提案で四つの政策条例を可決した横浜市議会などと比べ、活動には雲泥の差がある。

「国会議員を目指しての腰掛け気分や、気位ばかり高い議員が多い」とある首長は手厳しい。首都・東京が待機児童対策や超高齢化への対応で立ち遅れてきたのは都議会の怠慢にも責任の一端があるのではないか。

都議会事務局はここ数日、抗議電話の対応に忙殺されている。だが、都議127人を昨年、過去2番目に低い投票率で選んだのは都民自身でもある。

鈴木議員が一転、発言を認めた要因はネットなどを通じた批判の広がりだろう。年間約1700万円の報酬に値する行動を議員に促すのであれば、住民が関心を持続する以外にない。住民の直接請求による議会解散、議員解職手続きも地方自治法にはちゃんと定められている。