2015年7月6日月曜日

変貌する国立大学の概算要求

第三期中期目標期間の始まりである来年度から、国立大学法人に対する運営費交付金の配分方式が大きく変更されます。

変更の考え方や大まかな内容は既に次のとおり公表されています。

第三期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方について(審議まとめ)(平成27年6月15日)ほか

また、文部科学省からは、各国立大学に対して、上記「審議まとめ」の翌日付で「平成28年度における国立大学法人運営費交付金概算要求における留意点等について」(平成27年6月16日付文部科学省国立大学法人支援課、学術機関課連名事務連絡)と題する通知が行われ、各国立大学は、この通知を参考に概算要求に向けた検討を進めるよう指示されています。

これまで、概算要求に関する具体的な情報提供も少なく、さらには、提出までの時間のない中での大作業が求められることもあり、関係者は多忙を極める夏になりそうです。

文部科学省からの通知の詳細について、ご紹介します。


平成28年度における国立大学法人運営費交付金の重点支援について

第3期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方については、「第3期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方に関する検討会」において「審議まとめ」が平成27年6月15日にとりまとめられた。

本通知は、「審議まとめ」を踏まえ、平成28年度概算要求における重点支援に向けた観点や留意点等について、あらかじめ示すものである。


Ⅰ 機能強化の方向性に応じた重点支援

<国立大学法人>

1 基本的な考え方

国立大学法人における教育研究活動は、それぞれの目標・理念や経営戦略に則り、中期目標及び中期計画に沿って、自主性・自律性を発揮しながら取り組むべきものである。その際には、中央教育審議会など国の各種政策提言を踏まえ、各大学において積極的に取組を進めるとともに、各大学が形成する強み・特色を踏まえた機能強化の方向性に沿った取組を更に進めていくことが求められる。

このため、各大学が国の各種政策との関連性・整合性も踏まえ、機能強化の方向性に沿った戦略を明確にした上で、学内資源の再配分を前提としつつ、機能強化に向けて行う取組に対して、次の観点から重点支援を行うこととする。

強み・特色を踏まえた機能強化に積極的に取り組む国立大学に対し運営費交付金を重点配分する仕組みを導入し、第3期中期目標期間における各国立大学の機能強化の方向性に応じた取組をきめ細かく支援するため、運営費交付金の中に次の三つの重点支援の枠組みを設ける。

各大学は、それぞれの機能強化の方向性や、第3期中期目標期間を通じて特に取り組む内容を踏まえ、自ら選択したいずれか一つの枠組みにより重点支援を受けることになるため、各大学のビジョンを策定し、ビジョンの実現に向けた具体的な改革の方針(「戦略」)、各「戦略」の達成状況を判断するための「評価指標」、「戦略」の実行に必要となる具体的な取組をとりまとめ、機能強化に沿った取組構想として概算要求するものとする。

【重点支援①】

主として、人材育成や地域課題を解決する取組などを通じて地域に貢献する取組とともに、専門分野の特性に配慮しつつ、強み・特色のある分野で世界ないし全国的な教育研究を推進する取組等を第3期の機能強化の中核とする国立大学を重点的に支援する。ここでいう「地域」の捉え方は、各国立大学の事情に応じて柔軟に設定することができるものとする。この枠組みについては、運営費交付金の重点支援の仕組みを通じて、人材育成や研究力の強化の取組を推進できるよう支援を行う。

【重点支援②】

主として、専門分野の特性に配慮しつつ、強み・特色のある分野で地域というより世界ないし全国的な教育研究を推進する取組等を第3期の機能強化の中核とする国立大学を重点的に支援する。この枠組みについては、当該分野に重点を置いた人材育成や研究力の強化の取組を推進できるような支援を行う。

【重点支援③】

主として、卓越した成果を創出している海外大学と伍して、全学的に世界で卓越した教育研究、社会実装を推進する取組を第3期の機能強化の中核とする国立大学を重点的に支援する。この支援の枠組みについては、国際レベルの競争的な環境下で、人材育成や研究力の強化の取組を推進できるような支援を行う。

各国立大学は、それぞれの機能強化の方向性や第3期を通じて重点的に取り組む内容について、全体のパッケージ(イメージ図参照)により機能強化の取組構想を提案するものとする。



なお、機能強化の方向性に応じて重点支援を受ける取組構想は、国立大学法人等として特に重視する取組であることから、その取組構想は、当然に中期目標・中期計画に記載され、また、中期計画に書き込まれるべき「検証することができる指標」は、重点支援を受ける取組構想の評価指標を踏まえて設定されることが想定される。

また、第3期中期目標・中期計画については、その素案を平成27年6月末までに文部科学省に提出することとされているが、概算要求の時期等を踏まえ、本取組構想にかかる中期目標・中期計画の素案の変更等については、弾力的な取扱いを行うものとする。

2 概算要求に当たっての留意点

各国立大学法人は、第3期中期目標・中期計画の素案の策定と併せて、各大学のビジョンと具体的な戦略を明確にした上で、学内資源の再配分を行うことを前提としつつ、三つの重点支援の枠組みに応じた取組構想を提案するとともに、取組を着実に実行することが必要である。

また、各大学が自ら選択した一つの枠組みに応じた取組構想の具体的な内容や工程等に加えて、その成果を検証するための測定可能な評価指標(KPI)等を設定し、各大学が自ら達成状況を確認・分析・改善できる体制を構築する。

これらを踏まえつつ、平成28年度概算要求に向けた各国立大学法人の取組構想の検討においては、次の点に留意することが必要である。

(1)概算要求の内容について

  • 要求においては、上記「1基本的な考え方」のイメージ図のとおり、重点支援を受ける枠組みに応じた取組構想を一つのパッケージとして整理し、「ビジョン」の実現に向けて「戦略」を設定し、戦略を実行する具体的な「取組」を盛り込むこと。
  • 経費としては、教育研究組織の再編成に必要な基盤的経費(基幹教員の人件費、物件費、設備費)、教育研究活動(関連する教育研究プロジェクトを含む)に必要な事業費や設備費とする。
  • 教育研究組織の再編成に当たっては、学内資源の再配分(振替等)を原則とし、新たに必要な経費については、新たに加える領域等に係る教員の配置に必要な経費など、既存組織からの財源捻出だけでは対応が困難な場合とすること。
  • 教育研究活動(関連する教育研究プロジェクトを含む。)の具体的な取組については、各大学が設定した戦略に必要な内容を厳選して盛り込むこと。
  • 平成27年度予算の特別経費(教育研究組織の再編成等を見据えた構想プロジェクトは除く。)として支援を受けている事業についても、各大学が自ら選択した三つの重点支援の枠組みとの関連性を整理した上で取組に含めて要求することも可能とする。
  • 連携・ネットワークに係る構想については、各国立大学法人の選択した重点支援の枠組みの違いに関わらず構築することができる。

(2)選定と配分方法

ア 基本的な考え方

  • 各大学から提案された取組構想については、有識者の意見を踏まえ、重点支援の対象とする取組構想を選定し、「機能強化促進係数(仮称)」による財源等を活用して、主として改革の取組構想に応じて加算して配分する。
  • 選定に当たっては、機能強化の方向性との適合性に加えて、取組構想の戦略性・発展性・実現可能性等とともに、意欲的な達成目標及び評価指標が設定されているかについて確認することを想定している。

イ 選定の観点

  • 取組構想全体が、各大学の現在有する又は今後形成される強みや特色を十分にいかしたものであるとともに、社会ニーズや人材需要、学問の進展を踏まえたものとなっているか。
  • 各大学の機能強化に向けたビジョンと戦略が明確に提示され、それを実現するための取組の目的、達成目標、工程が具体的かつ明確に設定されるとともに、取組構想の進捗及び達成状況を把握できるものとなっているか。この際、全体構想の評価指標、取組ごとの進捗状況を組み合わせることにより、総合的な評価を行うことが可能となっているか。
  • 教育研究活動の個々の取組が、ビジョンの実現に向けた戦略を実行するための手段として体系的に整理されているか。また、その内容が総花的になっていないか。
  • 各大学の機能強化に向けたビジョンに基づき、学長のリーダーシップの下で限られた教育研究資源を有効に活用し、取組構想の実現に向けた教育研究組織の再編成や見直し、学内資源(予算、人材や施設・スペース等)の再配分が行われているか。
  • 各大学の財政基盤の確立や財源の多元化を図るため、自己収入を増加させるための工夫が積極的に含まれているか。

(3)評価の方法及び評価指標の設定

ア 評価の方法

  • 平成28年度においては、重点支援ごとに設定する支援の観点を重視した評価を行うことを想定している。
  • 評価においては、取組構想を全体として確認することとする。
  • なお、平成29年度以降については、原則として、年度ごとに取組構想の進捗の状況を確認するとともに、あらかじめ設定した評価指標等を用いて、その向上の度合いに応じて段階的な評価を実施し、予算配分における重点支援に反映するものとする。

イ 評価指標について

  • 評価指標については、各国立大学法人の取組構想の多様性に配慮し、各国立大学法人が、取組構想の内容に応じて、中期目標期間を見通した取組の成果を検証するため、原則として測定可能な評価指標(KPI)等を独自で設定するとともに、支援の観点ごとに3に示す指標から関連する指標を設定するものとする。
  • また、各国立大学法人が設定する指標は、各国立大学の規模や専門分野の特性を踏まえる観点から、教員一人当たりの状況等や学部・研究科等の単位で評価を行うことができることとする。
  • なお、文部科学省が提示する評価指標については、今後追加する可能性がある。

3 重点支援の枠組みごとの観点及び留意点

(1)重点支援①

重点支援①は、次に示す支援の観点等を踏まえつつ、機能強化の取組構想を提案するものとする。

ア 支援の観点について

○全学的かつ組織的な体制の下で、社会的なニーズ(地域の発展、グローバル化、社会人の学び直し、地域の産業構造への対応など)を捉えた人材育成に取り組むもの。
(例)
・社会ニーズを踏まえた教育研究組織の再編成
・教育カリキュラムの刷新や学位プログラムの構築
・地域フィールドの実践型実習やアクティブラーニングの強化
・社会的要請の強い分野における社会人向け教育コースの構築(「職業実践力育成プログラム」認定制度を活用した取組を含む。)

○地域の政策課題の解決に向けた活動に取り組み、産学官の連携の強化、新しい産業の創出や雇用の拡大、地場産業の振興及び行政の支援等に取り組むもの。
(例)
・産学官の連携による教育研究運営組織の形成
・企業等との共同研究プロジェクトの実施・中長期のインターンシップの充実

○大学等間ネットワークを強化し、ネットワークの中核的役割を担い、教育研究力の強化や事務体制の効率化に取り組むもの。
(例)
・各国立大学の枠組みを越えた教育研究プロジェクトの実施
・地域内における高等学校等との連携強化(高大接続)
・共通的な業務・事務等の共同実施

○強み・特色のある分野において体系的な教育研究体制を構築し、地域も含め国内外で広く活躍できる人材の育成に取り組むもの。
(例)
・当該分野の強化に向けた教育研究組織の再編成
・当該分野におけるモデルコアカリキュラムの構築
・当該分野における産学官連携体制の強化と共同プロジェクトの実施

○強み・特色のある分野を更に伸長する新興・融合分野の形成に取り組むもの。
(例)
・新たに形成される振興・融合分野の教育研究組織の設置
・研究領域の異なる学際的な研究者ユニットの形成
・特色ある海外大学等との連携を通じた国際共同研究の実施

○強み・特色のある分野における国内外の大学等間共同利用・共同研究やネットワーク構築による拠点機能の強化に取り組むもの。
(例)
・国内外の大学等との共同研究や共同教育プログラムの実施
・研究者や学生の派遣・受入れに伴う流動性の強化

イ 選定に当たっての留意点について

  • 地域の活性化や持続的な発展に資するため、地域とのネットワーク形成や連携協力体制が十分に構築されているか。
  • 地域の期待に応え、貢献していくための方策が明確であり、教育研究活動に地域の声を反映する仕組みが整備されているか(外部委員会の設置や地方自治体の意見を聴取するなどにより、広くステークホルダーのニーズを取り入れる機会を設けるよう配慮する。)。
  • 強み・特色のある分野の教育研究における取組の卓越性や、世界的・全国的なネットワークの中核的な機能が、これまでの実績や今後の将来性に鑑みて十分に発揮できるような取組になっているか。また、当該分野の強化等と併せて他分野の見直し等が検討されているか。

ウ 評価指標について

文部科学省が提示する指標については、次のとおりとする。

○「人材育成」に関する取組の指標
・学生の就職状況(教員採用も含む(教員養成学部の場合))や就職先での評価の状況

○「地域活性化」に関する取組の指標
・共同研究・受託研究の実施状況

○「地域の政策課題の解決」に関する取組の指標
・地域との対話の場の設定や協定等による取組の実施状況

○「強み特色のある分野の研究の卓越性」に関する取組(ベンチマークの設定に当たっては、分野の特性を考慮する。)
・論文(「著書等」を含む。以下同じ。)数
・論文の被引用数の状況
・研究成果に基づく受賞状況(学術賞、学会賞、芸術・文化賞、出版賞等)

○「優れた教育研究を実施するための教職員体制の整備」に関する取組の指標
・国際通用性を見据えた人事評価制度の導入、評価結果を処遇に反映する取組の実施状況

○「連携・ネットワークの構築」に関する取組の指標
・大学・大学共同利用機関等との機能的・効果的なネットワークの状況

(2)重点支援②

重点支援②は、次に示す支援の観点等を踏まえつつ、機能強化の取組構想を提案するものとする。

ア 支援の観点について

○強み・特色のある分野において体系的な教育研究体制を構築し、国内外で広く活躍できる人材の育成に取り組むもの。
(例)
・当該分野の強化に向けた教育研究組織の再編成
・当該分野におけるモデルコアカリキュラムの構築
・当該分野における産学官連携体制の強化と共同プロジェクトの実施
・当該分野における国内外の大学等との連携を通じた教育研究体制の構築

○強み・特色のある分野を更に伸長し、独自性のある新興・融合分野の形成に取り組むもの。
(例)
・新たに形成される振興・融合分野の教育研究組織の設置
・研究領域の異なる学際的な研究者ユニットの形成
・特色ある海外大学等との連携を通じた国際共同研究の実施

○強み・特色のある分野における国内外の大学等間共同利用・共同研究やネットワーク構築による拠点機能の強化に取り組むもの。
(例)
・国内外の大学等との共同研究や共同教育プログラムの実施
・研究者や学生の派遣・受入れに伴う流動性の強化

○強み・特色のある分野において社会的・政策的要請に基づく研究の推進、人材の育成に取り組むもの。
(例)
・当該分野における政府関係機関等との連携体制の強化と共同プロジェクトの実施
・国内外の大学等との共同研究や共同教育プログラムの実施

イ 選定に当たってのの留意点について

  • 強み・特色のある分野の教育研究における取組の卓越性や、世界的・全国的なネットワークの中核的な機能が、これまでの実績や今後の将来性に鑑みて十分に発揮できるような取組になっているか。
  • 強み・特色のある分野における我が国の国際的な存在感を高めるための方策が明確になっているか。

ウ 評価指標について

文部科学省が提示する指標については次のとおりとする。

○「人材育成」に関する取組の指標
・教育目的に合った就職先の状況、就職先での評価の状況

○「当該分野の研究の卓越性」に関する取組の指標(ベンチマークの設定に当たっては、分野の特性を考慮する。)
・論文数・論文の被引用数の状況
・研究成果に基づく受賞状況(学術賞、学会賞、芸術・文化賞、出版賞等)

○「国際的な存在感を高める研究」に関する取組の指標
・国際共著論文の状況
・外国の大学や研究機関等との共同・受託研究の状況
・外国人留学生の状況

○「当該分野において優れた教育研究を実施するための教職員体制の整備」に関する取組の指標
・国際通用性を見据えた人事評価制度の導入、評価結果を処遇に反映する取組の実施状況

○「政策的要請に基づく研究の推進」に関する取組の指標
・各府省、国際機関からの研究委託に基づく政策提言、政策データ作成の状況

○「連携・ネットワークの構築」に関する取組の指標
・大学・大学共同利用機関等との機能的・効果的なネットワークの状況

(3)重点支援③

重点支援③は、次に示す支援の観点等を踏まえつつ、機能強化の取組構想を提案するものとする。

ア 支援の観点について

○国際的な教育研究システムを全学的に導入することにより、国際通用性のある人材の育成に取り組むもの。
(例)
・世界トップレベルの海外大学とのチューニング
・授業科目の抜本的な見直しによる教育カリキュラムの高度化
・英語のみで卒業・修了可能な教育プログラムの充実

○学術研究を推進するため、大学院を中心とした高度専門職業人や研究者の養成の機能強化に取り組むもの。
(例)
・学部及び大学院の再編成に伴う大学院の教育研究体制の強化
・学部から大学院までを通じた教育カリキュラムの構築
・研究指導体制の強化、産学官連携を通じた研究体制の構築

○我が国の強みである研究分野の更なる強化と新たな強みとなる新領域・融合分野の形成に取り組むもの。
(例)
・分野・領域に着目した全学的かつ戦略的な研究マネジメントの確立
・強みとなる研究領域の強化に向けた大学に設置する研究所及びセンターの再編成
・基礎から社会実装を見据えた共同研究の実施
・新たな産業創出への貢献、ベンチャー支援

○世界トップレベルの海外大学等とのネットワークを構築し、国際競争力の強化に取り組むもの。
(例)
・海外大学とのジョイントディグリーの構築
・世界トップレベルの研究ユニットとの国際共同研究の実施
・教員の業績評価に連動した年俸制拡大など人事給与システムの改革
・国内の大学との相乗効果のある連携体制の構築

イ 選定に当たっての留意点について

  • 全学的な教育研究活動において、世界での卓越性や国際性が十分に期待できるものとなっているか。
  • 研究に特に強みのある大学として大学院の高度化に向けた方策が明確であり、大学全体として教育研究組織の再編や規模等の見直しが計画されているか。
  • 年俸制の拡大などの人事給与システム改革も活用しつつ、若手研究者や大学院生の国内外を通じた流動性が十分に期待できるものとなっているか。

ウ 評価指標について

文部科学省が提示する指標については次のとおりとする。

○「全国的な国際レベルの人材育成」に関する取組の指標
・外国人留学生や外国の大学との交流状況
・教員に占める特別研究員(PD、SPD)・海外特別研究員等の優れた実績を持つ者の採用状況

○「世界最高水準の研究」に関する取組の指標(ベンチマークの設定に当たっては、分野の特性を考慮する。)
・論文数・論文の被引用数や質の高い論文の状況
・一定金額以上の共同研究・受託研究の実施状況
・共同利用・共同研究や国内ネットワークを通じた全国的な研究レベルの向上に対する寄与の状況

○「国際的な存在感を高める研究」に関する取組の指標(ベンチマークの設定に当たっては、分野の特性を考慮する。)
・国際共著論文の状況
・国際学会での基調講演・招待講演や国際シンポジウム等の開催状況
・外国の大学や研究機関等との共同・受託研究の状況

○「研究成果の社会実装」に関する取組の指標
・知的財産の実用化や企業等との特許の共同出願状況

○「世界最高水準の教育研究を実施するための教職員体制の整備」に関する取組の指標
・国際通用性を見据えた人事評価制度の導入、評価結果を処遇に反映する取組の実施状況

○「連携・ネットワークの構築」に関する取組の指標
・国内外の大学等との人材交流・共同研究のハブとなる連携の実施状況


Ⅱ 高等教育に関する政策課題のうち国立大学に共通する課題等に関する重点支援

1 重点支援の観点について

各国立大学法人における教育研究活動は、各法人の個性や特色に応じて意欲的かつ重点的に取り組まれるものであるが、同時に、社会経済の変化や学術研究の進展等を踏まえた我が国の高等教育政策、学術政策の推進の観点からも、その中核を担う重要な活動である。そのため、平成28年度概算要求においては、次の(1)から(6)までに掲げる事業について必要な支援を行う。

その際、中期目標・中期計画や国の各種政策との関連性・整合性も勘案した上で、各法人の自助努力を求めつつ、支援を行う。

(1)入学者選抜改革の実現に向けた取組の支援

学力の三要素(「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協働性」)を多面的・総合的に評価する入学者選抜への転換・充実に向けた取組を支援

(2)大学間の連携・協力に基づく取組の支援

文部科学大臣が認定する「共同利用・共同研究拠点」及び「教育関係共同利用拠点」で実施される大学全体の機能強化に貢献する教育・研究の取組を支援

(3)教育・研究・診療基盤設備の老朽化対応への支援

各法人が保有する教育・研究・診療用の基盤的な設備の更新等を支援

(4)教育研究設備の共同利用化等への支援

設備サポートセンターを整備し、教育研究設備の共同利用化や設備の再利用等を一層促進し、全国的な観点でモデルとなるような新たな仕組みによる取組を支援

(5)学術資料の保存等への支援

図書館や史料館などが保存する全国的な教育・研究活動に資する文化的・学術的に貴重な資料の保存・修復の取組等を支援

(6)附属病院の機能強化の取組等への支援

地域医療における高度医療拠点としての教育・研究・診療機能の強化、地域医療を担う医療人の養成や卒後臨床研修センターの体制整備など医師不足対策への積極的な取組、先進医療技術の開発や治験等の教育研究環境の整備、医師や看護師の過剰な勤務環境の改善、医学生等に対する教育指導体制の充実の取組等を支援

※(1)~(5)については、各大学からの提案に基づき、支援を実施する。

2 選定に当たっての留意点について

(1)共通する留意点

①事業区分との適合性等

  • 事業区分に対応した取組として具体的かつ明確に事業内容が設定され、社会ニーズや学問の進展を踏まえたものとなっているか。
  • 事業内容が中期目標及び中期計画の記載事項と整合性が図られ、具体的に関連のあるものとなっているか。

②実現可能性等

  • 事業の目的、目標が具体的かつ明確に設定されるとともに、取組の成果を検証するため、測定可能な評価指標(KPI)等が設定されているか(「教育・研究・診療基盤設備の老朽化対応への支援」、「附属病院の機能強化の取組等への支援」は除く)。また、取組は実現可能な内容となっているか。
  • 組織、経費、実施体制等について、事業の推進にふさわしい計画となっているか。
  • 事業を確実に実現するため、学内外の協力体制の構築等の具体的な工夫は行われているか。
  • 他大学等の諸機関との連携により推進する事業については、i)連携先との調整や役割分担の明確化が図られ、連携による事業効果が期待できるものとなっているか、ii)それぞれが分担する経費の内容が明確になっているか、iii)法人の主体性が確保されているか。

③社会的効果等

  • 事業成果の具体的な活用方法や、事業成果による波及効果が十分に期待できるものとなっているか。
  • 事業が教育研究活動の改善をもたらすものとなっているか。

(2)各事業区分ごとの留意点

①入学者選抜改革分

  • 多様な評価方法(小論文、面接、集団討論、プレゼンテーション、調査書その他の資料の活用など)を組み合わせて、学力の三要素(「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」、「主体性・多様性・協働性」)を多面的・総合的に評価する入学者選抜の拡大・充実や、適切な評価手法を開発するものとなっているか。
  • アドミッション・オフィスの整備・強化など、多面的・総合的な入学者選抜を推進するための入学者選抜実施体制の充実を伴うものであるか。
  • 入学者の追跡調査等による選抜方法の妥当性の検証・改善など、入学者選抜に関する企画・立案機能を強化するものとなっているか。

②全国共同利用・共同実施分

【共同利用・共同研究拠点の強化】

  • 研究の卓越性を有するとともに、共同利用・共同研究機能を向上させる仕組みを有しているか。
  • 組織や人材の流動性を高める内容となっているか。
  • 上記を前提としつつ、大学全体の機能強化に資するとともに我が国における研究のモデルとなるような取組を、以下の方向性により重点支援する。

1)卓越した成果を創出している国内外の研究機関等と連携して、国際的に顕著な成果を創出するための活動
(例)
・国際的な枠組みでの大型プロジェクトの推進
・国際的に強み・特色を発揮できる取組等

2)組織・機関間で効果的なネットワークを形成し、新たな学問分野の創成やイノベーションの創出に資する活動
(例)
・大学共同利用機関や研究開発用法人、産業界等との連携
・ネットワーク型拠点の形成を見据えた拠点間の連携等

3)国内外の研究組織と連携して、特定分野の研究環境基盤の構築・強化に資する活動
(例)
・学術資料・データベース等の我が国全体を見据えた基盤構築・強化
・研究や研究基盤を支える人材育成等のための新たな仕組みの構築等
・なお、科学技術・学術審議会における第3期中期目標期間の共同利用・共同研究拠点の認定に係る審議の内容を踏まえ、拠点の認定に伴う支援を行うこととする。

【新たな共同利用・共同研究体制の充実】

将来的に共同利用・共同研究拠点となり得るような先端的かつ特色ある研究を推進する研究所等の形成・強化に資する取組について重点支援の対象とする。
(例)

  • 共同利用・共同研究拠点を目指す研究所等の機能強化に資する取組の強化
  • 国際的研究水準や連携体制のもとで国際的なハブとして活動を推進する研究拠点の形成・強化
  • 新たな学問分野の創成に資する全学的な研究組織の形成
  • 研究の卓越性は高いが組織レベルでの研究体制については強化を要する学問分野の研究体制の構築等
  • なお、本支援の対象は、全国的なモデルとなる研究システムの構築を前提として、全学的研究施設(研究所・研究センター)における取組(※全学的な研究施設の形成を含む)とする。

③教育関係共同実施分

教育関係共同利用拠点における教育活動は、拠点としての機能発揮を存分に期待できるものであり、かつ、利用する全ての大学の教育の改善に資するものであるか。

④基盤的設備等整備分

設備マスタープランにおいて現有設備の状況を分析し、更新等が予定される設備の範囲を把握するとともに、継続的に設備整備に充てる学内資源の額等を明示しているか。

⑤設備サポートセンター整備分

  • 設備マネジメントに係る独立した組織(設備サポートセンター)を設置し、マネジメントスタッフのほか、コーディネーターや技術職員など事業の推進体制の充実を図り、全学的な活動を推進する内容となっているか。
  • 自大学のみならず、共同利用の学外展開や、近隣大学等との共同利用ネットワーク体制を構築する等、共同利用体制の推進に資するものであり、かつ、全国的なモデルとなるものであるか。

⑥文化的・学術的な資料等の保存等

特別な価値を有する文化的・学術的な資料等の保存、収集、修復であり、全国的な研究活動に資するものとなっているか。