2016年2月19日金曜日

大学は我が国の学術政策にどう向き合うか

文部科学省の科学技術・学術審議会が平成27年1月に取りまとめた「学術研究の総合的な推進方策について(最終報告)」(以下「最終報告」に略)に関するフォローアップの結果(科学技術・学術審議学術分科会(第61回、平成28年2月1日開催)資料3-1「学術研究の総合的な推進方策について(最終報告)」のフォローアップについて(案))が公表されていました。

この資料では、最終報告で示された具体的な改革方策ごとの取組状況が説明されています。いずれも国(文部科学省)が推進する施策ではありますが、大学においても重視しなければならないものです。

このたび公表された資料を読むだけでは、最終報告との関係がややわかりにくかったので、最終報告に示された内容と、この資料に記載された取組状況を対比させる形で再整理(加工)してみました。項目によって取組状況の記載に多少濃淡があり、説明が十分に尽くされていないように思える部分もありましたが、国が重視する政策とその実施状況を概ね理解することができます。

大学(特に国立大学)においては、このような資料が公表された折に、国の政策課題に照らした自大学の取り組みを改めて検証してみることも必要なのかもしれませんね。少し長くなりますがご辛抱ください。



「学術研究の総合的な推進方策について(最終報告)」における具体的な取組検討状況について(案)【加工版】

第8期学術分科会における主な検討課題について

第59回学術分科会(平成27年3月10日)資料4(以下注)において、今期学術分科会の主な検討課題の1つとして「学術研究の総合的な推進方策について(最終報告)」のフォローアップが掲げられており、以下、最終報告(5.(2)具体的な取組の方向性)の各項目における現在の取組状況等を取りまとめている。

(注)第8期学術分科会における主な検討課題について(例)【抄】

第7期で取りまとめた「学術研究の総合的な推進方策について(最終報告)」を踏まえ、
1)学術研究の現代的要請である「挑戦性、総合性、融合性、国際性」に着目した、思い切った資源配分の見直し、2)学術政策・大学政策・科学技術政策の連携、3)若手人材育成・教養形成、4)社会との連携強化といった改革のための基本的考え方を踏まえ、
①デュアルサポートシステムの再生(基盤的経費の意義の最大化、科研費大幅改革等)、②若手研究者の育成・活躍促進、③女性研究者の活躍促進、④研究推進に係る人材の充実・育成、⑤国際的な学術研究ネットワーク活動の促進、⑥共同利用・共同研究体制の改革・強化等、⑦学術情報基盤の充実等、⑧人文学・社会科学の振興、⑨学術界のコミットメント
等の具体的な取組が進むよう定期的にフォローアップを行い、改革の実効性を高めることが必要


各項目における具体的な取組状況について

1 デュアルサポートシステムの再生

(1)学術政策、大学政策、科学技術政策の連携

<最終報告>
  • デュアルサポートシステムについては、以下のような観点から、学術政策、大学政策、科学技術政策が連携して再生に取り組むことが必要である。
<取組状況>


(2)運営費交付金等の基盤的経費の確保・充実

<最終報告>
  • 運営費交付金等の基盤的経費については、以下のような大学の取組を前提として、また、その取組の実践とあいまって、国がその確保・充実に努める必要がある。
<取組状況>
  • 平成28年度予算案において、国立大学法人運営費交付金1兆945億円(前年同)、私立大学等経常費補助3,153 億円(前年同)を計上


(3)人事・給与システム改革、研究支援体制の強化・大学事務局改革、施設設備や図書・史料等の機関内外での共同利用・共同研究の推進等、各大学での改革を行うための学内外の資源の再配分や共有の実施

<最終報告>
  • 大学においては、IR(インスティトゥーショナル・リサーチ)機能の強化等を図り、明確なビジョンや戦略を立て、自らの役割を明確にした上で、当該戦略等を踏まえて基盤的経費を配分することにより、その意義を最大化すべきである。例えば、①優秀な大学の教員が公的研究機関等のポストを兼ねたり異動したりするなど組織を越えて卓越した教育研究を担うとともに、若手研究者が安定した環境で優れた研究活動を行うことができるような人事・給与システムの改革、②リサーチ・アドミニストレーターや国際担当職員など専門人材の積極登用や大学職員全体の質の向上、教員と職員の協働の推進など、研究支援体制の強化や大学事務局改革、③個々の研究者の独創的な個性と組織としての大学の戦略を両立させる強靭なガバナンスの確立と教育研究組織の最適化、④組織の枠を越えた研究者の知の融合を促進するとともに、限られた人材・資源の効果的・効率的な活用を図るため、施設・設備や図書・史料等の機関内外での共同利用・共同研究の一層の推進、⑤多様な教育研究活動の場となるキャンパスや施設について、知的交流を促進するよう快適で豊かなものにするための取組、などのために、学内外の資源の再配分や共有を行うことが求められる。なお、国立大学については、既に進展している「国立大学改革プラン」を着実に実行することが必要である。
<取組状況>
  • 各国立大学においては、「国立大学改革プラン」等に基づき、各大学の強み・特色・社会的役割を踏まえた機能の強化や、ガバナンス機能の強化、人事・給与システム改革などに積極的に取り組んでおり、平成28年度以降の第3期中期目標期間に向けて、「国立大学経営力戦略」も踏まえ、改革の取組を更に推進。また、「日本再興戦略」改訂2015(平成27年6月30日)に盛り込まれた特定研究大学(仮称)制度については、有識者会議において制度の方向性を検討し、その審議まとめを公表(平成28年1月13日)


(4)科研費改革の実施方針・工程及び具体的な改革案の検討

<最終報告>
  • 研究者の知的創造力を踏まえた全ての分野における多様な学術研究を支援する我が国最大かつ唯一の競争的資金である科研費は、これまでも大きな成果を上げている。平成26年度では、全国の大学、公的研究機関、企業等の研究者27万人の中から応募があった10万件を審査して学術的な水準の高い2.7万件を採択(すなわち、新規採択されるのは申請資格者のうち9.6%)するなど、全ての研究活動の基盤となる学術研究を幅広く支えることにより、科学の発展に種をまき芽を育てる上で、大きな役割を果たしている。
  • 本分科会の審議等を踏まえ、大学改革と科研費の関係や研究費制度全体の在り方も総合的に議論するため、研究費部会において、科研費をめぐる国内外の政策的動向や研究現場からの意見を踏まえて科研費の課題を整理した上で、科研費改革の基本的な考え方と具体的な改革方策等について一定の方向性を取りまとめた。
  • 科研費改革に当たっては、1)専門家による審査(ピアレビュー)、2)あらゆる学問分野について研究者に対して等しく開かれた競争的資金制度、3)研究者が自らの発想と構想に基づいて継続的に研究を進めることができる競争的資金制度、4)研究費としての使いやすさの改善を不断に図ることの四点を堅持しつつ、世界各国の政府や大学が共通した課題に直面しているなどの国際的動向及び審査の改善・科研費活用の観点からの研究現場の意見・指摘等を踏まえて、①分科細目表の見直しや大括り化、スタディ・セクション方式やプレスクリーニングの導入等の審査方式の再構築、種目の再整理等の科研費の基本的な構造の見直し・重複制限の見直しや海外在住研究者の帰国前予約採択の導入等の優秀な研究者が自らのアイディアや構想に基づいて継続的に学術研究を推進できるような見直し、②学際・融合分野研究ネットワークの中での研究者交流と実力ある若手研究者の国際共同研究や国際ネットワーク形成の推進、③研究費の成果を最大化するための「学術研究助成基金」の充実、④科研費の研究成果の一層の可視化と活用のための科研費成果等を含むデータベースの構築、などを進めることが必要であり、今後、具体的な改革案及び工程を検討することが求められる。
<取組状況>
  • 研究費部会において科研費の抜本的改革に向けた審議を実施。「我が国の学術研究の振興と科研費改革について(第7期研究費部会における審議の報告)(中間まとめ)」(平成26年8月)に基づき、平成27年度より、「国際共同研究加速基金」の創設による国際共同研究や海外ネットワーク形成の促進、「特設分野研究基金」の創設による新しい審査方式の先導的試行の充実等の改革に着手。
  • 第8期研究費部会においては、第5期科学技術基本計画の計画期間(平成28~32年度)を展望した科研費改革の実施方針(工程表を含む)について審議し、学術分科会にて了承。平成28 年度中に、研究費部会の審議を踏まえて科研費改革を加速するため、新たな学問領域の創成や異分野融合などにつながる挑戦的な研究を促進することとし、大胆な挑戦的研究を見出すためのプログラムについて公募・審査を開始する予定。加えて、審査システムの抜本的な改革として、分科細目(審査区分)の大括り化を含め、新たな審査の仕組みを平成30年度に導入するための検討を進めており、平成28年4月にはパブリックコメントに付した上、年内をめどに見直し内容を決定する予定。また、研究種目・枠組みの見直しについても平成30年度に向け、順次検討を進める予定。


(5)科研費以外の競争的資金における改革の検討

<最終報告>
  • 科研費以外の競争的資金については、それぞれ目的や役割は異なるが、大学関係者や社会からの指摘等を踏まえつつ、上記(1)で示した基本的な考え方を一つの横串として位置づけて改善を図ることが、結果としてはそれぞれの競争的資金の目的の最大化につながるという観点から、総合科学技術・イノベーション会議において政府全体の立場でその改革について議論する必要がある。
  • 例えば、戦略研究や要請研究は、学術研究とは推進方策が異なるが、それぞれの資金の趣旨・目的を踏まえた透明性の高いプログラムの設計と評価を行うことが重要である。また、それらの研究を行うためには、長期的な観点からは、学術研究の蓄積や若手人材の育成が基盤として不可欠であることを踏まえつつ、それぞれの役割分担を明確にした上で相互の連携を図るなど、バランスの取れた振興施策を講じることが必要である。その際、効果的な連携を行う観点から、サイエンスマップや科研費の研究成果等に係るデータベースの充実・活用などにより、国民の理解を得られるよう客観的根拠に基づいた上で、戦略的に研究を推進することが求められる。
<取組状況>
  • 第5期科学技術基本計画を踏まえ、研究力及び研究成果の最大化、一層効果的・効率的な資金の活用に向け、今後、国は、競争的資金以外の研究資金について、間接経費の導入、使用方針及び実績等について公表を促すための方策、使い勝手の改善等の実施について、内閣府を中心とした関係府省間で検討を進める。
  • なお、文部科学省においては、イノベーション指向の戦略的な基礎研究を推進する「戦略的創造研究推進事業」の更なる改革・強化に向け、サイエンスマップや科研費の研究成果等に係るデータベース等を活用し、優れた成果をより着実に戦略目標の策定プロセスに反映させる仕組みを整備。


(6)間接経費の確保・充実等

<最終報告>
  • 競争的資金により研究を行う場合には、研究実施に伴い大学全体の観点からの管理費用等が必要となるため、間接経費が不可欠である。間接経費は、採択された研究者の研究環境の改善に資するとともに、全学的な研究環境の整備をはじめ研究成果の社会還元の推進や独創的な研究の推進等、各大学の戦略に基づいた取組を加速させるものである。今後とも、競争的資金の拡充を図る中で間接経費を確保・充実するとともに、大学においては使途の弾力化など、より一層効果的に活用することが必要である。
<取組状況>


2 若手研究者の育成・活躍促進

(1)自ら主体的に課題を設定して挑戦的な研究に取り組む若手研究者の育成

<最終報告>
  • 学術研究が将来にわたり持続的に社会における役割を発揮するためには、次代を担う若手研究者の育成がとりわけ重要である。本質的に重要と本人が考えるテーマを、いかなる困難があっても乗り越えようとする能力が学術研究の将来を担うリーダーには欠かせない。若手研究者が単なる労働力として与えられた課題をこなすのではなく、自ら主体的に課題を設定して挑戦的な研究に取り組むことがリーダーを育てるために極めて重要である。
<取組状況>
  • 優秀な若手研究者に対する自由で主体的な研究機会を提供するための「特別研究員事業」を実施するとともに、優れた若手研究者が安定した研究環境の下で挑戦的な研究を自立的に推進するための「卓越研究員制度」の創設し、平成28年度から運用を開始するための予算を新たに計上


(2)若手研究者を育てる意識を共有し、大学における自立した研究に必要な環境(設備、スペース、資金等)の整備やシニア研究者による若手研究者の支援などのサポート体制の構築、若手研究者の研究費マネジメント能力の涵養(研修機会や事務支援体制の確保・充実

<最終報告>
  • 学術界全体が若手研究者を育てる意識を共有し、大学における自立した研究に必要な環境(設備、スペース、資金等)の整備やシニア研究者による若手研究者の支援など、自立を促しつつも適切にサポートする体制を構築することが必要である。例えば、競争的資金による任期付き雇用と、任期終了後の基盤的経費や間接経費による雇用を柔軟に組み合わせることにより、一定の育成効果の得られる期間、安定的に雇用する仕組みなどを検討すべきである。
  • なお、若手研究者の自立のためには、研究費のマネジメント能力を涵養することも必要であり、若手研究者に配分される競争的資金はそのような経験を得る意味でも重要な役割を有している。その際、若手研究者が研究費のマネジメントに不慣れである可能性を考慮した研修機会や事務支援体制の確保・充実が併せて必要である。
<取組状況>
  • 上記の「卓越研究員制度」等を活用し、若手研究者が自立して研究活動に取り組む環境の整備を推進(再掲)


(3)若手研究者による国際的な研究者ネットワークの形成や国内外における国際シンポジウム等の企画や中心メンバーとしての参画についての積極的な促進

<最終報告>
  • 若手研究者の国際性を高めることは学術研究の水準向上のみならず、大学の人材育成面も含めた国際化に貢献するものである。特に、国際社会における我が国の存在感の維持・向上のためには、若手研究者が将来的に国際的な学術コミュニティーにおいてリーダーシップを発揮することが肝要である。そのため、若手研究者による国際的な研究者ネットワークの形成や国内外における国際シンポジウム等の企画や中心メンバーとしての参画を積極的に促進することが必要である。したがって、科研費等による研究活動の支援に当たっては、このような観点が必要である。また、海外特別研究員制度など若手研究者の海外渡航を促進する経済的支援を拡充するとともに、そうした観点を踏まえ、事業を遂行することが必要である。
<取組状況>
  • 「海外特別研究員事業」において、優れた若手研究者を海外の大学等研究機関において長期間研究に専念できるよう支援するとともに、新進気鋭の若手研究者にトップレベルの国際経験を積む機会を提供することで、次世代のリーダーとなる若手研究者の育成や国際的研究者ネットワークの拡大・強化を図るための「若手研究者研鑽シンポジウム事業」を実施


(4)シニア研究者を含めた全国規模での人材の流動化や若手研究者の安定的なポストの確保

<最終報告>
  • 若手研究者が安定的な環境の下で研究に専念するためには、シニア研究者を含めた全国規模での人材の流動化を図りつつ、若手研究者の安定的なポストを確保することが必要である。そのため、各大学の戦略等に基づき、例えば、シニア研究者を年俸制雇用へと切り替えることで特定のポストから異動しやすくすることにより、若手研究者をテニュアポスト等で雇用しやすくするような仕組みを構築するなど、様々な工夫により、雇用機会を増やすよう大学の人事・組織の在り方を見直すとともに、客観的で透明性の高い審査による能力・業績評価に基づき、優秀な若手研究者を積極的に登用するなど、適切な処遇を講じることが必要である。
<取組状況>
  • 上記の「卓越研究員制度」等を活用し、流動化の向上や安定的ポストの確保を推進(再掲)


(5)国による特別研究員などのフェローシップの拡充、大学による基盤的経費や競争的資金からのRA経費などの経済的支援の充実

<最終報告>
  •  ポストドクター等の数は約1万4,000人であり、我が国の研究活動の実質的な担い手となっているが、多様なキャリアパスの確立はいまだ不十分である。また、改正研究開発力強化法及び大学教員任期法において、大学の研究者などが労働契約法の特例の対象となり、無期労働契約に転換するまでの期間が10年に延長されたが、改正法の附帯決議等も踏まえ、研究者等の育成や雇用の安定を更に図っていく必要がある。
<取組状況>
  • 平成28年度予算案において上記「特別研究員事業」等を計上(再掲)


(6)博士課程の人材に対する異分野に携わる機会の提供や異業種との交流を通じた教育の実施

<最終報告>
  • 意欲と能力のある博士課程の学生やポストドクターが、経済的な不安により研究の道を断念することなく、多様な分野において自由な発想に基づく研究に専念することができるよう、科学技術基本計画に掲げる博士課程(後期)学生の2割程度が生活費相当額程度を受給できるようにするとの目標の早期達成を目指し、国による特別研究員などのフェローシップの拡充や、大学による基盤的経費や競争的資金からのRA経費などの経済的支援の充実を図ることが重要である。また、例えば、博士課程の人材に対して主たる専門分野とは異なる分野に携わる機会を意識的に与えることや異業種との交流を通じた教育を行うことなどにより、広い視野を育むことは、新たな知の創造のためにも、広く社会で活躍するキャリアを開発するためにも重要である。その際、国内外の学術関係機関において、このような人材が高度の専門性を生かして一層活躍することは、行政機能の充実・強化の観点からも有意義である。
<取組状況>
  • 博士課程教育リーディングプログラムを通じ、専門分野の枠を越え俯瞰力と独創力を備え、広く産官学にわたりグローバルに活躍するリーダーを養成


(7)国内外の優秀な若手研究者や大学院生等が交流・集結できる人材交流・共同研究のハブとなるような世界最高水準の卓越した大学院の形成

<最終報告>
  • 学術研究の推進と優れた研究者の養成の両方を担う優れた大学院において、世界最高水準の教育研究環境を整備していくことも重要である。基盤的経費の配分に当たって配慮すべき事項として先に掲げたことも踏まえつつ、世界で勝てる分野として、各大学が既に強みを有する分野のみならず、融合分野を含め我が国としても今後の発展が大いに期待される新たな分野なども対象に、国内外の優秀な若手研究者や大学院生等が交流・集結できる人材交流・共同研究のハブとなるような世界最高水準の卓越した大学院の形成を進めることが必要である。
<取組状況>


3 女性研究者の活躍促進

特別研究員(RPD)の支援人数の拡大等による研究者の研究と出産・育児・介護等との両立や指導的立場を担う女性研究者の活躍推進を図るための支援強化、システム改革等の推進

<最終報告>
  • 多様な発想による卓越した知の創出を促すためには、研究現場における多様性の実現が必要であり、女性研究者の活躍促進を図ることが重要である。国においても様々な取組を行ってきたが、我が国の女性研究者の割合は、諸外国と比較して低い水準にある。特別研究員(RPD)の支援人数の拡大を含め、研究者の研究と出産・育児・介護等との両立や、指導的立場を担う女性研究者の活躍推進を図るための支援の強化やシステム改革などを進めていく必要がある。
<取組状況>
  • 平成28年度予算案において、研究と出産等との両立や女性研究者の研究力向上を通じたリーダーの育成を一体的に推進するなどの優れた取組を実施する大学等を支援する「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ」や、出産等による研究中断後の円滑な研究現場への復帰を支援する「特別研究員(RPD)」等により科学技術イノベーションを担う女性の活躍を促進


4 研究推進に係る人材の充実・育成

(1)研究者以外の研究推進に係る人材について、類型ごとに求められる知識やスキルの明確化、各機関におけるスキル標準作成への支援や研修・教育プログラムの活用支援

<最終報告>
  • 研究者以外の研究推進に係る人材については、研究者の研究時間の減少が指摘される中、その重要性がますます高まっており、それぞれ求められるスキルを踏まえたキャリアパスの明確化や、体系的な育成・確保のためのシステムの構築が重要となっている。そのためには、類型ごとに求められる知識やスキルを明確化し、研究推進に係る職種を研究者と並ぶ専門的な職種として確立し、社会的認知度を高めるとともに、各機関におけるスキル標準作成への支援や研修・教育プログラムの活用支援を行っていくことが必要である。
<取組状況>


(2)複数の機関が連携した研究者以外の研究推進に係る人材の育成・確保や職責に応じた処遇

(3)最先端設備の機能と研究課題の双方に精通した技術者について、民間企業のシニア・中堅技術者を活用するなど、研究基盤を支える技術者の育成・確保に向けた共用環境の積極的な活用

<最終報告>
  • 各機関独自の取組に加え、複数の機関が連携して研究者以外の研究推進に係る人材の育成・確保や職責に応じた処遇を行うことにより、量を確保するとともに多様なキャリアパスの整備が図られることが期待できる。さらに、最先端設備の機能と研究課題の双方に精通した技術者について、民間企業のシニア・中堅技術者を活用するなど、研究基盤を支える技術者の育成・確保に向けた共用環境の積極的な活用が期待される。
<取組状況>
  • 上記「リサーチ・アドミニストレーター(URA)を育成・確保するシステムの整備」事業において、シンポジウム等を通じ、大学間の連携を促し、URAの全国ネットワーク構築に寄与
  • また、「科学技術人材育成のコンソーシアムの構築」事業において、複数機関が連携した研究推進に係る人材の育成・確保を推進


5 国際的な学術研究ネットワーク活動の促進

(1)研究環境や住環境等の整備の促進、海外の優秀な日本人研究者や外国人研究者の戦略的な受入れや国際的な研究ネットワークの構築(国際的な頭脳循環のハブ形成)

<最終報告>
  • 世界規模の頭脳循環により、イノベーションを起こす優れた人材の獲得競争が世界的に激化する中で、我が国が学術研究を持続的に強化するためには、優秀な人材とその多様性を確保することが必要である。このため、研究環境や住環境等の整備を促進しつつ、海外の優秀な日本人研究者や外国人研究者の戦略的な受入れや国際的な研究ネットワークの構築により、大学における国際化や多様性を確保するとともに、国際的な頭脳循環のハブを形成することが重要である。さらに、先端的な研究を日本の魅力として世界へ発信する「Research in Japan」等を引き続き推進することが重要である。
<取組状況>
  • 諸外国の優秀な若手研究者に対し、我が国の大学等において日本側受入研究者の指導のもとに共同して研究に従事する機会を提供する「外国人研究者招へい事業」(外国人特別研究員)や、国際研究ネットワークを戦略的に形成するため、海外トップクラスの研究機関と研究者の派遣・受け入れを行う大学等研究機関を重点支援する「頭脳循環を加速する戦略的研究ネットワーク推進事業」を実施


(2)個々の研究者の国際ネットワークの構築や大学等機関による海外トップクラスの研究グループとの組織的なネットワーク形成の取組

<最終報告>
  • 我が国は、国際共著論文に見る国際比較において諸外国に比して国際ネットワークへの参加が遅れている。研究者の国際ネットワークの構築に当たっては、個々の研究者が実際に海外の大学等において研究を行うことで人脈を広げ、帰国後も交流を継続することが必要である。このような個人ベースでの取組に加え、大学等機関による海外トップクラスの研究グループとの組織的なネットワーク形成の取組も併せて行っていくことが必要である。例えば、地球規模の課題解決に向けて、共同研究を行うための国際協力による拠点を相手国に設置することにより、国際頭脳循環のハブ機能を発揮し、我が国の「顔が見える」持続的な協力形態により研究の深化、発展を目指す仕組みが求められる。
<取組状況>
  • 我が国の研究水準の向上や国際競争力強化を一層進めるため、二国間の研究チームの持続的ネットワーク形成や諸外国のトップレベルの学術研究機関との多国間交流ネットワークの構築・強化等の取組を支援


(3)標準的な評価の仕組みや大学、学会、ジャーナル等の在り方など学術研究に関する議論や国際機関等を通じた国際的ネットワークへの積極的参加、国際社会への発信・貢献

<最終報告>
  • 標準的な評価の仕組みや大学、学会、ジャーナル等の在り方など学術研究に関する議論が世界的に行われるとともに、国際機関等を通じて様々な形で国際的なネットワーク化が進んでおり、こうした動きに我が国の学術界もより積極的に参加し、国際社会へ発信・貢献していくことが期待されている。加えて、グローバルリサーチカウンシル等各国の学術振興機関間の交流や連携を活用した国際共同研究事業や海外ネットワーク形成の促進も有効である。
  • なお、近年我が国の大学改革等にも影響を及ぼしている「大学ランキング」については、我が国の大学の実情を踏まえて様々な角度から分析等を行い、国際的な情報発信力を強化することが求められる。
<取組状況>
  • 日本学術振興会と南アフリカ国立研究財団(NRF)の共同主催により、グローバルリサーチカウンシル(GRC)年次会合(第4回)を東京で開催。47ヶ国及び国際機関から56機関の学術振興機関長等が出席し、「科学上のブレークスルーの支援のための原則に関する宣言」及び「研究・教育の能力構築に関するGRCのアプローチ」の2つの文書を採択。これに併せ、「科学上のブレークスルーに向けた研究費支援」に関する公開シンポジウムも開催し、基礎研究支援の在り方やグローバル研究ネットワークの促進などの政策課題に関する議論を広く社会に発信


6 共同利用・共同研究体制の改革・強化等

(1)共同利用・共同研究体制の意義・ミッションを踏まえ、大学共同利用機関及び共同利用・共同研究拠点における意義及びミッションの再確認や自己改革・強化の推進及びその取組に対するメリハリある支援に向けた検討

<最終報告>
  • 共同利用・共同研究は、組織の枠を越えて研究者の知を結集するものであり、我が国全体の学術研究の発展を図る上で極めて効果的である。
  • 学問分野の専門分化・高度化が進む中、大学共同利用機関や大学の共同利用・共同研究拠点等において実施される共同利用・共同研究は、学術界の限られた人材・資源の効果的・効率的な活用に資することはもちろん、相補的・相乗的な連携により大学全体の研究機能を底上げするものである。また、大学共同利用機関や共同利用・共同研究拠点等には、多様な背景を有する様々な分野の研究者の交流と連携により、異分野連携・融合や新たな学際領域を開拓するとともに、国内外に開かれた共同研究拠点として、優れた外国人研究者を積極的に招へいし、国際的な頭脳循環のハブとしての役割や次世代中核研究者の育成センターとしての役割を担うことも期待される。
  • また、共同利用・共同研究と密接な関係がある「学術研究の大型プロジェクト」は、個々の組織の枠を越えた研究機関・研究者が多数参画し、世界トップレベルの研究を推進する拠点が形成されることから、共同利用・共同研究体制の強化を図る上でも有効な取組である。
  • 一方で、昨今、大学改革が進む中で、共同利用・共同研究という個々の大学の枠を越えた取組が積極的に評価されにくい状況にあるとともに、その強み・特色が見えにくくなっている状況にある等の指摘もあり、イノベーションの源泉としての学術研究の重要性を踏まえると、共同利用・共同研究体制の改革・強化は急務となっている。
  • そのため、大学共同利用機関及び共同利用・共同研究拠点においては、各機関や拠点の特徴に応じて、その意義及びミッションを再確認し、改革・強化を図っていくことが求められる。具体的には、IR機能やトップマネジメント、情報発信力等の強化に向けた取組の実施が望まれる。加えて、年俸制やクロスアポイントメント制度の積極的導入など人事制度の改革、産学官のセクターや機関、学問分野を超えて優れた人材が交流・結集するネットワーク型の拠点形成、国際頭脳循環のハブとなる拠点の形成等の取組を実施していくことが望まれる。
<取組状況>


(2)学術研究の大型プロジェクトの戦略的・計画的な推進や我が国の学術研究の弾力性を高めること等を目的とした組織的流動性の確保に向けた在り方の検討。先進的な大型研究施設について、常に共同利用・共同研究を行うことができる体制の維持や、学術コミュニティーにおいて将来を見通した優先順位を議論した計画的な研究推進や国際的な枠組みの構築

<最終報告>
  • 我が国全体の共同利用・共同研究体制の構築に貢献する学術研究の大型プロジェクトについて、文部科学省は、例えば、日本学術会議の「学術の大型研究計画」に関するマスタープランを参照しつつ、推進の優先順位を明らかにしたロードマップを策定するなど、透明性を確保しながら、今後一層戦略的・計画的に推進することが重要である。また、我が国の学術研究の弾力性を高めること等を目的として、組織的流動性の確保に向けた在り方を検討する必要がある。
  • また、先進的な大型研究施設については、研究に必要となる研究基盤の変化に応じて、先端的な研究を推進するための質の高い研究環境の確保と施設の安定的な運用を行い、常に共同利用・共同研究を行うことができる体制を維持していくことが必要である。これらの公的支援に当たっては、学術コミュニティーにおいて将来を見通した優先順位を議論し、計画的な研究推進を行うとともに、国際的な枠組みを構築するなどの取組が求められる。
<取組状況>
  • 研究環境基盤部会学術研究の大型プロジェクト作業部会において、ロードマップとマスタープランの連携や評価方法の見直し等の学術研究の大型プロジェクトの在り方について審議中。


(3)大学共同利用機関や共同利用・共同研究拠点以外における設備等の共同利用や再利用の一層の促進や研究者以外の研究推進に係る人材の充実及び育成

<最終報告>
  • 大型研究施設のみならず、大学等における質の高い研究を支える重要な基盤である研究設備や図書・史料等の有効かつ効率的な運用のため、大学共同利用機関や共同利用・共同研究拠点以外においても設備等の共同利用や再利用の一層の促進、研究者以外の研究推進に係る人材の充実及び育成を行うことが必要である。
<取組状況>
  • 文部科学省の有識者会議において「研究成果の持続的創出に向けた競争的研究費改革について(中間取りまとめ)」を取りまとめ(再掲)。同報告において、競争的研究費による比較的大型の研究設備・機器を原則共用化することとした上で、文部科学省全体として効果的な共用化促進の仕組みを検討していくべきとされていることを踏まえ、競争的研究費においては、その具体化のため、順次、公募要領を改訂。また、競争的研究費改革と連携し、研究開発と共用の好循環を実現する新たな共用システムの導入を科学技術・学術審議会先端研究基盤部会で検討し、「研究組織のマネジメントと一体となった新たな研究設備・機器共用システムの導入について」(平成27年11月)を取りまとめ。平成28年度から、大学及び研究機関における新たな共用システムの導入支援を実施予定。国立大学法人については、運営費交付金の中で共同利用体制の推進に資する設備サポートセンターの整備支援や文化的・学術的な資料の保存、収集、修復等のための支援を実施


7 学術情報基盤の充実等

(1)学術情報ネットワークについて、全国の学術情報基盤を担う組織が一体となった国内・国際回線の強化やクラウド基盤の構築、深刻化しているセキュリティ機能の強化、学術情報の活用基盤の高度化の実現

<最終報告>
  • 学術研究を支える学術情報基盤についての安全性を確保し、安定的に維持することが重要である。とりわけ、学術研究のボーダーレス化、グローバル化が進む中で、学術研究だけでなく、戦略研究や要請研究の推進のためにも、学術情報の流通・共有のための基盤整備が不可欠になっている。
  • 我が国では、SINETが中核となり、20年以上にわたり、国内外の大学等と接続する学術情報ネットワークを整備することにより、東日本大震災においても停止することなく、科学技術・学術の振興に大きな貢献をしてきた。今日、SINETが、大規模実験装置からの膨大なデータやオンライン教育への対応など、関連する情報資源の利活用を幅広く安定的に下支えすることにより、異分野連携・融合の進展、新たな学問分野の創出、高度人材育成の促進等につながっている。
  • 一方で、オープンデータへの取組強化や大型国際共同研究への対応など、情報流通・共有に対するニーズがますます高まる中で、我が国では、近年、学術情報基盤の整備が滞っており、欧米や中国等の諸外国に後れを取っていることは、今後の我が国の学術振興にとり憂うべき状況であり、早急な対策が求められる。
  • このような状況から、我が国の研究推進の動脈である学術情報ネットワークについては、全国の学術情報基盤を担う組織が一体となって、国内・国際回線の強化を図る必要がある。その際、最新の情報学研究の成果を基に、情報資源を仮想空間で共有することにより研究プロセスの圧倒的な効率化とイノベーションをもたらすクラウド基盤の構築、深刻化しているセキュリティ機能の強化、学術情報の活用基盤の高度化を併せて実現することが望まれる。
<取組状況>
  • 平成28年度予算案において、学術情報ネットワークの強化(100Gbps 回線の全国的な導入)、クラウド基盤の構築のための経費を計上。また、セキュリティ機能の強化に関しては、国立情報学研究所と国立大学等が連携し、サイバー攻撃に対応するための経費を措置


(2)学術雑誌について、我が国の学術研究の振興・普及や学術研究の国際交流の活性化の促進を図り、海外との情報受発信を強化する学協会の取組の支援

<最終報告>
  • 優れた研究成果の受発信・普及において、重要な役割を担っている学術雑誌(ジャーナル)について、我が国の学術研究の振興・普及や学術研究の国際交流の活性化の促進を図り、海外との情報受発信を強化する学協会の取組(ジャーナル刊行を従来の紙媒体から電子化やオープンアクセス化へ移行する等)を支援するなど学術情報の流通促進を図る科研費等の取組強化が必要である。この取組を強化することで、ジャーナルの抱える価格高騰などの課題や研究成果のオープンアクセス化に対応することが可能となる。
<取組状況>
  • 科研費の研究成果公開促進費において、学会等が主催するシンポジウム等における研究成果の公開発表、重要な研究成果を発信する学術刊行物の国際情報発信力を強化する取組、データベースの作成・公開について助成し、優れた研究成果の公的流通を促進


(3)オープンサイエンスについて、国際的な動向を踏まえ、その公開に関しては国益からの観点も踏まえつつ、適切に促進

<最終報告>
  • 研究成果の元となるデータを公開・共有するデータシェアリングを推進し、研究データの再利用により新たな研究の展開を加速するオープンサイエンスに対する関心が高まっている。研究データのシェアリングは、研究成果の評価・再検証の観点からも重要であり、世界的に推進する取組も進展しつつあることから、我が国としても、国際的な動向を踏まえ、その公開に関しては国益からの観点も踏まえつつ、適切に促進させる。
<取組状況>
  • 科学技術・学術審議会学術分科会学術情報委員会において、内閣府における「国際動向を踏まえたオープンサイエンスに関する検討会」で報告された「我が国におけるオープンサイエンス推進のあり方について」(平成27年3月)を踏まえ、公的研究資金による論文及び論文のエビデンスデータの公開を推進する方策について中間報告をとりまとめ。9月に取りまとめた中間まとめを公表した上で、内閣府オープンサイエンスフォローアップ検討会等で意見交換を実施。最終報告のとりまとめに向けて審議中


8 人文学・社会科学の振興

(1)科研費などの公募方法や審査方式の改善を通した挑戦的な研究の支援や、諸学の密接な連携や国際的な学術展開、社会的・国際的な要請への貢献を実践する共同研究の先導的なモデルの形成

<最終報告>
  • 人文学・社会科学は、個人の思想や行動あるいは人々の協力や対立の原因と帰結の分析を通して知の増進を実現して、人間の精神活動の根本的かつ根源的な理解に資するとともに、社会的な合意形成や社会的コンフリクトの解決方法を探求する学問分野である。この分野の研究は、国の知的資産の重要な一翼を担うのみならず多岐にわたる精神活動の基盤となる教養や文化の土壌を培う機能をも有しており、国全体の知的文化的成熟度を測る重要な尺度ともなりうるものである。
  • グローバル化の一層の加速に伴って、急激に社会が変化する渦中で新たな課題が登場しつつある現在であるだけに、人文学・社会科学は、多様な文化や価値観に対する認識を深め、様々な社会的な対立と衝突の原因を探るとともに、それらの問題解決を通して人類を将来における平和的共生へと導くべき使命を帯びている。よってその重要性は、従来以上に増しつつあると言わねばならない。人文学・社会科学には、そうした多文化共生時代の到来に向けて、言語、文化、宗教を異にする人々への共感力(エンパシー)を培う重要な使命があることも深く認識される必要がある。
  • また、人文学・社会科学には、新たなものの見方や制度的仕組みの設計と提案により、社会の変革の源泉となるというイノベーションに果たす固有の役割に加えて、自然科学の研究成果が生み出すイノベーションを社会の変革につなげる役割も期待されている。人文学・社会科学の学術の知は、先端的な自然科学の学術の知を現在及び将来の人類の福祉の改善に寄与する水路に導く方向舵としての役割を担っているのである。持続的なイノベーションとは、人文・社会・自然の全ての領域において創出される多種多様な知に耕された社会的土壌を基盤にして初めて可能となるのであり、この事実に留意すれば、人文学・社会科学と自然科学が総体としてあいまって熟成し続けることの重要性は明らかである。
  • これまでにも、我が国では新たな知の創造につながる多様な人文学・社会科学の研究が実践されてきており、その研究成果は、論文や学術書のみならず、学術の普及を目指す出版物等(例えば新書などをはじめとする一般書、さらにはウェブサイト)を通じて、広く国民や社会に向けて発信されて、新たな認識枠組みの提示や社会秩序の設計などに貢献してきた。例えば、日本の歴史、文学、思想の研究成果は、日本固有の文化的価値とその意味を国際的に知らしめ、その結果、日本社会そのものへの高い評価と崇敬を勝ち得るのに役立った。
  • その一方で、本分科会が平成24年7月に取りまとめた「リスク社会の克服と知的社会の成熟に向けた人文学及び社会科学の振興について(報告)」が指摘しているように、我が国の人文学・社会科学には、細分化された専門分野の精緻化に固執する余り、分野を超えた知の統合から生まれる巨視的な視点が往々にして欠落しがちであること、例えば、文献学的な視点のみならず現代及び近未来の社会がはらむ諸問題に視点を移すことが必要なこと、また、国際発信や国際的な学術コミュニティーへの参画に必ずしも積極的でない場合があることなどの課題が残されている。
  • 今後、人文学・社会科学がより一層その成熟度を高め、人類の福祉の改善に貢献していくためには、これまでの知の蓄積を基盤としつつ、現代の人間社会に対する鋭利な洞察力に裏打ちされた新たな知を創造して提供するために、人材育成を含めて不断の挑戦を続けていく必要がある。
  • このため、前述のデュアルサポートシステムの再生の趣旨も踏まえ、科研費などの公募方法や審査方針の改善を通して、挑戦的な研究を支援するとともに、諸学の密接な連携や国際的な学術展開、社会的・国際的な要請への貢献を実践する共同研究の先導的なモデルを形成し、グローバル化の加速度的展開に呼応して新たな研究領域を創出することが、我が国の人文学・社会科学全体の振興を図っていく上で必要不可欠である。
<取組状況>
  • 科研費事業において、平成30年度に新たな審査システムへ円滑に移行することを目指し、審査単位の大括り化について検討中。平成27年度より、「特設分野研究基金」の創設により、分野融合的研究を引き出す新しい審査方式の先導的試行の充実等の改革に着手。平成28年度中に、研究費部会の審議を踏まえて科研費改革を加速するため、新たな学問領域の創成や異分野融合などにつながる挑戦的な研究を促進することとし、大胆な挑戦的研究を見出すためのプログラムについて公募・審査を開始する予定


(2)個々の研究者による自己の研究成果と現代社会に果たす役割や貢献の意義の積極的発信や、学術界全体として、人文学・社会科学が担う社会的意義の不断の検討や学術の成果の教養知への還元を図りつつ、将来的な展望を広く社会へ提示

<最終報告>
  • 翻って、公的資金による支援や社会の負託に応えるためにも、個々の研究者が自己の研究成果と現代社会に果たす役割や貢献の意義を一層積極的に発信するとともに、学術界全体として、人文学・社会科学が担う社会的意義を絶えず再検討することや学術の成果の教養知への還元を図りつつ、将来的な展望を広く社会に提示していくことが切に求められる。個々の研究者は、このように現代社会との接点を常に意識し続けることこそが、人文学・社会科学の更なる深化を促す原動力の一つとなりうることを明確に認識すべきである。
<取組状況>
  • 「課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業」を通じ、諸学の密接な連携によりブレークスルーを生み出す共同研究、社会貢献に向けた共同研究、国際共同研究を推進することにより、個々の研究者が現代社会との接点を常に意識し続け、人文学・社会科学の更なる深化を促す原動力となる先導的なモデル創出を促進


(3)人文学・社会科学の固有の意義を尊重しつつ、成果に対する独自の評価基準の明確化・可視化

<最終報告>
  • 人文学・社会科学は、人間の思想や行動を研究の対象とすることから、異なる価値観に依拠する研究が競合しつつ社会の諸側面に補完的な理解の光をあてることに意義を持つ側面も持っている。それだけに、統一的・標準的な枠組みを前提として、客観的・論理的な証明や実証的な証拠立てによって唯一の正解が確立されるものではないこと、ある研究の意義を測る時間的スケールが非常に長く、継続的な研究の蓄積によって成果が価値を生むことが多いことなど、自然科学とは必ずしも共通しない特徴を持っている。
  • しかし、人文学・社会科学においても、公共的な組織において行われる学術研究については、それぞれの研究組織や研究者が新たな知の創造に向けて真摯に取り組んでいることへの社会的理解を得るためにも、また、研究者自身が自らの研究活動を見直す契機とするためにも、その成果に対する評価の基準を明確にする必要がある。人文学・社会科学の固有の意義を尊重しつつも、その独自の評価基準を可視化することが、今強く求められている。
<取組状況>
  • 平成28年度予算案において、諸外国の人文学・社会科学における自然科学との連携方策及び評価方法等の振興政策に関する調査に係る経費を計上


9 学術界のコミットメント(略)