2017年2月1日水曜日

記事紹介|ニンジンと戦争

英米が合同作戦により、無人攻撃機で上空からテロリストを殺そうとする。機体を操縦するのは、現地ケニアからはるか遠い米国にいる兵士である。公開中の映画「アイ・イン・ザ・スカイ」は、最新技術が支える現代戦の一断面を描いている。

作戦のカギを握るのは現地から送られる鮮明な映像である。ハチドリ型や昆虫型の超小型偵察機が飛び回り、屋内にいるテロリストの顔まで映し出す。映画のなかだけの話だと思ってはいけない。

防衛省が大学や民間から募る研究テーマの一つに、「昆虫あるいは小鳥サイズの小型飛行体」がある。手のひらに収まり、消費電力が低くてすむ技術がほしいという。一体どんな使い方をするのだろう。

「安全保障技術研究推進制度」というこの仕組みの予算が、2017年度から大幅に増額されそうだ。研究費不足にあえぐ大学の鼻先に、ニンジンをぶら下げるようなものである。科学者でつくる日本学術会議は検討委員会を設けて、軍事研究とどう向き合えばいいのかを議論している。

技術を持つ側には安全で効率的でも、持たない側には苛烈(かれつ)となる戦争の現実がある。高度な技術がもたらす風景を想像する力が求められている。

敗戦から5年後、科学者の有志が、戦争につながる一切の動きに反対するとの声明を出した。いま読んでも古びてはいない。「われわれは研究資金の交附(こうふ)、就職の機会の増加、其(そ)の他の誘惑によって戦争準備に協力することが、如何(いか)に危険であるかをも知っている。