2017年4月1日土曜日

記事紹介|文部科学省は不思議な役所である

文部科学省は不思議な役所である。職員の再就職をめぐっては、ルールを大胆に破って天下りのあっせんに余念がない。その同じ官庁が、こと教科書検定となるとにわかにルール墨守の石部金吉と化すのだ。小中高校、どの科目にも杓子(しゃくし)定規な注文をつけてばかりいる。

こんど公表された、道徳教科書の初の検定はその最たるものだろう。「消防団のおじさん」が登場する話は、学習指導要領が高齢者への尊敬と感謝を求めているとして「おじいさん」に修正された。町でパン屋を見つけたという記述は「我が国や郷土の文化と生活に親しみ、愛着を持つ」との観点から和菓子屋に変わった。

道徳の教科化は、長年の論争の末に実現した経緯がある。「心の教育」は大事だが、かえって道徳心を型にはめる恐れはないか。子どもが評価を気にするようにならないか。そんな指摘が少なくなかったから、中央教育審議会も画一化を避けるよう念を押していた。それがふたを開けてみれば案の定、いつもの文科省流だ。

この調子だと現場の先生たちは指導要領からの逸脱を恐れ、杓子定規の度合いがどんどん進むかもしれない。そういえば杓子定規というのはもともと、杓子の曲がった柄、つまりゆがんだ基準をあてはめることを言うそうだ。自分たちだけのルールを作っていた天下りあっせんのほうも、まさに杓子定規だったわけである。

春秋|2017年3月28日日本経済新聞 から